教会編 37話 勇者一行との戦いです。戦いにもなりませんけどね。
誤字報告ありがとうございます。
勇者達は私を睨みつけています。とはいっても、まだまだ弱いですね。
復活する前の方が、まだ強そうでした。
これに関しては勇者一行も同じです。
「みんな油断するなよ!! 相手は魔王なんだから!!」
タロウの号令で、勇者一行が私を囲みます。
ふむ、なかなかいい対応ですね。
しかし、それでは足りません。
「囲んだのは褒めてあげますが、少し心配です。アドバイスをあげましょう」
「なに? 心配?」
タロウは、私の提案に怪訝そうな顔をしています。
まぁ、敵である私がアドバイスをしようとしてる時点で、不気味でしょうね。
「貴方達と私では圧倒的な戦力差があります。どんなに手を抜いたとしても、貴方がたが私に勝てる可能性は全くありません。貴方達も何もせずに、殺されたくはないでしょう」
まぁ、今は殺すつもりはありませんけどね。
今殺してしまえば、タロウ達は復活前の罪悪感もないまま死ぬだけです。それでは面白くありません。
「囲むだけでは、私に傷一つ付けられませんよ。連携です。5人もいるんですから、誰かが囮になるなどすればいいんですよ。さて、私を倒す方法を考えてくださいね」
私はタロウ達が動くまで、隙を出して待ちます。いつでも攻撃できますよ。
しかし、タロウは不思議そうに私に問います。
「な、なぜ魔王がボク達に戦い方を教える?」
「今のままでは面白くないからですよ。一方的に殺すのは、前にやりましたから」
「ま、前に?」
「それに関しては後です。さぁ、考えてください」
さて、どうするんですかね。
タロウは、武闘家であるアルジーに指示を出します。
「アルジー!! よう……いや、先制攻撃をしてくれ!!」
「わかったよ!!」
馬鹿にされているんでしょうか……。
大声で、指示をするとは……。アルジーが囮になると私は気付きましたよ。まぁ、私以外の人でも気付くでしょうが……。
そもそも最初に陽動と言いそうになりましたよね。
これはマイナス点ですね。
アルジーは、私の気を引くために大げさな動きをします。
それだと死角から誰かが襲いかかろうとしているのが、バレバレですよ。
事実、戦士に合図を出していましたから。
それに強い者にでもなれば気配で分かります。まぁ、それ以前にこれだけ殺気を放って襲って来れば、馬鹿でも分かります。
後ろから襲いかかってくるのは、ソレーヌでしたっけ? 一般人からすれば強いみたいですが、まだまだです。
「遅いですね。そして、囮を使って攻撃するのなら、殺気を押さえることをお勧めしますよ」
私はソレーヌの剣を砕き、お腹を殴って気絶させます。
そして一瞬でアルジーの懐に入り、意識を絶ちます。
「うぅ」「あ……」
「ソレーヌ!! アルジー!!」
敵を前に一瞬でも隙を見せるのは駄目ですよ。
強者同士の戦いならば、その一瞬で勝負が決まりますよ。
タロウはすぐに気を取り直し、ジゼルに指示を出します。
「ジゼル!! 魔法を撃ちこんで援護を頼む!! エレーナ!! 俺に加速の魔法を使ってくれ!!」
だから、大声で指示をするのが駄目なんですよ。相手に作戦がバレバレなんですよ。
仕方ありません。これは教えておいてあげますか。
「残念ですねぇ。大声で指示をするのはいけませんねぇ。次にジゼルが魔法を使うことが私にバレてしまいましたよ」
私はジゼルに一瞬にして近付き意識を刈り取ります。
「ジゼル!!」
そろそろ終わらせましょう。
私は、聖女に近付き魔法で眠らせます。
「エレーナ!! クソっ!!」
「悔しがる暇があるのなら、苦し紛れにでも攻撃してきてください」
私はタロウの聖剣を砕きます。思ったよりも簡単に砕けましたね。
そのまま、タロウを殴り飛ばし気絶させます。
それから数十分後、タロウが目覚めました。
タロウは自分が生きていることを疑問に思っている様です。
タロウが目覚めるまで待っていた私に、タロウが不思議そうに聞いてきます。
まぁ、聞きたいことは分かっていますけどね。
「な、何故ボク達を生かしておく?」
「アブゾルへの嫌がらせですよ。さっき、悪夢がどうとか言っていましたが、その悪夢について話そうかと思いまして」
「ど、どういうことだ? ボクへの悪夢は魔王であるお前が見せているんじゃないのか?」
「ふぅ……。なんでわざわざそんな事をする必要があるんですか? もし個人的に悪夢を見せるような方法があるのなら、個人的に呪いますよ。そっちの方が楽でしょう?」
「な……」
当たり前です。
そもそもタロウが復活していたことも最近知りましたからね。
「先程、貴方も言いましたけどなぜ殺さないのか、と聞いていたでしょう? 私は今は面白いから貴方を生かしているだけです。それ以前は貴方を殺したいほど憎んでいたんですよ?」
「な、何故……」
「貴方は悪夢と言いましたが、それは悪夢ではなく貴方が失っている記憶です」
「え? 何故、お前はボクが記憶喪失なことを知っているんだ?」
「記憶を失う前の貴方を知っているからですよ。実際、貴方は私の大事な親友を自殺に追い込みました。それ以外にも貴方は過去に数々の女性とその家族を不幸にしています」
いつの間にか他の仲間達も目を覚ましていて、今の事実に驚いている様です。
「そ、そんな!?」
「何を驚いているんですか? 貴女達も勇者の愛人ということで随分好き勝手やっていたみたいですよ?」
まぁ、私はそこまでは詳しくないんですが……。
「う……」
私が冷めた目で見ていると、ソレーヌが言い返します。
「そんな馬鹿な話ありえない!!」
そう言っててもソレーヌの顔は青褪めています。
恐らくソレーヌ達も、なんとなく記憶に残っているのでしょう。
「そうですね。信じることは出来ませんよね。でも真実です。信じることが出来ないのであれば、ファビエに来なさい。貴方がたがいかに恨まれているかがわかります」
私は、それだけ言い残し、ファビエ王国に転移しました。
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