表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
132/134

14話 タロウ達の処遇


 レティシアちゃんは、私を殴った事で少しスッキリしているみたいだ。それに反して、私は頬を摩りながら涙目になっている。レティシアちゃんの攻撃ならば、痛みまでは出ないかな? と思っていたのに……結構痛かった……。


「ところで、もう一つお聞きしたい事があるのですが」

「なに?」


 また殴られないように少し警戒して身構える。が、レティシアちゃんはそんな私を見て、呆れた顔をした。


「もう殴りませんよ。そんな事よりも、タロウの魂はどうなりましたか? 元の人格はどうでもいいとして、アブゾルに作り替えられたタロウであれば、生き返らせてやってもいいと思ったんですが」


 む?

 レティシアちゃんがタロウを心配するとは、これは意外だね。何か裏でもあるのかな?

 いや、疑うのは駄目だね。普段のレティシアちゃんの行動を見て疑心暗鬼になっていたみたいだよ。ここは、この子を信じよう。


「そうだね。タロウ達については、一度二人と話がしたいと思っていたんだよ。二人はタロウと深く関わっていたからね」


 タロウの魂には永遠の罰を受けさせているが、タロウの肉体をどうするかを二人と決めようと思ったのだ。

 とはいえ、二人がタロウを生き返らせたとしても、以前の顔のままとはいかない。


「生き返らせたとしても、タロウには今までとは違い全く別の生を歩んでもらう。それはタロウの仲間達も同じだよ。二人はどう思うの?」

「私は別に、生きていようが死んでいようがどうでもいいです」

「私も、私に関わらなければ……。あ! 聖女エレーナの顔は今の顔とは違う顔になるんですか?」


 エレンちゃんとしては自分と同じ顔の人間というのは複雑なのだろう。


「大丈夫だよ。エレーナには元の顔に戻ってもらう。エレンちゃんと同じ顔という事はないよ」


 元々、エレーナは自分の顔というモノを持っていた。それを無理やり変えられていたんだから、元に戻した方がいいだろう。


「そう言えば、レティシアちゃん達には、タロウの本当の人格……魂の処遇について教えていなかったね」


 私はタロウの魂を神界でも一番の地獄『永遠の罰』に落とした事を説明する。

 タロウもアブゾルにより無理やり人生を変えられたかもしれないが、彼の行ってきた事は決して許される事はない。そもそも、彼が原因で不幸になった者が多すぎる。

 目の前で深刻そうな顔をしているエレンちゃんも被害者の一人なのに、優しい心を持っているのか「タロウもアブゾルの被害者と言えば被害者なのに、少し可哀想だね」と言っていた。だからこそ、この世界の管理者を任せたんだけどね。

 しかし、レティシアちゃんは違う。


「そうですか? エレンに酷い事をした時点で惨たらしく死ぬという結果は変わりませんでしたよ。例え神様が同情心で許したとしても私は許しません。仮に私に殺される前に、元の世界に戻してやったとしても、私は逃がしません。元の世界まで追いかけて殺していました」

「あはは……」


 レティシアちゃんは簡単に元の世界まで追いかけると言っているけど、『次元転移』そんなに簡単じゃないよ……。私でも行き慣れたところじゃない限り、時間のラグが出てしまう。まだ十年そこそこしか生きていないレティシアちゃんにはまだ早い……と言いたいけど、レティシアちゃんならそのうち簡単に次元転移しそうだね。


「じゃあ、タロウ達を生き返らせるけど、もう一つ、レティシアちゃん達に容認して欲しい事があるんだ」

「「はい?」」

「剣姫ソレーヌの事だよ」


 調べてみて分かったのだけど、ソレーヌ以外の四人はアブゾルに操られていたとはいえ、人殺しを躊躇いなく行っていた。

 だけど、ソレーヌだけは誰一人殺してい(・・・・・・・)なかった(・・・・)


「そうなのですか? あの四人の中では、一番好戦的だったと思うのですが?」

「うーん。どうやら、無意識に急所を外していたみたいだね。実際に彼女だけは魂が綺麗なままだったんだよ」


 私は二人にソレーヌの処遇を説明する。


 アルジー、ジゼル、エレーナの三人は両親もおらず、所謂天涯孤独の身だ。だけど、ソレーヌには帰るところがある。

 だからこそ、彼女の記憶を一度消し、再生する事にした。これで、タロウと出会う前の彼女に戻るはずだ。それと並行して、彼女の祖国の人間にも同じ処置をした。国民全員に同じ処置をするとなると、大規模魔法になるわけだけど、だてに数千年生きていないからね。これくらいはどうとでもなる。そして、最後に、彼女の故郷以外の人間達から剣姫ソレーヌの記憶を消す。これで元の生活に戻れるはずだよ。

 これが一番大変だろうけど、一週間あればなんとかできるはずだよ。


 この計画を話すと二人は快く、いや、レティシアちゃんはどうでも良さそうに了承してくれた。


「さて、これで私の出番は終わりかな」

「え?」


 ここから先はどれだけ選択を間違えようとも、レティシアちゃんが世界を滅ぼすような真似はしない……。そうなった以上、もう不用意にレティシアちゃん達の前に現れる必要はない。


「じゃあ、レティシアちゃん、エレンちゃん。二人で仲良くこの世界を管理していってね。あ、二人じゃなくカチュアちゃんもだね」


 私がカチュアちゃんの名前を出すと、エレンちゃんが少し不機嫌になる。

 あはは……ライバル登場だね。


「じゃあ、私は帰るよ。今度会うのは神界での会議の時かな。会議は日程が決まった時点で連絡が入るから安心してね。じゃあね」


 私は二人と別れの挨拶をした後、神界に戻った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