表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
燭蛾  作者: 美輪神 龍也
20/53

第20話 鉄拳制裁

目隠しを外された英二の目の前には、男が三人いた。

パイプ椅子に座り腕を組む黒いスーツの男、その左右に、ジャージ姿の短髪の男と、二メートル近い黒人が立っている。

英二との距離は二メートル半ほどだ。

英二は目測で、リングの半分程度の距離だと測った。

パイプ椅子に座る英二の背後からは、窓ガラスを通してときおり、金属バットの甲高い打撃音が聞こえてくる。


腕組みをした黒いスーツの男が、パイプ椅子に踏ん反り帰り、ぼそっと口を開く。

「おい、回収した金、どこに隠した」

「金は回収してない。そう言ったよな……」

「てめぇ!言葉に気をつけろ!」

短髪の男が怒声を発し踏み出す。

「まぁ待て……」

スーツの男が制する。

「お前……どっかの組のもんか?ウチと揉めたいのか……」

「いや、俺はヤクザじゃない」

スーツの男がいぶかしげに、英二を睨む。

その時、短髪の男が電話に出る。

「–––– ああ、わかった、ちょっと待ってろ」

短髪の男がスーツの男に耳打ちする。

「黒木さん、あいつ、刑事イヌじゃないようです……」

「そうか。下の連中に、帰っていいと伝えろ」

短髪の男が、ビルの入口の見張りに、解散だと告げる。

黒木は英二が、潜入捜査の刑事デカの可能性もあると踏み、組の連中に、英二の顔写真を送っていた。しかし、刑事じゃない。

尾行の恐れが無いと判断し、黒木は見張りを解除した。


「お前……目的はなんだ?––––」

「二百万を返して貰いに来た」

「二百万?」

「ああ。あんたらが、ばあちゃんから騙し取った金だ」

「黒木さん、こいつ、イかれてますよ!お前、正気か?」

短髪の口元がいびつに歪む。

「……イかれてんのは、あんたらだろ」

「んだと、てめぇ……」

「今すぐ、二百万返せ。用はそれだけだ」

英二がすっと立ち上がる。

「おい、やれ」

黒木が促すと同時に短髪の男が飛び出す。

英二が男に向けてパイプ椅子を蹴飛ばす。短髪はパイプ椅子に足を絡ませ、前のめりに翻筋斗打もんどりうって倒れる。

英二はすかさず短髪に馬乗りになり、拳を振り上げる。

「こいつ、どうなってもいいのか?」

英二は黒木の方を見る。

短髪は必死に身体をよじるが、英二の太腿が締め付け動けない。

黒人が「Ah!」と叫び床を蹴る。

英二はひらりと躰をひるがえし、黒人と正対する。

黒人が丸太のような右フックを繰り出す。

姿勢を低くしけた英二は黒人の懐に入り、ガラ空きの右脇腹に高速のボディーを突き刺す。

黒人の頰が風船のように膨らむ。

その顎を、左アッパーで突きあげる。

黒人の喉仏が天井を向き両腕がだらんと下がる。

鼻からすっと酸素を入れた英二は息を止め、怒涛のラッシュを叩き込む。

一発ごとに黒人の全身から汗が飛び散る。

膝のネジが外れたように黒人は力が抜け、顔がみるみる腫れ上がる。

白目の黒人が、クリンチのように英二にもたれる。

それを左腕で突き放すと、「ふっ!」と息を吐き、体重を乗せた右ストレートで鼻頭を貫く。

黒人は膝の関節を無くしたように一二歩前後左右によろめき、棒のようにどっと倒れた。

短髪が英二の背後で、金属バットを振り上げる。

英二がかわした金属バットが黒人の背中で嫌な音を発する。

「チ!なにやってんだ!」

黒木が飛び出す。

短髪はバットを斜めに振り下ろす。

英二はスウェーで避け、躰を戻した反動で大振りの左フックを、短髪の右頬骨に食い込ます。

両手で顔を覆うガラ空きのボディーを連打する。

短髪が頰を膨らませ、吐瀉物としゃぶつを吐き出し、腹を抱えて膝をつく。

えた匂いが湿気に混じり、鼻腔にまとわりつく。

黒木が投げつけた上着が英二の視界を遮る。

英二は上着ごと、右ストレートを繰り出す。

黒木の鼻の軟骨がぐしゃと潰れる。

上着で視界を失った黒木を、ワンツーとボディーの連打で壁に押しやる。

鳩尾みぞおちに速射砲のような左ボディーを三発入れ、渾身の右ストレートを潰れた鼻頭にぶち込む。

黒木の後頭部が壁にゴツと当たり、黒木はずるずると背中を滑らせ床に尻餅をつく。


英二は「ふうっ」と長い息を吐くと窓際に歩み寄り、窓を開ける。

生温なまぬるい風に乗って、金属バットの甲高い音がカキーンと聞こえてくる。


英二は、足を投げ出すようにして壁にもたれる黒木に、

「二百万、今すぐ返せ」

と吐き捨てる。

「……か、金は、ここには無い……」

血で鼻が詰まり口で息をする黒木が、虚ろな目で返す。

「どこにある。金が集まる場所があるだろ?」

「–––– そ、それは、勘弁してくれ……不味いことになる……」

英二は黒木の鳩尾を、右ボディーで突き上げる。

黒木の尻が浮く。

「ぶほ……!」

黒木が涙を流し胃液を吐き出す。

「あんたがどうなろうが、俺には関係ない」

「わ、わかった…俺が明日、二百万用立てるから…信じてくれ……」

「いや、駄目だ。金がある場所を教えろ。取りに行く」

「それだけは、か、勘弁––––」

左ボディーを黒木の右脇腹に突き刺す。

黒木は左手でかばいながら右に倒れる。

横向になった黒木の腹に、英二は重い拳を見舞う。

一発、二発、三発、四発、五発、六発……

一発ごとに、黒木の身体が海老のように折れ、糸を引くように呻く。

「あんた、内臓おかしくなるぞ……」

もう黒木は胃液すら出ない。

「わ、わがっだ……」

黒木は震える手で、西守の事務所の住所を書いた。

「おい、嘘書いてたら、また聞きにくるからな」

黒木はぶるぶると顔を左右に振った。


英二が去ると、黒木は上着まで這って行き、携帯で西に電話を掛けた。

「…… 西さん…今すぐ逃げてください……ヤバイ奴が向かってます……」

いきなりの電話に西は意味がわからない。

「はぁ?おい黒木!おい?」

電話は切れた。


西は只ならぬ気配を察し、「おい!撤収だ!今すぐ!」と掛け子に指示を出し、慌てて奥の金庫部屋に飛び込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