教会編 32話 教会への国外退去通知です。
教会完全排除に動きだします。
翌日、私と紫頭は、ファビエ王国内に図々しくもまだ存在している、教会の前に立ちます。
「紫頭、扉を蹴破りますか?」
「止めろ。今日は穏便に話を進めに来たんだ」
穏便に……ですか。
国外退去を命じるのに、穏便も何もないと思うのですが……。
紫頭は静かに扉を開けます。
教会の中には、神官やシスターが多くいて、神敵である私達を睨みつけます。
「やはり睨まれていますね。しかし、何故睨まれる筋合いがあるのでしょうか?」
「確かにな。こいつ等はファビエ王国に寄生しているのにな。立場を理解していないんじゃないか?」
そう言って、紫頭は笑います。
前から思っていたのですが、この人達がよく言う「自分の立場」という言葉、自分達に帰ってきているのを何故分からないのか……。
ファビエ王国ではもう教会は必要ないのですよ? それなのに、姫様の話では、いまだに資金援助を求めてきているそうです。
元々、教会からケンカを売って来たんでしょうに……。
「おい。この教会の責任者はどこだ? 今すぐ呼べ」
紫頭から微量の殺気を感じます。これは脅しですね。
しかし、教会の人間は動こうとしません。
「魔族は神敵だ!! 汚らわしい魔族の言うことなど聞けるわけがない!!」
ほら、始まりました。
人間至上主義か何かは知りませんが、魔族に比べて人間は劣ります。
それなのにアブゾルを信じることで、力を持ったと勘違いしているのが教会です。
「別に、お前等の都合、考えなんざ興味ないさ。俺達はネリー女王が出した命令に従うだけさ」
「ま、まて。ネリー女王だと? アレはしんて……うっ!!」
姫様をアレ扱いですか?
殺してしまいそうです……。しかし、殺してはいけないので、殺すつもりで殺気をぶつけます。
神官の股間に染みができます。
「レティシア。押さえろ」
「分かっていますよ」
紫頭は、姫様をアレ扱いした、神官の肩を掴みます。
「お前、勘違いするなよ? お前等が俺達を神敵扱いしたんだ。ここで殺されても文句は言えないはずだ。教会と俺達は敵同士なんだからな」
紫頭が睨みつけると、神官は膝から崩れ落ちます。
「まぁいい。お前ら教会関係者及び、お前等の身内共々、国外退去を命じる」
「な、なんだと!?」
「そんなの横暴です」
神官やシスター達は、驚いていて怒鳴ってきます。
しかし、紫頭は神官達のその態度を見ても動じません。
紫頭は懐から、姫様から預かった教会の不正が書かれた紙を出します。
「これを見てもそう言えるか?」
「そ、それは!?」
「これは、お前ら教会が行って来た不正を、一覧にしたものだ」
今までは、前国王のツルツルが教会での権力を手に入れたいがために、多少の不正に目を瞑ってきました、が、姫様に代替わりした以上、今までの不正も許すわけがないじゃないですか。
「し、しかし。これは前任の教皇が行っていた事。それとこれとでは責任の所在が違う!? それに前任の教皇は貴様が殺しただろうが!!」
こう言ってくるのは最初っから分かっていました。
「何を言っているのですか? 貴方がたは教会でしょう? 前任の教皇を私が殺そうが、貴方達、教会の罪が消えることはありませんよ?」
私は笑顔で、そう話します。
しかし、シスターの一人が、私に言い返してきます。
「ふざけないでください!! 貴女が前任の教皇様を殺した事の方が大きな罪です」
「何をふざける必要があるんですか? 貴方がたはファビエ王国を神敵認定したでしょう? つまりは敵ですよね? 敵を殺すのに罪も何もないと思うのですが? そもそも、今は教会の不正の話をしているんです。話をすり替えないでください」
「そ、それは……」
私は顔色を変えずにそう言い返します。
シスターの顔色は悪くなります。
「まぁ、不正があろうとなかろうと、教会が定めた神敵の国に教会がある。その時点でおかしいでしょう? さっさと神敵の国から出て行ってください」
「うぅ……」
私はシスターに畳みかけようとしますが、紫頭が私を止めます。
「俺達は、平和的解決を願っている。教会関係者の全ての人間は一週間以内に国外退去してくれ。それまでは手を出さないでいてやる」
「な!!? 脅すつもりか!!」
「当然だろう? お前等は俺達を敵認定したんだ。何故、敵を守ってやる必要がある? そもそも、お前らの家族が教会に俺達の情報を流すかもしれないだろ?」
スパイを疑うのは当然です。
しかし、これに教会の神官達は納得しません。
「ふざけるな!!? 国は、国は教会関係者というだけで、故郷を捨てろというのか!!?」
「私の両親は教会信者ではありません!?」
ふむ。
何を言っているんでしょうかね?
「それがどうかしましたか?」
「「え?」」
「この国に住む、教会に関係のない国民は、教会の横暴だけで神敵認定されたんですよ? 今だって、お城に不安の声と「何故教会がいまだに国にある?」という声が届いています。それなのに教会関係者の家族を助けろ? 特別視しろ? 今の言葉を教会に関係ない人に言ってみてくださいよ」
実際、姫様達が国民を押さえるのにも限界があります。
「これは貴方達のためを思って行っている部分もあるんですよ? このまま神敵の国に居座って、国民の暴動に襲われて惨たらしく死ぬのが望みなら残ればいいじゃないですか。私としてはその方が面白いのですがね」
「そ、それは……」
「それでも残りたいというのならお好きにどうぞ。まぁ、残るというならば、特殊な監視魔法をかけさせてもらいますけどね」
私は冷たくそう言い放ちます。
何故教会関係者に情など持たなくてはいけないのか……。
「それこそふざけるな!!」
神官達の怒りは頂点に達したようです。
「何をふざける必要があるのですか? 悪いのはアブゾルでしょう? 教会はアブゾルの名の下に好き勝手やっていた。その結果がコレでしょう?」
「あ、アブゾル様は……。教会は……」
神官が何かの本を開こうとします。聖書でしょうか。しかし、その行動に何の意味もありません。
「貴方がたの説法を聞くつもりはありません。では、伝えることは伝えました」
私はその場を離れようとしますが、紫頭はまだ神官達を睨みつけています。
そして一言忠告します。
「あぁ。もし反乱起こすならば今までのように甘い対応にはならんぞ? レティシアはおろか、俺は魔族だからな。俺もお前ら教会には思うところがある。無駄な血はお互いに流したくないものだな……」
紫頭はそう言い放ち、私達は教会を後にしました。
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