教会編 21話 私が話す隙がありません。
誤字報告ありがとうございます。
神託が信託になっていたのを修正しました。
三日後、私とレッグさんは姫様の執務室に呼び出されます。
「これが、書簡よ。レッグさん、中を確かめて」
「俺が見てもいいのか?」
「えぇ。貴方が言った通りに書いたつもりだけどね」
レッグさんの言った通り? 大丈夫でしょうか?
「なんだ? レティシアちゃん。あ! その顔は俺の事を小馬鹿にした顔だな?」
レッグさんは、私の頭をグリグリします。
しょうがないじゃないですか。レッグさんは野蛮で頭が足りないんですから。
あれ? 頭へのグリグリ攻撃が強くなりましたよ? 顔に出てしまいましたかね?
「あはは。レティ。大丈夫よ。私が間に入っているんだから」
まぁ、そう言われたら安心です。どうも、レッグさんだけでは、心配になってしまいますからね。
レッグさんは少し不満そうですが、手紙を読んで、綺麗に封筒に戻します。
「良し、これでいい。まぁ、あのおっさんがこれを見る事もないかもしれないがな」
せっかく姫様が書いたのに、どういう事でしょうか?
「レティシアちゃん。謁見の間に直接転移する事は出来るか?」
「出来ますよ」
いつでも暗殺できるように、寝室ですら転移できますから。
「じゃあ、謁見の間まで頼む。ネリー行ってくる」
「行ってきます」
私は姫様に、お辞儀します。
姫様は笑顔で、軽く手を振ってくれます。
「行ってらっしゃい」
私とレッグさんは、マイザー王国謁見の間に転移してきます。
謁見の間には数名の騎士と僧兵? それに生ゴミと見た事のある顔があります。
「な!!? 貴様ら!!」
生ゴミは、私達に驚いています。レッグさんは二人を見て、口角を吊り上げます。
「お? 教会の人間までいるじゃねぇか」
教会の人間ですか……。
あ!! 思い出しました。
確か、私がいた町にいた神官です。
町を焼き払う前に、どこかへ行ったんでしたね。そのおかげで命拾いしたという事ですか。
生ゴミは、レッグさんに指差し、「き、貴様ら!! もう逃げ場はないぞ!? 今教会から、お触れがあって、その答えを出したところだ!!」と息巻いていました。
答えを出した……。
敵となる事を宣言しましたか?
……というよりも、騎士も僧兵も、どうして襲ってこないんですか? 自分達の護衛対象が、殺されるかもしれないというのに。
レッグさんは勝ち誇る生ゴミを無視して、神官の方を見て笑います。
「この問題に教会が関与してくるのか?」
レッグさんの言葉に神官は、怒りの表情を見せています。
「教会は、神・アブゾル様の神託通り、ファビエ王国を神敵に定めました!!」
「教会自ら不可侵条約を反してくるという事だな?」
教会自ら? どういう事でしょうか?
「な!!? そうではありません!! 貴方がたは、アブゾル様によって神敵認定されたのです!!」
今、この神官焦りましたね。
あ! そういう事ですか。
おそらくですが、この不可侵条約というのは、教会側から出た案かもしれません。
「神敵認定ねぇ……。前にも言ったと思うが、俺達はアブゾルを神ではなく。魔王認定しているんだぜ?」
「アブゾル様を魔王だと!? この痴れ者が!!」
「痴れ者ねぇ……。前から思っていたんだが、どうしてお前等は、自分の信じるモノ以外を見下しているんだ?」
「見下すなんて、そんな下劣な事をするか!!」
いえ、少なくとも、私の会った教会の人間達は、自分達教会以外の人間以外を見下していたように感じましたが?
「今回の事にしてもそうだろ? お前等は、ファビエ王国を神敵認定しているが、それはどういう理由だ?」
「か、神の神託です!!」
「ほぅ。お前等にしか聞こえない神の神託とやらでいちいち国が滅ぼされるんじゃ堪ったモノじゃねぇな。そんなに自分達の意見だけを通したきゃ、教会で国でも経営してみたらどうだ?」
「な!?」
ふむ。
これは良い言葉ですね。
不可侵条約で、各国に寄生している教会には国の経営なんて、できるはずもありません。
「マイザー国王。勝ち誇っているが、お前も考えろよ? ファビエ王国で起こっている事は、明日は我が身なんだぜ?」
「なに?」
急に、自分に話を振られて、挙動不審になる生ゴミ。本当に王としての資格のないゴミですね。
「教会は、うちの前王が金を払っている時には、何も言ってこなかったんだ。ネリーが女王になって、金を払わなくなったら神敵か? いくら何でも横暴もいい所だろう?」
「そ、それは……。そちらの国のレティシアが教皇を殺したのが原因ではないか!!」
ん?
