教会編 31話 教会を潰すことにしました。
アブゾルが、子供に化けている可能性がある……その言葉でこの場の空気が重くなった気がします。
「無茶な事だとは思うが、アブゾルの気配を感じることは出来ないのか?」
グローリアさんが、申し訳なさそうに聞いてきました。
アブゾルの気配ですか。そういえば、気配を感じようとしたことがありませんね。
「そうですね。前に戦った時は唐突に現れましたし、アブゾルの気配を感じ取れないか試してみましょう」
グローリアさんにはそう答えたのですが、恐らく感じ取ることはできないでしょう。
私達人間に感じ取れるのならば、同じ神であり、アブゾルの上位の神であるサクラさんが気付かないはずありません。
そういえば、サクラさんはアブゾルは隠れるのが得意と言っていましたね。
実際に、私は聖女に化けていた髭爺を怪しいとも思っていませんでした。聖女の口から汚い声が出て来たから気付いたのです。
そもそも、あの時点で神の存在をよく知らなかったのですが。
「ダメですね。恐らくですが、教会にもアブゾルの気配が存在しているために、正確に感じ取ることはできないでしょう」
「そうか……」
グローリアさんは、残念そうにしています。
もし、感じ取れるようならば、その気配の子供だけを殺せば済むだけです。そうすれば一気に解決できるのですがね。
あ、聖女の時のように汚い声でしゃべっていたら、気付くのですが、ウジ虫を追い詰めるまでは少女の声でしたし……。
それはともかく、ここにいる誰かに化けられでもしたら厄介です。ここは新しい魔法でも開発してみましょうか。
私達にだけ反応するような……、しかし、それでは国の中枢に入られるかもしれませんし……どうしましょうか。
「私達にできることは何かないのか? 神を詐称するアブゾルに屈するのは気に入らない……、私の場合は私怨もあるのだがな……」
「そうですね。神を名乗るのは勝手ですが、教会を使って国々に干渉してくるのは気に入りません」
クランヌさんとベネットさんが、対策を考えているのか、話し合っています。
私も、都合のよさそうな魔法を作り出そうと考えたのですが、何を作ったらいいのか迷います。
誰も何も話をしないので、この部屋は静まりかえってしまいました。
「レティ、この国の教会を潰しましょう」
姫様が、私に声をかけてきました。
教会を潰すですか……。いつも優しい姫様にしては過激な事を言います。
私は姫様の剣です。姫様が望むのならば、教会の愚か者どもを皆殺しにしてきましょう。
私が黙って立ち上がると、クランヌさんが私を止めます。
「レティシア嬢、ちょっと待て!? ネリー女王!!? この国の教会を滅ぼすのは危険じゃないのか!?」
「そうでもないわ。レティも落ち着いて。別に皆殺しにしようとしているわけではないわ」
え? 皆殺しじゃないんですか?
皆殺しにしないということは、生かしたまま潰すということですか?
「彼等には国外退去を命じるわ。私達は神アブゾルから神敵扱いを受けているのよ? 神敵の国にいつまでも教会があるのもおかしい話じゃない。これは正当な理由での国外退去よ」
「確かにな……。俺の国でも、その方法を使わせてもらうかな。普段の俺ならば、全員処刑でもおかしくはないのだ。国外退去とでも言っておけば、温情をかけられたとでも思うだろう」
グローリアさんも姫様の案に賛成のようです。
そういえば、エラールセ皇国では、ファビエ王国を滅ぼせと命令していたようですね。グローリアさんはそれに対して怒っていたようですからね。
「姫様。教会の奴等が黙って国外退去に応じるとは思えません。その辺りは、どう対処しますか?」
「そこは私に考えがあるから、この話が終わった後、私の執務室に来てね」
姫様は自信ありげな顔で笑います。
会談終了後、クランヌさん、グローリアさん、ベネットさんには来客用の部屋で休んでもらっています。
私の転移魔法があれば、各お城へと送ることができるのですが、私が引き止めました。
その理由は、何の対策もしないまま国へ帰して、何かがあれば目も当てられません。アブゾルが隠れるのが得意な様に、私にも得意な魔法があるはずです。それを開発するまでは、この国にいてもらう予定です。各王も渋々納得してくれました。
グローリアさんには怒られました。いつできるか分からない魔法の為に、一国の王が拘束されるのは駄目だということです。
それは当たり前です。
しかし、私としても、そう待たせるつもりはありません。明日には完成させて見せます。
夜、寝る前に魔法の研究でもしようと思っていましたが、姫様に呼び出されていたので、姫様の執務室に向かいます。
私が姫様の執務室に入ると、紫頭がすでにいました。
「紫頭、夜這いですか?」
「違う!! ネリー女王に呼び出されたんだよ」
呼び出された? 姫様は紫頭も一緒に何かをさせるつもりなんですね。
暫く待つと、姫様が部屋に入ってきました。
「こんな夜更けにごめんなさいね。教会に行って、国外退去を命じてきて欲しいのよ」
「命じる? 不干渉条約はどうする? それに何故俺なんだ? 魔族である俺と、神敵であるレティシアでは、間違いなく納得しないだろう? とはいえ、国外退去を命じるくらいだから、実力行使というわけではないんだろう?」
紫頭がそう言うと、姫様は何かの紙束を紫頭に渡します。
「これは?」
「それは、この数年で発覚した教会の不正よ」
姫様の話では、宰相さんに調べて貰っていたそうで、教会の幹部ともなれば、その権力で好き勝手やっていたということです。
そういえば、私がいた町でも神官長という程度で、町を牛耳っていましたからね。
「それに、教会は魔族を嫌っているでしょう? 私達の国では魔族を受け入れる事にしている。だからこそのケンなのよ」
「そういうことか。わかった。明日早くに行ってこよう。レティシアもそれでいいか?」
「はい」
明日の朝は、教会で神官達を虐めなければいけません。だから今日は魔法の研究はそこそこに、早めに寝ましょう。
明日が楽しみで、寝られないかもしれませんけどね。
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