教会編 23話 あの時は殺しきれなくて残念です。
日間ハイファンタジー 34位にランクインしました。(12月6日朝8.00現在)
ありがとうございます。
生ゴミを処理してから数日経ちました。
生ゴミが消えた後のマイザー王国は、一瞬だけ混乱しましたが、すぐにマイザー国王の顔をしたホムンクルスを送り込んだので、混乱したのは城内だけで済みました。
まぁ、生ゴミが消えたからといって、マイザー王国国民が喜びこそすれど混乱するとは思えないですがね。あくまで私の予想ですが。
国王人形には、生ゴミと一緒に好き勝手やっていた貴族と騎士達を排除させます。
排除と言っても政治的に排除していては、時間がかかってしまいます。私もストレスが溜まっていましたし。
この国は、中身まで本当に腐っていました。
ファビエ王国も、先代国王の時は腐っていましたが、宰相さんや一部の貴族のように、国を想って生きてきた人もいました。
しかし、この国には見事なまでに腐りきった貴族しかいませんでした。
生ゴミが消えた後、一斉に夜逃げしたようで、外門の外で待機していた私達に狩られていきました。
夜逃げなどしなければ、生かして洗脳なり、教育なりをするつもりだったんですけどね。自分だけ逃げようとするから死ぬんです。
腐りきった連中の命乞いは笑えましたよ?
「金ならいくらでも払う」
見事なほどに、貴族全員が同じ言葉を発していました。貴族たちの持つ汚らしいお金なんて何の役にも立たないというのにです。あ、貴金属は別ですよ? あれはマイザー王国の物ですから。
貴族達の粛清が終わった後は、スラムを牛耳っていた『ベネット』さんという人物が宰相につき、国王人形を諌めながら、国を良い方向に向かせて、時期が来れば国王人形を処刑し、ベネットさんが国王に就く予定です。
私としては、この人に国を任せて大丈夫か? と心配したのですが、実はこの人は元貴族、しかも公職についていたような高位の貴族だったそうです。そんな人が何故スラムにいたのかは不明ですが、この人ならと姫様も納得したようです。
国王として独り立ちするまでは、国王人形を生かしておき、国王を諌める宰相の姿を見せつけて、ファビエ王国に助力を仰ぎながら国を守っていくそうです。
しかし、このベネットという人は行動が凄かったです。
宰相に就いたその日のうちに、お城に備蓄してあった食料を国民に配給し、生ゴミがため込んでいた貴金属類を姫様経由で売り飛ばし、お金に変えて大量の食糧を他国から買い付けていました。
「この国に必要なのは、まずは食糧だ。腹が減っては何も出来ん。食料調達の為に他の国にも協力を仰ぐが、決して教会に属すことはないから、安心して欲しい」
彼は真っ直ぐな目で姫様にそう伝えました。
私が見た感じ、レッグさんよりも貴族っぽかったですよ?
私がそう言うと、レッグさんが拗ねていましたが、それは仕方ありませんよね。だって、見た目が元山賊ですから。
マイザー王国のことがある程度片付いたので、私とレッグさんは姫様に次に行く国を聞きに行きます。
「北の大国と呼ばれている『エラールセ皇国』に行って欲しいの」
「大国か……。あの国には狂皇と呼ばれている皇王がいたな……」
北の大国、それに狂皇ですか……。懐かしいですね。
お二人にはまだ話していませんが、実はその狂皇さんに会ったことがあります。
いえ、戦ったことがあります。
結果は引き分け、私も怪我をしましたし、狂皇さんもだいぶ怪我をしていました。
あの頃はまだ幼く未熟だったため、殺しきれなかったのが悔しいです。ですが、今となってはそれが良かったのかもしれません。
……リベンジが出来そうですね。
私はついつい笑みがこぼれてしまいます。
「まさか、狂皇とレティシアちゃんをぶつけるつもりか?」
「ぶつけるって、人聞きの悪い。あの人は狂皇と呼ばれているけど、力を全てと思っている人だから、教会なんかに従おうとは思わないはずよ」
あれ? ぶつけないんですか?
私としては、それに期待しているのですが……?
力が全て、ですか……確かにそのような人物でしたね。
私が戦ったあの人は、魔法や魔力にほぼ頼らず、ひたすら自身の身体能力での攻撃という人物でした。
その攻撃力は、エスペランサ四天王のパワーを遥かに上回っていました。私が力負けしましたしね。
戦わないというのは残念です。
「分かった。じゃあ、今すぐ行って来よう。レティシアちゃん。転移は?」
「できますよ。当然です」
戦う方法を思いつきました。
いきなり謁見の間に行って、びっくりさせましょう。あの人の性格ならば、その瞬間に交戦開始です。あ、狂皇さんは私が貰いますね。あれは私の獲物です。
そう思っていたのですが、レッグさんは私を真剣な目で見てビックリすることを言ってきました。
「じゃあ、エラールセ皇国の外門のすぐそばに転移できるか?」
はい? それじゃあ、奇襲はできませんよ?
私はついつい不機嫌な顔になってしまいます。
「できますけど、謁見の間ではいけないんですか?」
「あぁ。狂皇はどちらかと言えば、俺達側の人間だと思う。だからこそ敵には回したくはない」
そうでした。
国を背負う以上、短絡的に交戦するわけにはいきません。
「不満そうだな」
「そうですね。あの人とはちゃんと決着を付けたかったですから」
「狂皇を知っているのか?」
「はい。あの獣人のように野性味のあふれた人でしょう? 小さい頃、エラールセ皇国の謁見の間に侵入した時に、一戦交えています」
「結果は?」
「引き分けです」
私がそう言うと、姫様は驚き、レッグさんは呆れています。
何故呆れますか? 前に言ったはずです。私は世界を滅ぼすつもりだったと。
「ということは、エラールセ皇国の謁見の間にも侵入することができるんだな?」
「そうですね。だけど、レッグさんの言う通り外門から正式な手続きで入った方が良いでしょう?」
今回は殺しに行くわけではないようなので、その辺は私も理解しています。……いえ、今しました。
「外門の外で頼むよ、レティシアちゃん」
頼まれては仕方ありません。
行き先は、エラールセ皇国外門前です。
レビューを書いていただきました。ありがとうございます。
ブックマークの登録、評価、ありがとうございます。
少しでも面白いや続きが気になるという方がいれば幸いです。
よろしければ、ブックマークの登録、評価をよろしくお願いします。
他にも連載していますのでよろしくお願いします。
新・クジ引き https://ncode.syosetu.com/n4468fd/
旧・クジ引き https://ncode.syosetu.com/n2043en/ 連載凍結中




