1話 邪教徒の連中が鬱陶しいのですが……。
第三章『邪教編』始めました。
新作出す前にこっちを先に書き上げると思いませんでしたが、またよろしくお願いします。
私はレティシア。ファビエ王国のネリー様の護衛をしている者です。
ネリー様はこの国の元女王なのですが、世継ぎが欲しいと夫であるレッグさんに王位を譲りました。
あれから一年。ネリー様は無事、後継者である男児を出産しました。
この子は『ネレス』と名付けられました。今はまだ生まれたばかりなので、ネリー様と共に穏やかに暮らしております。
私はその辺りのことは詳しくないのですが、カチュアさんに話を聞くと普通は乳母? という人に世話をしてもらうそうなのですが、ネリー様が「自分で育てる!!」と言い出したので、皆でサポートしています。
とはいえ、私は暴力でしか物事を解決できないので、あまり役に立ってはいませんが……。
こういうことになると頼りになるのがエレンです。
やはり、野蛮な私と違って慈愛に満ちたエレンは頼りになりますね。役に立たない私の代わりに頑張ってくれています。
私は、ファビエに下らない輩や、魔物が来ないように外を守るとしましょう。
ただ、最近になって過去の過ちに後悔しているのです。
事の発端は、アブゾルを封印したあの像を大聖堂から持ち出すときの話でした。
当時の私はまだ子供で、像に封印したアブゾルを大聖堂で痛めつけて遊んでいました。
泣き叫ぶアブゾルが面白くて、像を砕いては直しを繰り返していたのですが、その姿をアブゾル教の神官達に見せていたのが間違いでした。
あの頃に戻れるのなら、大聖堂にいた者全てを殺しておけばよかったです。本当にそこは後悔しています。
そうすれば今の状況にはならなかったはずです。
私が像をどつきまわしてる姿を見てアブゾル教徒達が「邪神だ!!」と叫びだしたのですが、アブゾル教徒の負け惜しみだと放置していたのです。しかし、そのことが間違いでした。
その日から、一部の人間に『邪神レティシア』と呼ばれるようになってしまいました。
まぁ、人が私をどう呼ぼうと知ったことではないので放置していましたが、それがこんなことになるとは思いもしませんでした。
ちなみにアブゾルは二年経った今でも、幸せを呼ぶ像として毎日殴られています。
アブゾル教は、今では完全とは言えませんが、もう虫の息と言ったくらいに規模を縮小しているそうです。
まぁ、あんな髭爺を崇めるよりも、エレンを崇めた方がイメージが良いと思ったんでしょうね。
今では、アブゾル教徒の殆どが、ファビエを中心に広がって来ているエレン教を崇拝しています。
正直な話、世界の管理者とネリー様のサポートで忙しいエレンが、更に忙しくなるのでやめて欲しいのですが、今のところは健全な宗教なので文句は言えません。
問題なのは、私を崇める邪教です。
そんなものが出来たと知った時は迷惑以外の何物でもないので、潰しに行こうと思ったのですが、面倒くさかったので放置しました。
この二年、特に問題も起こさなかったので安心していたのですが、今年に入ってから邪教徒の阿呆共が「邪神様を解放しろ!!」とお城に押し寄せて来るようになりました。
私が対応したのですが、邪教徒の思い描く『邪神レティシア』は悪魔のような姿だそうで、私を偽物扱いしてきました。
今までの私であれば即殺していましたが、私も二年もあれば流石に立場上、成長します。
とはいえ、最初は大人の対応をしていたのですが、毎日毎日来られると私でも頭にきます。
邪教徒の一人を捕獲して、私の独断で処刑してやりました。
このことはエレンにバレて怒られましたが、後悔はしていません。
大体、本来の私であれば、この世に生まれてきたことを後悔させてから殺していましたが、邪教徒には処刑という正当な方法で殺してあげたのですよ? 優しいじゃないですか。
しかし、私の苦難はここから始まります。
邪教徒にとっての幸せは邪神に殺されること……今から思えば迂闊でした。
彼等が崇めているのは邪神です。正直な話、普通の人間ではありません。
私は、今日もネリー様の護衛をしています。
平然な顔をしていますが、本当は溜息を吐きたいです。でも、それをすればネリー様に心配をかけてしまうので我慢します。
「レティ、疲れているわね」
ネリー様は優しく声をかけてくれます。
私としては普通にしているつもりなのですが、顔に出ていたのでしょうか……。
私は「大丈夫ですよ」と答えていますが、内心は邪教徒を滅ぼしたくて滅ぼしたくて仕方ありません。
それもこれも全て邪教徒のせいです。
最近そのことでイライラしています。宰相さんがネリー様の部屋に入ってきました。アレです。邪神への苦情です。
どうせ、町で邪教徒が暴れているのでしょう……。もう嫌です……。
私は宰相さんに連れられ、トボトボと謁見室に向かいます。
謁見室にはレッグさんと紫頭が立っていました。
レッグさんが玉座にいないのは珍しいですね。
「おぅ……。また、お前に客だぞ」
「お引き取り下さいと言っておいて下さい」
「そういう訳にもいかねぇんだ。あの箱があるだろ? 見てみろよ」
紫頭が嫌そうに箱を指差します。
箱は小さなもので、血で底が濡れている様です。
あぁ……入っているモノが想像できました。
頭でしょう……。邪教徒はアブゾル教の生き残りを殺すことを正義と考えています。
私としてはウザかったのはアブゾルであり、アブゾル教の残りカスには興味もありませんでした。
ただ、邪教徒は違います。
無駄にアブゾル教に憎悪を持っているのです。
「そこの人、このゴミを片付けてください。いりません」
「あ、はい」
私は騎士の一人に処理を頼むと、騎士は心底嫌そうに箱を始末するために動いてくれます。
「紫頭、これを持ってきた人はどこですか?」
「どうするつもりだ?」
「殺します」
もう我慢の限界です。
潰します。
邪教徒は一匹残らず殺しつくします。
ブックマークの登録、評価、感想、ありがとうございます。
邪神レティシアの苦難はまだまだ続きます。
それと今回からタイトルを『神を殺したら邪神として崇められてウザいです』に変えます。
また、よろしくお願いします。




