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親友が酷い目に遭わされたので全てに復讐しました。  作者: ふるか162号
2章 教会編

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教会編 8話 クランヌさんですか。お久しぶりです。

20年2月10日 改稿


 レーニスちゃん。

 孤児院で暮らす元気いっぱいの十一歳の少女です。

 私の方がお姉さんなのですが、見た目はレーニスちゃんの方が大人びているので、私の方が年下にみられてしまいます。

 

 孤児院は教会の運営で、私は教会に嫌われているのですが、教会の敵である私に懐いてくれました。


 そんなレーニスちゃんをなぜサクラさんが選んだのかがわかりません。

 私の知る限り、レーニスちゃんには特別な力はありません。


「なぜ、レーニスちゃんが聖女なのですか? 聖女になったら不幸にしかなりません」

「うん? レーニスって子を選んだのは、レティシアちゃんに懐いているからだよ」


 私に懐いているから聖女になるんですか?

 ……嫌です。

 国の危機に関する話なので、感情だけで動くのはいけないのかもしれませんが、それでも……嫌です。

 国の危機になる話では、感情だけで動くのはいけない事かもしれません。

 

 でも嫌です……。


 これは私のワガママです。

 だけど、レーニスちゃんを不幸にはしたくありません。


「サクラさん。この話ですけど……お断りします」

「どうして? レーニスって子が聖女になれば、教会は抑えられていい話だと思うよ? しかも聖女になれば、教会も無下に扱えないでしょ? 良い話じゃない?」

「良い話ですか? 別に聖女にならなくてもあの子は幸せになるはずです。でも、聖女になればエレンのように不幸になってしまいます」


 もし、レーニスちゃんを犠牲にしなければこの国がよくならないのであれば、誰に何を言われようと、私が教会を滅ぼします。


「なるほどねぇ……。レティシアちゃんがアブゾルを殺した理由って、エレンちゃんの事があったからだよね。同じ聖女になるレーニスちゃんも同じ結果になるかもしれないという事だね」

「……はい」

「うん。理解したよ。でもね、それじゃあ、ダメだよ」


 ダメ?

 教会を利用するために、誰かが犠牲になるなんて、そっちの方がダメです!!

 私はサクラさんを睨んでしまいます。そんな私を見て、サクラさんは溜息を吐きます。

 

「うーん。何がダメか聞きたいみたいだね」

「はい」

「そうだねぇ。おそらくレティシアちゃんは、一人で教会を潰そうと考えるだろうね。でもね、その結果、レティシアちゃんが一人で背負い込んだとしたら、ネリーちゃん達の気持ちはどうなるんだい? レティシアちゃんがレーニスちゃんの事を大事に思っているように、ネリーちゃん達はレティシアちゃんの事も大事に思っているんだよ。それにね。私が誰かを犠牲にしなきゃいけない選択肢を、レティシアちゃんに課していると思っているのかい?」

「え?」

「私はこれが最善だと思っているんだよ。だって、レーニスちゃんを聖女にしたとしても、勇者(・・)はレティシアちゃんなんだよ?」


 私が……勇者……ですか?


「レティシアちゃんが勇者で、タロウが勇者じゃないんだ。だから、聖女が不幸になる事はないんだよ。だって、この世界にレティシアちゃんよりも強い生物は存在しないんだよ。そのレティシアちゃんがレーニスちゃんを守るんだよ。それなのに、レーニスちゃんに危険が及ぶと思っているの?」


 守る……ですか……。


 確かに……、考えた事が無いわけじゃありません。

 もし、私がエレンと一緒に……、エレンの傍に入れたのならば、ウジ虫に好き勝手させなかった……と。


 もし、エレンが教会が敵になったとしても、自殺させる事は無かったんじゃないのかと……。

 いまさらそんな事を考えても、時は戻らないのは分かっています。

 だからこそ、私がレーニスちゃんを守る……。

 私は考えます。


 その時……。私の背後で声がしました。


「今の話で悩んでいるのなら、私が協力しよう……」


 誰ですか?

 私は声がした方を向きます。

 そこにいた人は、銀髪で赤い目をした美形の……魔族でした。

 しかし、この人が放つ魔力は……。


「何故、貴方から魔王と同じ魔力を感じるんですか?」


 私がそう尋ねると、この魔族さんは悲しそうに笑います。


「復讐者、久しぶりだな。私が魔王本人だ。それと、これが私の本来の姿なんだよ」


 本来の姿ですか……。

 確かに、私が戦った魔王は魔族らしい姿でした。しかし、今の魔王は人間のように見えます。


 魔王は姫様に視線を移し、頭を下げます。


「初めまして。ファビエ王国女王ネリー殿。魔族の王を義務付けられていたクランヌという」


 義務ですか……。

 魔王を名乗っていたのは、神の意志でしたから、神が死んだ以上クランヌさんには魔王を名乗る義務はなくなります。

 だからこそ……。

 私の答えは決まりました。


「サクラさん。クランヌさんに再び魔王を名乗らせる事は出来ません。だからこそ、今回のこの茶番を受け入れる事は出来ません」


 この人は長い間、神の傀儡として苦しんできたんです。いまさら茶番とはいえ、魔王を名乗らせるのは可哀想です。


「私に同情しているのか? 優しいところもあるじゃないか。ブレインが言っていた性格とはずいぶんと違うようだ。俺とて魔王を名乗るのはごめんだが、今回の事は世界の為に必要な事だろ?」


 確かにその通りかもしれません。

 しかし、苦しみから抜け出した人を再び同じ苦しみに戻す必要ありません。

 私が折れないというのがわかると、サクラさんは困っているような顔をしています。

 サクラさんが何かを言おうとしたとき、今まで黙っていた紫頭が、クランヌさんの前に出ます。


「まお……いえ、クランヌ様、お久しぶりです」

「ケンか。久しぶりだな。元気そうで何よりだ。しかし、お前が裏切るとは思ってなかったぞ」


 クランヌさんは悪い笑顔で、紫頭に顔を近づけます。

 紫頭は顔を青褪めさせますが、クランヌさんは優しい顔に戻り、紫頭の頭を撫でます。


「冗談だ。確かにお前は、自己保身で魔族を裏切った。しかし、お前が魔族を裏切った事により、俺達は神の意志から抜ける事が出来たんだ。感謝こそすれど、恨む事などないさ」

「し、しかし……」

「結果が良ければ、全てが許されるんだよ」


 クランヌさんの言葉に嘘はなさそうです。

 紫頭は、その言葉を聞いて目に涙を浮かべます。


「ありがとうございます」


 いくら私でも、この感動的な場を乱す事は出来ません。

 姫様もサクラさんも私と同じ気持ちなようで、一言も発しませんでした。

 私達の温かい視線に気づいた紫頭が、恥ずかしそうにします。


「……あ、すいません。先程の魔王の件なんですが、実は良い案があるんですが……」


 紫頭の頭は私よりも優れています。彼が良い案というのであれば、きっと良い案なのでしょう。


 私達は、紫頭の話を聞く事にしました。


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