4話 怒られてしまいました。
紫頭に連れられて、私達は謁見室へと連れていかれます。こういう時は執務室だと思うのですが……。
謁見室には国王のレッグさんは勿論、宰相さんに、各大臣の皆さん、そ、それに……。
「レティ? あんな所で穴堀なんて、何をしていたのかな~?」
え、笑顔で怒っているエレンと、ニコニコしていますが妙な迫力のあるネリー様までいます。
「え、えっと……邪教徒が鬱陶しいので邪教徒の溜まり場を潰そうと思いまして……水路からの場所特定が出来なかったのですが、教会跡地の真下という情報がありましたので、上から攻めようと思いまして……」
怒っているエレンの前では、つい怯えてしまいます。怒っているエレンはこの世界で一番怖いです。これは幼い頃から変わらず、私は怒るエレンの前では、何も言えなくなってしまいます。
カチュアさんは、私がエレンに怒られる度に、信じられないといった顔になり驚いています。私の普段の性格を知っていれば当然というえば当然でしょう。
私はカチュアさんに助けを求めますが、エレンに頭を掴まれ、エレンの方に顔を戻されます。
「レティ!! 目をそらさないの!!」
「は、はい!!」
さ、逆らえません……。
ここで、ネリー様も参戦してきます。ネリー様のお説教も素直に聞いてしまいます。何故でしょう?
「レティ。貴女は良くも悪くも有名人なのだから、あまり大っぴらに騒ぎを起こせば、更に邪教徒を調子付かせるだけだと思うわよ?」
「え? どういうことですか?」
調子付かせるというのはどういうことでしょうか? むしろ追い詰めるという意味では、脅威になると思うのですが……。
ネリー様は少し呆れた顔で「ふぅ……」とため息を吐きます。
「今回、貴女が起こした地震を、邪教徒は『邪神の怒り』とでも広めると思うのよ。別に邪教を滅ぼすのは別に構わないけど、その行為をするために、貴女の評価を落とす必要はないでしょう?」
「お、おい!! ネリー!!」
ネリー様はやり方さえ間違えなければ、邪教を潰すこと自体は反対しないということですね。これにはレッグさんも驚いていますが、エレンもこれには頷いています。
「私としても、可愛いレティを貶める人達は許せないからね」
「慈愛の女神としてそれでいいのか、エレン嬢……」
「構いません。私の仕事は世界の管理であって、人間を幸せにすることじゃありませんからね。レティやレティが大事に思っている人達ならともかく、他の人間の罪を許すつもりにはなりませんよ」
エレンがそう言い切ると、各大臣の顔が少し強張ります。
他の人の罪を許さないということは、悪人でもエレン教に入信すれば許されるという訳では無いということです。エレンのことを大事に思っている私ですら、エレンは怒りますからね。
今のエレンはこの国の象徴となってきています。今、この国に建設中のエレン教の大聖堂がそれを物語っています。
国としてエレンを利用する形になっていますが、勿論ネリー様は最初反対をしました。レッグさんは私の報復を恐れてか、反対していましたが、宰相さんの「宗教を拠り所にする人もいる。アブゾルがいなくなったことで不安に押しつぶされそうな弱い人間もいるのですよ」と言葉でエレンが「その人達が少しでも安らぐというのなら……」と了承したことで『慈愛の女神・エレン教』が作られることになりました。
エレンは、他人には慈愛はないと言っていますが、根が優しいので、慈愛の女神に相応しいのでしょう。
とはいえ、エレンが教会を支配しては意味がないので、教会の頂点には、エレンの聖女であるレーニスと元々アブゾル教を利用していたリチャードさんに教皇を務めてもらうにしました。
リチャードさんも最初は難色を示していたのですが、エレンとレーニスの説得で首を縦に振ってくれました。
当然、孤児達はエレン教の教会に身を寄せています。国としてもアブゾル教に割いていた予算をエレン教に割り振ることで、エレン教の経営に携わることになっています。
エレン教と深くかかわっているからと言って、悪事を働くわけではありませんけどね。
「どちらにしても、レティシアちゃんが暴れると、そのまま国に苦情が来る。ただでさえ邪教徒のせいでレティシアちゃんの悪評が増えているのに、わざわざ自分から悪評を増やすこともないだろうに……」
レッグさんは本気で心配してくれている様です。本当に心配性ですね。そもそも10ある悪評が11になるだけです。問題などありません。
「どちらにしても、この国の邪教徒は今は放置の方が良いだろう……。このままレティシアが騒ぎを起こす方が問題だ。邪教のアジトに関しては、カチュアの部隊に正確なルートを調べさせる。レティシアは他の国の邪教を狙いに行ったらどうだ?」
紫頭は、軍事担当なので、カチュアさんの部隊だろうと使えるのは知っていますが……。ここは大人しく従っておきましょう。
それにしても自国で問題を起させないために他国を犠牲にしますか……紫頭もやりますねぇ……。
ただし……。
「この国の邪教の居場所を特定したとしても、捕縛などという甘ったれた対応をしないで、正確なルートを特定出来た時点で、私に報告してくださいね。邪教徒には邪神直々にお仕置きしに行くんですから……」
私は笑顔でそう宣言します。
エレンを害しようとした邪教徒など滅ぼしてしまえばいいのです。本当は今すぐにでも滅ぼしたいくらいなのですから……。
そういえば、エスペランサにも邪教がいると聞きましたねえ。ブレインと仲のいい紫頭なら何か知っているでしょうか?
「紫頭、エスペランサにも邪教徒がいると聞きましたが、ブレインから何か聞いていませんか?」
「ん? あぁ、エスペランサでも悪さをしているらしいな。アブゾル教は勿論のこと、エスペランサの邪教徒には魔族や亜人もいるらしくてな、異教徒の神官やその家族まで襲う対象になっているらしい」
はい? 邪神が望まないことまでやっているのですか? これは早々に粛清が必要ですね。
「そうですか。ブレインと連絡は取れますか? 一応、クランヌさんの許可が必要ですからね」
「何の許可だ?」
「邪教徒を滅ぼす許可です」




