教会編 25話 危険……ですか。
捕らえられていた魔族のことでなんとなく嫌な予感がしたので、少し調べてみたら死んでいたので、修正しました。
グローリアさんは、私がアブゾルを殺したことを気付いている、じゃなくて、知っている?
レッグさん!! この人はやはり敵です!!
私はレッグさんに目で合図をします。しかし、レッグさんはグローリアさんを見たままで私の視線に気付きません。
グローリアさんは笑って私達を見ています。
「ははは。そう殺気立つこともあるまい。別に、教会に報告する義務もないし、そのことで脅迫するつもりもない」
グローリアさんのその言葉を簡単に信じるつもりはありませんが、今は殺気を押さえます。
「そもそもだ。ネリー姫が女王になるまでは、ファビエは危険な綱渡り状態だっただろうが。俺達が警戒して間者を送っていても仕方が無いだろう?」
そこまで聞いて、レッグさんも落ち着きを取り戻します。
「グローリア殿は教会の嘘に気付いていると?」
教会の嘘。
アブゾルがいない以上、神託など下りるはずもなく、今、下りている神託は全て教会の妄言ということになってしまいます。
その妄言で一つの国を貶めようとしている。その事実が公になれば、国の信用が無くなります。
国は教会の妄言を信じた。国は教会の言うことは聞く……と国民に思われてしまいます。
しかし、グローリアさんの答えは、私達が想像していたものとは違いました。
「そのことなのだがな。教会が嘘をついているとも限らぬぞ?」
「なに? 神がいないのならば、神託など存在しないはず。じゃあ、誰が教皇を選び出した? 枢機卿だと思っていたのだが違うのか?」
「俺も最初はそう思っていたさ。しかしな、俺が知る枢機卿に、そんなことが出来ると思えんのだ」
ん? グローリアさんは枢機卿を知っているのですか?
ファビエ王国の人達やクランヌさん達は枢機卿をどういう人物か知らなかったので、あの手紙から傲慢な人物だと思っていたのですが……。
「俺が知るアードフルはアブゾルに心酔してはいたが、間違ったことは間違っているとハッキリという奴だった」
だった? 何故過去形なのでしょうか?
「ならば、うちの国に最後通達して来た奴は誰だ?」
「まぁ、待て。教会からファビエ王国を滅ぼせとお触れが来たのと同時に、アードフルからも手紙が届いた」
グローリアさんはその手紙を懐から取り出します。
その手紙には震える手で書いたような文字で『教会を信じないでくれ』と書かれていました。
「信じないでくれ……だと?」
「あぁ。おかしいだろ? 教会に心酔していたアードフルがだぞ? しかもこの汚い字。アイツは字だけは綺麗だったはずなんだ」
「いや、俺は枢機卿のことを知らないのだが?」
「そうだったな。どっちにしても何か裏があるのは間違いない。お前達も教会を相手にしようとするのなら、アブゾルがいないと決めつけるのは危険かもしれないぞ?」
確かに……。
今の話を聞いているだけでも、アブゾルを本当に滅ぼせたか不安になってしまいます。
なら、枢機卿が真のアブゾル? いえ、一度サクラさんに聞いてみた方が良さそうです。
グローリアさんが私を見ていたので、考えるのを止めます。
「で? エラールセ皇国としては、どういう対応をするんだ?」
「あぁ。教会を信用はできんが、アードフルに何があったのかもしれない。レティシアはアードフルが真のアブゾルじゃないかと疑っているようだが、俺はそうじゃないと思う」
「私が枢機卿を疑っていると話した覚えはありませんが? でも、そう思っていたことは事実です。何故、グローリアさんがそう思うのか聞いても?」
私は、考えていたことを的中されて、少しだけ感情的になってしまいます。
「ははは。まず、アードフルがアブゾルだった場合、この手紙が俺のところに来ること自体がおかしくなる。もし、混乱させる為に手紙を送るのなら、ネリー女王のところのはずだ」
「何故です? 姫様と枢機卿は接点はありません」
「そうだな。だがな、教会がファビエを狙っていると同時にこの手紙がファビエに来ていたら、お前達はさらに混乱していたはずだ」
混乱ですか? まぁ、私はしませんが。
「少なくとも、レティシアが枢機卿を殺すという選択肢が無くなる」
「グローリア殿。あんたはレティシアちゃんの考えを読むことはできるみたいだが、性格を理解はしていないみたいだな。こいつは、誰が何と言おうと殺すときは殺すぞ?」
はい。その通りです。
流石はレッグさん。私のことを理解している様です。
「それがネリー女王の頼みでもか?」
「「!!?」」
た、確かに、姫様に殺すなと言われれば、殺しません。
「アードフルがアブゾルだった場合は、ネリー女王を使ってお前を封じることは可能なんだ。それをしなかったということは、アードフルがアブゾルじゃない可能性の方が高くなる」
成る程……では……。
「新しく選任された教皇ですか?」
「それもないと思う。まぁ、今この話をしても結論は出んだろう。レッグ」
「なんだ?」
「ネリー女王との会談を設けたい。その場にエスペランサ魔国の国王も呼んで欲しい」
「何故だ?」
レッグさんがそう答えると、グローリアさんは呆れた顔をします。
「お前は冒険者としては一流だが、王族としてはまだまだだな。教会に対する牽制と、周りの国に挙兵を思い留まらせるためだ」
「周りの国に?」
「あぁ。俺の国は北の大国と呼ばれている。それは軍事力があるためだ。それに加え、今のファビエ王国の軍事力も上がっているうえに、レティシアという奥の手まで存在する。これだけでも挙兵するのは無謀だというのに、そこに魔族の国まで存在する。この三国に戦争を仕掛ける馬鹿な王はいないさ」
グローリアさんは、紙に何かを書ています。
そして、その紙をレッグさんに渡しました。
「これをネリー女王に渡しておいてくれ。会談の日程が決まったら、レティシアに日程を伝えさせてくれればいい。そいつなら、この謁見室に転移してくることも可能だろう?」
「可能ですよ。いつでも寝首を取れますよ……ふふっ」
ついつい悪い顔をしてしまいます。
その後、私達はファビエ王国に戻ってきました。
「ご苦労様。で? グローリア殿はどう言っていましたか?」
「あぁ……」
レッグさんは、グローリアさんが渡した紙を姫様に渡します。
「そう……。グローリア殿と枢機卿がつながっていたのは驚きね。でも『教会を信じるな』……ね。クランヌ殿と連絡を取って会談の日程を決めておくわ。宰相さん、お願いします。」
「はい」
そう言って、宰相さんは部屋を出ていきます。それと同時に紫頭が部屋に飛び込んできました。
「女王!! 大変だ!! ……レティシアもいたのか!? ちょうどいい!!」
紫頭がこれだけ焦っているのは珍しいですね。
「ちょうど貴方を呼ぼうと思っていたのだけど、どうしたの?」
紫頭は、呼吸を整えてから、驚きの言葉を発しました。
「勇者が……タロウが拷問室から消えた!!」
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今日中にクジ引きも更新する予定です。そちらもぜひ読んでみてください。そちらは復讐系ではないです。これも今は復讐ではないですけど。
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