閑話 タロウと永遠の罰
この話を読む前に……。
この話のタロウはこの世界に召喚される前の性格に戻っています。
教会編後半のタロウの性格はあくまで作られた性格なのでこちらが本当の性格だと思ってください。
誤字報告いつもありがとうございます。
ん……、ここは?
真っ白い部屋だ……ここはどこだ? 俺はどうしてここにいる?
確か……勇者として捕まった後、レティシアやファビエの糞共に拷問されて、気が付いたらアブゾルに頭を踏みつけられて……潰されて……俺は死んだのか?
ふざけんじゃねえええええええええ!!
勝手にこの世界に連れてきておいて、死んだら終わりってか?
殺してやる、殺してやる!!
特にあの二人は許せねぇ……!!
レティシアとアブゾル!! 絶対殺してやる!!
アイツらを殺すためには、ここから出る手段を考えなければ……。
俺は歩く、ふと気づいたが、俺の着ている服は血まみれだ。
誰がこんなものを着せやがったのか、全く趣味の悪い。
暫く歩くと、大きな門が見えて来た。
ここをくぐれば、俺は生き返ることができるのか?
そう思って俺は扉を開けようとする……が開くことはない。すると、後ろから女の声が聞こえて来た。
「ここは死界の門。死者が死界にはいる為の門です」
女? こんな所にか?
俺が振り返ると、そこには赤く長い髪に全身真っ黒のローブを着た女が立っていた。
目が覚めるような美人なのだが、一番目に付くのは背負った純白の翼だ。こいつは神の類か?
しかし、美人だ。一晩お付き合いしてもらいたいものだな。
俺は、この女の腕に触れようとした、が、何かに弾かれる。
女は冷たい目で俺を見る。
「話には聞いていましたが、大罪人ですか……。これは色欲ですね」
色欲だと? なんだそれは?
「全ての人は死ねば死界へと渡り、そこで生まれ変わるか、永遠に死界で暮らすかを決めます」
そうなのか?
それならば、永遠の命を得て、この女をいつか……。
「しかし、生前許しがたい罪を犯した者、特に七つの大罪を持つ者は、永遠の罰を受けてもらう事が決まっています」
なに? 永遠の罰だと?
さっき言われた俺の罪は……色欲!? 元いた世界で読んだ本に書いてあった……七つの大罪のうちの一つに『色欲』というのがあると。
ちょ、ちょっと待て!! この女の話が本当ならば俺は!!?
「我が名は死界の王『シェリル=シンクレア』……貴方に永遠の罰を与えましょう」
な、なんだ? この女の威圧感はアブゾルより、レティシアよりもさらに上……。
こ、こんな化け物に捕まっちまえば、こ、殺される!!
「もう死んでいるのに、殺されるとは面白いことを言うものですね」
俺は逃げ出そうとした。……が、俺の足を何かが掴む。
俺は足下を見た。俺の足に何かが纏わりついている。
じっくり見てみると、半透明で黒い靄のような骸骨が俺の足にへばりついていた。
は、放せ!!
俺は抵抗するが、骸骨達は抵抗などものともせずに腰辺りまでよじ登ってくる。
や、止めろ!?
「彼等は、貴方と同じ永遠の罰を受けている者達の成れの果てです。最近は永遠の罰を受ける人も少なくなってきましたからね。お仲間ができて嬉しいのでしょう」
ふ、ふざけんな!!? 放せ!! 俺は、俺はぁああああああ!!!!
俺は骸骨達に地中に引きずり込まれる。
一瞬で真っ黒な霧に包まれた俺は、目を閉じてしまう。
すると囁くように、俺の耳元で「目を開けなさい。一つ目の地獄が貴方を待っていますよ?」と聞こえて来た。
い、嫌だ……俺は目を強く閉じるが、黒い骸骨によって無理矢理開かれた。
目の前には、巨大な大斧を持った黄金色の骸骨と白銀色の骸骨がいた。
その周りには、こいつらに嬲られたのか、いくつもの死体が転がっている。
こ、これは?
黄金色の大斧は俺に向かい振り下ろされる。俺の体が肩から崩れ落ちる……。
ぎゃああああああああああ!! 痛い痛い!! なぜ、死んでいる俺に痛みが!!?
暫くすると傷が治り痛みが止むと、白銀色の骸骨が大斧を振り下ろす。
た、助けてくれぇ!!
殺されては傷が治り、殺されては傷が治り、幾度となく繰り返された。
あれからどれくらい経っただろうか、あの女はこれが一つ目の地獄だと言っていた。するとだ、地獄はあといくつあるんだ?
俺は泣き出した。
助けてくれ、助けてくれ、助けて、助けて……。
俺の心の声が聞こえたのか、小さな少女が俺の前に立っていた。
少女は、虹色の翼を8枚背負っていた。隣にはあの女が立っている。
「サクラ様。永遠の罰を与えられている者と話をするのは、あまりお勧めはしませんが?」
「そうだね。でもコレにはどうしても伝えたいことがあってね」
つ、伝えたいこと? そんなことよりも助けてくれ!!
すると少女が俺に笑いかけてくる。もしかして助けてくれるのか?
た、助けてくれるんだな!!
少女が来てから、骸骨の拷問も止んでいる。
だけど、俺の期待とは裏腹に少女の顔から笑顔が消えた。
「君が下衆なのは生前の行為で知ってはいるけど、それでもアブゾルの下衆さに気付かせてくれたこと、レティシアちゃんのような逸材を見つけてくれたこと、エレンちゃんのような穢れ無き魂をこちらに送ってくれたこと、その三つの感謝を込めて一つだけ願いを叶えてあげるよ」
ま、マジか!!?
それなら、俺が望むのは一つだけだ!!
俺を生き返らせてくれ!! こんな地獄から解き放ってくれ!!
「分かったよ」
や、やったぜ!!
「彼女達は私が責任を持って救ってあげるよ」
え? ち、違う!! 俺を助けてくれ!! 俺が助かれば、あいつ等が死のうがどうでもいい!!
は、話を聞いてくれ!! 違うんだ!!
「じゃあ、行ってくるね。君はこれから666の地獄を味わうことになるけど、大丈夫。そのうち終わるよ」
少女はそう言って、下がっていく。
「あ、間違えた。それは通常の地獄だったね。君の場合は永遠に続くんだったよ。良かったね」
え、永遠に?
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!
あぁあああああああああああああああ!!
俺の叫びは虚しく響き、再び骸骨達による拷問が再開された……。
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これでタロウは完全に退場です。




