教会編 50話 アブゾルの秘密
誤字報告いつもありがとうございます。
エレンと合体? どういうことでしょうか?
エレンの話だとエレンが私の中に入って、私の魔力をコントロールをするそうです。
私はエレンの話を聞いて首を傾げます。
私の魔力をコントロール? いや、流石にそれは出来ているのですが……?
しかし、エレンの話では全く制御できていないそうです。事実私は自分の魔力で自分を傷つけています。
本当に魔力を制御している人は自分の魔力で自分を傷つけることはないそうです。
確かにサクラさんは私とそう変わらない背丈です。
それで私より強いということは私以上の魔力を保有していることは確実です。
そう考えれば、エレンの言うことは正しいのでしょうか?
ただ、この方法もリスクがあるそうです。
神族であるエレンが人間である私と同化するということは、下手をしたら私という存在が無くなってしまうそうです。
これを詳しく聞くと、神族の方が魔力と存在力というモノが大きそうです。
つまりは私の体をエレンに乗っ取られたうえで、私の精神が滅びてしまうそうです。
ふむ……。それは困りますね。
折角、エレンと再び会うことが出来たというのに、私が消えるのは嫌ですねぇ……。
私は考えます。
このままこのアブゾルを放置すれば、姫様達もいつかは殺されてしまいます。
それも嫌ですねぇ……。
そうです。
こう考えましょう。
私が消えたとしてもエレンの中で生きていると、そして、私の代わりにエレンが姫様達を守ってくれると……。
「分かりました。合体しましょう」
私は決意を固めエレンを見つめます。
エレンも頷き、祈るように魔力を込め始めます。
アブゾルはこれを不味いと思ったのか、私達を殺そうと、魔力球を吐いてきますが、エレンの魔力で消滅してしまいます。
『レティ……。貴女は貴女だからね。貴女なら大丈夫だから……』
そう言って、エレンは光の玉になって私の胸の中に入っていきます。
その瞬間、私の体から魔力が溢れかえってきます。
不思議です。
今までの魔力が嘘の様です。
私は落ちていた剣を拾います。
「今なら、ヒヒイロカネの皮膚だろうが斬り落とせそうですねぇ」
ふと気が付くと、私の背中に黒い羽根が生えています。
これは、前にアブゾルと戦った時の羽とはまた違いますねぇ……。まぁ、いいでしょう。
私はアブゾルを斬りに行きます。
アブゾルは先程斬撃が効かなかったことを思い出し、無防備に攻撃をしようとしている。
先程とは違うのですよ?
今は、背中の羽で飛べるんですよ?
まずは斬れるということを理解させないといけませんね。
「死ねぇええええええええ!!」
アブゾルは私を叩き潰そうとしてきます。
その手首、邪魔ですねぇ。
私は手首を狙い剣を振ります。
剣はアブゾルの手首を完全に斬り抜きます。
「ぎゃあああああああああ!!」
痛みはあるのですね?
良かったです。痛みがなければ、苦しめて殺せないじゃないですか。
私は左拳に魔力を込めて、アブゾルの頬を思いっきり殴ります。
「グボォ!!」
打撃も効くじゃないですか。
(普通のオニ相手には打撃でダメージを与えることは出来ないんだけどね)
頭の中でエレンが話しかけてきます。
そうですか、私が考えてることも分かってしまうんですね。
(そうだね。だから、さっきの考えも分かってるんだからね。後で説教だからね)
は、はい。
「ふ、ふざけるなぁ!! この体は最強の魔物の体なのだぞ!!」
あぁ、そういうことですか……。
(レティ……アブゾルの話をするね)
…………
………
……
エレンが語ってくれた内容で、私は確信しました。
これは本体ではなく、この中にいる者がアブゾル本体です。
つまりは、アブゾルは今のエレンと同じ存在だということです。
要するにあれです。
先程エレンが言っていた、合体した時に存在力の低いものが消えるという話のあれです。
そうやって様々な生物の体を乗っ取ってきたのでしょう。
あとは何らかの方法で肉体を幾つも保有していたのでしょう。
アブゾルの羽が金色だった理由は、あの髭爺の肉体が神だったのでしょう。
これならエレンが言っていた、アブゾルが神になれなかったという言葉も説明がつきます。
(レティ、正解だよ。アブゾルという天使は元々他人の肉体に寄生する精霊だったと聞いたよ。だからこそ、殺すことが難しいというわけ。でも、今のレティならできるよ)
分かりました。
まずはこのアブゾルを殺して、本体を引きずり出しましょうか。
そうと分かれば、これ以上この戦いを引き延ばすつもりはありません。
「アブゾル。覚悟してください」
「黙れぇえええええええ。レティシア!! キサマはどこまで私を邪魔したら気が済む!!」
「だから、前にも言いましたよね。貴方が惨めったらしく土下座して、泣いて謝って惨たらしく死ねば終わりますよ……と」
「ふざけるなぁあああああああ!!」
この必死さは間違いないですね。
アレにアブゾルの本体がいるはずです。
私は一気に斬りかかります。
今までと違い、アブゾルの目には私は映っていないでしょう。
アブゾルの体は少しずつ私に斬られていきます。
たまに嫌がらせで頬を殴ったり、地面に押し付けたりを続けます。
いくら動いても疲れません。
このままとことん苦しめてみましょうか?
「ぐ……が……が……」
アブゾルは立っていることも出来ずに這いつくばっています。
もう腕を上げることすら出来ないようですね。
惨めですねぇ……。
私はアブゾルの顎を蹴り上げます。
流石に大きいので吹き飛ばすことは出来ませんが、上を向かせることは出来ました。
「さて、そろそろ本体とのご対面をしたいのでその肉体を殺してしまいましょうか」
エレンから聞いた方法だと、これで本体が現れるはずです。
私はアブゾルの脳を突き刺します。
これで殺せましたかね? もし殺せない様ならば、頭を両断してしまいましょう。
私がそう考えていると、オニはピクリとも動かなくなり、オニの体から銀色の羽を持った老人が現れました。
これがアブゾル……ですか。
『く、クソ……。どこまでも邪魔しおって……。貴様は一体何なのだ!! 私の世界で好き勝手するな!!』
老人は、私に殴りかからんばかりに掴みかかってきます。
まぁ、今となっては非力な老人です。
殴られても痛いとも思わないでしょう。
『そ、そうだ。貴様の体を乗っ取ってやる!!』
恐らくそう来ると思っていましたけど、女神であるエレンよりもこの爺さんのほうが強いのでしょうか?
魔力も低そうですし、今までは天使という存在力で体を乗っ取っていたのでしょうが、私の中にはエレンもいますがどうなんでしょう。
まぁ、そんなことすらさせませんけど……。
アブゾルが光の玉になると私に向かって飛んできますが、私はそれを叩き落とします。
『ぐぎゃああ』
そしてそのまま踏みつぶそうと踏みます。
『ぎゃああああ!!』
おっと、こんな単純に殺しては面白くありません。
これにも永遠の地獄を見せてあげないと……。
さて、どうしましょうか?
……良いことを思いつきましたよ。
私はアブゾルに永遠に解けない封印を施します。
そして……
教会へと転移してアブゾルの神像にアブゾルを閉じ込めます。
『ど、どういうつもりだ!!』
「今から貴方は動けないサンドバッグです。教会に恨みを持つ者……神兵の家族……神官達の家族……貴方に操られていた者……」
『ま、待て……』
どうやら気付いたようですね……。
「痛覚は数十倍にまで上げておいてあげますね」
私は笑顔で、そう教えてあげます。
『や、止めろぉおおおおおおおおおおおお』
漸くアブゾル戦終了です。
明日、教会編の最終話を投稿します。
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