31話 勇者がパワーアップしてしまいました。問題ありませんけど。
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20年1月15日改稿
さて、これでウジ虫達の攻撃は、一旦止まりましたかね?
二人殺し、武闘家は戦意喪失気味。聖女はおそらく戦えずに、ウジ虫は何をしているのでしょう?
ウジ虫は、ソレーヌの死体を見て、茫然としていました。
敵を前にボーっとしているウジ虫を見て私は溜息を吐きます。
「ウジ虫。貴方の取り巻きが二人死にましたよ。武闘家も偉そうな事を言っていましたけど、無様にそこに転がっています。で? 貴方は何ができるんですか?」
私の言葉に、ウジ虫は肩を震わせます。
これでも動きませんか。
「まだ、分かりませんか。仕方ありません。後の二人も殺してやる気を出してもらいましょう」
私はアルジーの息の根を止めるために、近づきます。アルジーは私に怯えて這いつくばったまま逃げようとしています。
「ま、待て!!」
アルジーにとどめを刺そうとした瞬間、ウジ虫が私を止めるために、叫びます。
「はて? 一々止める暇があるのなら、さっさとかかって来てくれませんか? それとも、口だけですか?」
「だ、黙れ!!」
「黙ってもいいのですが、貴方が愚図だから、二人も無駄死にしましたよ。そして、これからさらに二人死ぬんです」
私は笑みを浮かべながら、アルジーに近づきます。と、その時アルジーは急に立ち上がります。
私の予想では、しばらく立てないと思っていたのですが、予想を超えてきましたか?
いや、聖女が何かをしましたかね?
「お、お前!! 許さないぞ!!」
アルジーの目は血走っています。魔力も高まっているようですね。強化魔法でしょうか?
アルジーは、さっきとは比べ物にならないくらいの速度で襲ってききました。
私はアルジーの攻撃を適当にいなしながら、苦戦するふりをします。
「くっ!! なかなかやりますね」
私は棒読みで苦戦をアピールします。紫頭が声を殺して笑っているのがムカつきますが、ウジ虫は本当に苦戦していると思い込んでいるみたいです。
「ははははは!! アルジーは怒るほど力が増すんだ!! 怒っている時のアルジーは俺以上の強さだ!!」
ウジ虫以上と言われても、ウジ虫もそんなに強そうに見えないのですが、それよりも強いからって何が凄いんですかねぇ……。
「死ねぇええええ!!」
私はアルジーの拳を掴み止めます。
そして……。
「えい!!」
グシャ!!
私はアルジーの拳を握りつぶします。
「ぎゃあああああ!!」
これで片手です。
私はもう片方の腕の骨をへし折ります。
「ひぎぃいいいい!!」
アルジーは痛みで恐怖が蘇ったのか、泣きそうになりながら、後退ります。
しかし、逃がしませんよぉ……。
私はアルジーの膝を思いっきり蹴り、骨を砕きます。これで、逃げられませんね。
アルジーはその場に仰向けで倒れました。私はアルジーの首を掴み上げます。
「拳を潰すくらいの握力で 首を潰したらどうなるでしょうかね?」
私が、そう脅すと武闘家はまた泣き出します。
「はて? なぜ泣くんですか? 魔族と戦う……いえ、貴女達も、今まで無抵抗な人を喜んで殺していたでしょう? 暴力という他者を傷つける方法を使っているのに、それが自分に返ってくるとは思わなかったんですか?」
「た、助けて……」
「はぁ? また、それですか?」
私は呆れ返ってしまいます。
「貴女達はどうして、自分が死にそうになったら命乞いをするんですか? 王都で殺人をした時に、貴女が殺した相手は命乞いしなかったんですか? あ、貴女達が殺した人達と貴女では、決定的に違う事がありますよ。わかりますか? マリテさんと言いましたか? 答えてください」
私は聖女に視線を移し尋ねます。
「え……。そ、それは……」
答えが出るまで待っていてあげたんですが、答えは返ってきません。
答えられないのなら仕方ありません。
私はアルジーの首を離します。アルジーは片足と折れた腕で必死に這って逃げようとしています。
「逃がしませんよぉ……」
私はアルジーの背中を踏みつけます。
「マリテさん。分かりませんか? 貴女もこの這いつくばっている虫と何も変わりません」
「そ、それは……」
「貴女は聖女に選ばれて有頂天にでもなっていましたか? 前任の聖女がどんな目に遭ったかを聞いていますか?」
聖女は、震えながらも言い返してきます。
「あ、あの偽聖女は、身体を使って、勇者様を騙したと教皇様から、き、聞きました。そんな痴女には神の裁きを……「黙れ!!」ひぃ!!」
私はアルジーを踏みつける力を強めます。
「あああああああ!!」
煩いですねぇ……。
このまま踏み殺しますよ。
「エレンは貴女と違い、ただの町娘だったんですよ? そこのウジ虫に目を付けられなければ、死なずに済んだはずです。それを死ぬまで追い詰めたのは、教会と、そこのウジ虫でしょう?」
