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15話 邪神召喚


 レティシアちゃん達と別れて二年が経った。エレンちゃんとは一年前に開いた神界会議の時に会っている。

 てっきりレティシアちゃんを護衛に連れてくると思ったんだけど、一人で来ていた。

 もしかして仲が悪くなった? と思ったんだけど、そうじゃなくて神界は安全だからと、無理を言って一人で来たみたいだ。


 私は相変わらず神王として忙しくしていた。そんな時、レナータから変な報告が受けた。


「邪神? それってレティシアちゃんの事?」


 神界会議の時にエレンちゃんが「最近、レティが邪神としてあがめられて困っているんですよ」と話してくれていた。

 今のところ、神界が注視している邪神はレティシアちゃんだけのはずだ。だけど、レナータの話ではそうじゃないらしい。


 レナータが渡してきた報告用の魔宝玉には『ヒロテロの邪神が別世界に召喚された』と文字が浮かび上がっていた。


「ヒロテロ? うーん。何か最近聞いた気がするんだけど……」

「三十年ほど前に邪神が復活したと担当の神が……」

「あぁ、思い出したよ」


 ヒロテロという世界は、数百年前に一度邪神によって滅びていると報告があった。それに、数十年前に邪神が復活したので、物資の支援などが神界会議の議案に上がった事がある。


「ヒロテロの担当って誰だっけ?」

「えっと……男神ステージュです」


 ステージュ?

 あぁ、神族になる前は、天才軍師と呼ばれた魔族のおじさんか。

 私と初めて会った時、「こんな子供に仕えられるか!」と怒鳴ってきたんだよね。まぁ、その後に教育的指導をしてやったら大人しくなったんだけどね。


「そのステージュは、この事態に何をしているの?」

「邪神の行方を追っているとは聞きましたが、その後の報告は受けていません。呼び出しますか?」

「うん、呼び出してくれるかな。取り返しのつかない事になる前に、本人から邪神の事を聞いてみたいからね」


 私がそう言うと、レナータは緊急連絡用の魔宝玉を取り出し、発動させる。そして「今すぐ神界に来てください」と一言だけ声をかけ魔法玉の使用をやめた。

 その五分後、疲れた顔をした四十代後半の痩せ型のおじさんが私の前にやってきた。彼がステージュだ。

 彼は、頭を下げ私に挨拶してくる。最初の反抗的な態度とは随分と違うね。


「お久しぶりでございます。サクラ様」

「うん。ステージュ、この間の神界会議以来だね。っと、今はそんな事よりも、ヒロテロで何か不味い事になっているみたいだね。いや、不味いと言っているけど、私は邪神の情報を知らないから、どれくらい不味いか分からないんだけどね」


 そもそも邪神と呼ばれているが、実はその邪神は神族とは何の関係もない。

 では、なぜ邪神と呼ばれているかだが、その世界で力を持ったモノが不老になり、神に匹敵するほどの力を持った結果、邪神と呼ばれるようになっただけだろう。

 行き過ぎた力は望もうが望まなかろうが崇拝されるモノだからね……。

 そもそも、世界を管理している神族を便宜上神と名乗らせているだけで、各世界で崇められている神族でない神々との明確な線引きは引かれていない。


「ヒロテロは邪神により一度滅ぼされていますが、滅ぼされたとなっていますが、実は私達は邪神を一種の天災と考えています。邪神は一度暴れると数百年は目覚めませんから……」

「ふーん。そう言えば、三十年くらい前の会議で邪神の被害がどうこう言っていたね。さっき数百年は目覚めないと言っていたけど、今回、邪神が目覚めるには少し早いんじゃない?」

「はい。今回は召喚という形で無理やり起こされたのでしょう。邪神は厄介な気質をしていまして、眠りを妨げられると怒り狂う事が多いのです。それでも何十年に一度は邪神を起こそうとする馬鹿が現れるので、私がそれを止めているのです。しかし、今回は別世界からの召喚なので事前に察知できず、召喚により目覚めてしまったというわけです」


 別世界から呼び出されたうえ眠りを妨げられた……と。

 という事は呼び出した世界も特定しなきゃいけないって事か……。


「召喚先の世界は見当がついているの?」

「いえ、まったく見当はついていません。個人的に各世界の神々と連絡を取り、邪神の召喚先を調べているところなのですが、どこの世界も邪神は現れていないとの返答が帰ってきています」


 うーん。

 対処法としてはそれが正しいんだけど……。嫌な予感しかしないね。


「しょうがない。召喚先の特定はレナータに任せるよ」

「え!?」


 私はレナータに頼み、邪神の召喚先を調べた。レナータは優秀なので五分もたたずに邪神の召喚先を突き止めた。

 そして、その召喚先は……。


「はぁ……。嫌な予感の正体はこれだったのか……」


 邪神が召喚されたのはレティシアちゃん達の世界だった。

 私はエレンちゃんに邪神の事を聞くために魔法玉を発動させる。魔法玉の先のエレンちゃんの声が震えていた。


「エレンちゃん? 何かあったの?」

『レティが自分を犠牲にして邪神を倒しました……』

「なっ!?」


 私はそれを聞いて驚くと同時に、レティシアちゃんの気配を探す。

 エレンちゃんの話では、レティシアちゃんは自身が作り出した空間に邪神を引きずり込み、その後その空間は消えてしまったらしい。

 今の話が本当ならば……あのレティシアちゃんが死んだ?


 いや、それは考えられない。


 レティシアちゃんは私のお気に入りだ。お気に入りの子達の気配はいつでも感じ取れる。

 弱い……でも、まだ生きている。


「レナータ、緊急事態だ。いつきちゃんに連絡して生命維持の魔宝具を借りて来ておいて。お金を要求されたら、今は緊急事態だと話を通して!」


 私は心底嫌そうな(いつきちゃんに頼み事をする為)顔をするレナータを無視して、急いでレティシアちゃんの気配を感じる場所まで転移した……。

次回完結です

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