最近まで、私の所有権を欲していたのに……。
教会に手を貸すのは確定の様ですね。
「ほぅ……。教会は自分達の身内が殺されたのを理由に国まで滅ぼすのか? まぁ、いいさ。俺達は今から各国を渡り歩き、教会の横暴を伝え行く」
「ま、待て!! そ、そんな事はアブゾル様が許さん!!」
あはは。
いつものセリフが出てきました。
「許さん? 勘違いするなよ? 許してもらう必要など何一つないさ」
「え?」
「神アブソルはもう存在しない」
「な!!?」
あれ? それをバラすんですか?
「今いるのは、魔王アブゾル。偽勇者タロウという害虫を生み出した、害悪だ!!」
あ、そういう方向ですか。
「き、貴様!! アブゾル様を愚弄するのか!!?」
はい。「愚弄するのか」いただきました~。
ハァ……。先程から、レッグさんが主体に話をしているので退屈ですね……。
「残念だったな。俺達は神ギナ様を信じる」
「そのような邪神を信じるだと? 愚かな……」
「神ギナが、邪神かどうかはお前等が決める事じゃねぇ。俺達が決める事だ。お前らアブゾル邪教とは話す事は何もない。マイザー国王。お前は今言ったな」
「な、何をだ?」
レッグさんから、殺気があふれ出します。
周りの騎士達は静かですね。寝てるんですか?
あ、レッグさんの気迫に完全に飲まれているのですか。……情けない。
「教会の命令の答えを出したと……」
「め、命令……だと?」
命令という言葉を聞いて、生ゴミの顔に動揺が見られます。
「命令だろ? 教会の名の下に神敵ファビエ王国を滅ぼせ……だっけか? その命令に従うんだろ?」
「い、いや……め、命令に……ワシが?」
も、もしかして、気付いてなかったんですか? 大丈夫ですか? この生ゴミ。
「まぁ、どっちでもいいさ。俺達は、お前等に宣戦布告をする」
「な!!? そ、そんな事を世界が許すはずはない!! 不可侵じょうや……!!?」
「破ったのは、お前等が先だろう? 俺達が送った使者をことごとく殺した。教会も身内が殺されたのを理由にファビエ王国を滅ぼそうとしているだろう? 同じさ……」
レッグさんが、悪い顔で、神官を睨みます。
「ま、待ちなさい!! 一介の使者と教皇様を同等に考えるなど「はぁ? お前等の教会には、命に優先順位が存在するのか?」……うぐっ……」
命に優先順位ですか? あるに決まってますよ。
私にとって、この場では、レッグさん以外の命は、ゴミと変わりませんから。
「ま、待て!! ワシらはまだ、教会に協力するとは言っておらん!!」
「はぁ……。お前、何を勘違いしている? ファビエ王国はお前等の態度にブチギレたんだ。そこに教会は関係ない」
「ま、待ちなさい!! マイザー王国を滅ぼすというのなら、教会も黙っていませんよ!?」
ついに教会が、介入してきますか?
「そうか? ならお前等は、俺達に黙って滅ぼされろと? 馬鹿か? それに教会は、二国間のいざこざに介入してくるという事か? なら仕方が無い。俺達も、エスペランサに応援を要請しよう」
「え、エスペランサ?」
「魔国エスペランサ。魔族クランヌ殿が治める魔族の国だ」
魔族と聞いて、神官の顔が青褪めます。
「ま、まさか……」
「お前等が定めた魔王の国だ。分かるか? 教会。お前等によって不当に貶められた魔族の国だよ」
元魔王ですか。レッグさんの顔が少しだけ暗くなります。
そうですよね……。クランヌさんをそう呼ぶのは、私も本意ではありません。
「う、う、う……」
「マイザー国王。お前の首を差し出せば、国民は助けてやる。しかし、拒むのなら、俺達の最高戦力を城に解き放つ」
私ですね? 私でしょう? 殺しますか?
ついつい笑顔が零れてしまいます。
「ま、まさか……れ、レティシア嬢?」
レッグさんも、ものすごく悪い顔になって、私の頭を撫でてきます。
「そうかもな」
「私としては、ここで暴れても良いのですが?」
ようやく喋る事が出来ました。
しかし、レッグさんは、首を振り、生ゴミに書簡を渡します。
「まぁ、三日だけ待ってやる……、よく考えるんだな」
レッグさんはそう言うと、私に転移するように言います。
今日は、これで終わりですか。
私達は、ファビエ王国に帰る事にしました。
誤字報告の新機能があったんですね。全然、気づきませんでした。申し訳ないです。
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今回のレティシアは、ちょっとだけはっちゃけています。最近、人を殺せてないから、ストレスでも感じているのでしょう。
少しでも面白いや続きが気になるという方がいれば幸いです。
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