「そ、それは……」
「貴女は教会の操り人形なのでしょう? そんな貴女は、教会の言う事だけを信じているのでしょう。しかし、貴女達はすでに普通の人間ではないのです」
「な、なにを……」
「まだ、分かりませんか? 貴女達の愚行を誰が諌しめましたか? 勇者の犯罪を誰が咎めましたか?」
「あ……あ……」
「貴女達に殺された人達は、誰に守ってもらえましたか?」
「貴女達、教会の人間はこう言います。教会は、弱い人間を守る為に存在していると……。しかし、ウジ虫は弱い存在ですか? 勇者というのは弱き存在ですか?」
私のアルジーを踏む力が強くなります。
「あ……が……ごぼぉ!?」
アルジーは血を吐きました。
まぁ、どうでもいいです。
「さて、もう一度聞きますが、貴女達に殺された人と貴女達はどう違うか分かりましたか?」
マリテの顔が青褪めます。ようやく自分が言ってきた事に気付いたのでしょう。
「貴女は、エレンの後継に選ばれただけだから、生かしてあげようと思いましたが、やはり止めです。貴女も教会に染まっている様ですから、必要ありません」
「きょ、教会に染まっているとは?」
はぁ……。その程度の事すら分かりませんか。
「じゃあ、聞きますが、貴女はエレンから何があったのかを聞きましたか? 教会が言う事を、一方的に信じていただけでしょう?」
私がそう聞くと、マリテは黙ります。
「貴女の知る神というのは、教会だけを全てと考えているのですか? この世界の神ではないのですか? もし、その神が、信じる者しか救わないというのであれば、随分と視野の狭い神ですね」
マリテは言い返せずに、俯いています。
「教会の信条は何ですか? そこのウジ虫が犯罪を起こしても目を瞑り、教会に属していない者が不幸になっても、笑って傍観しているのが信条ですか?」
「教会は……。困っている人を……救う……」
マリテはブツブツと何かを言っています。
「困っている人を救う? バカ言っちゃいけませんよ。ウジ虫達が欲望のままに起こした事件の被害者こそが、一番困っている人じゃないんですか? それとも神アブゾルは教会に払ったお金で、優劣を決める俗物に染まった神なのですか?」
「あ、アブゾル様は……」
マリテは放心してブツブツと呟いているので、放っておいていいでしょう。
「ま、待て……。お、お、お前……エレンの親友という奴か……」
今まで黙って、私とマリテの会話を聞いていたウジ虫が今更な事を言ってきます。
と、その前に、足元のうるさいモノを黙らせておきましょうか。
私はアルジーを踏む力をさらに強めます。すると、アルジーの背中の骨がギシギシと音をたてます。
「が……や、やめ……」
踏みつける力を徐々に上げていきます。
「い……た、タロウ……た、助けて……」
アルジーは血を吐きながら、ウジ虫に助けを求めます。が、ウジ虫は、少しずつ後退ります。
「さようならです」
私はそう言って、一気に踏む力を強めます。
「ぎゃっ!!」
そう悲鳴を上げた後、アルジーは動かなくなりました。
「で? 今、何か言いましたか? 何が言いたかったのかはっきり言ってください」
私は剣を二本構えて、勇者に近付きます。
その時、マリテがウジ虫に近付きます。
ん? 目の焦点が合っていない? どういう事ですか?
『タロウ。貴方に勇者の力を最大限に与えましょう。その力で目の前の愚か者を殺しなさい』
マリテはそう言って、ウジ虫に抱きつきます。さっきまで俯いてブツブツ何かを言っていたのですが、何があったのでしょうか?
マリテがウジ虫から離れると、ウジ虫は叫び声を上げます。
「うわああああああああああああ!!」
ウジ虫の体から光が溢れます。
やがて、光は収まり、一回り大きくなったウジ虫がいます。これは……。
「『強制身体強化』ですか?」
ウジ虫の魔力と体が悲鳴を上げているのがよくわかります。
おそらくですが、万が一、私に勝てたとしても一時間も生きていられないんじゃないですかね?
どうして、そんな事がわかるのかは知りませんけど、頭に知識の様なモノが流れてくるんですよね。
「この力があれば、貴様や魔王を簡単に殺せそうだ!!」
そう言って、ウジ虫が私に近付きます。
「死ね!!」
ウジ虫は剣を振り下ろしてきます。
そこそこ速いですね。しかし、これでも魔王には劣ります。
私は襲ってくるウジ虫の剣を避けて、ウジ虫の腕を斬り落とします。
しかし、私の剣はウジ虫の腕を斬り落とせませんでした。
はて? 腕を斬り落とせませんでしたよ?
「ぐははははは!! 効かぬわ!!」
これは思っている以上に、防御力が上がっているみたいですね。
これは、楽しめそうです。
本当は聖女はここで退場させるつもりでしたが、残しました。
少しでも面白いや続きが気になるという方がいれば幸いです。
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