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13話 エレン出動


 私が神界に帰ってくると、エレンちゃんが魔宝板をジッと見ていた。


「動き出した?」

「はい。最初はレティが優勢でしたけど、アブゾルがオニに変身してからは、打撃が通用していないみたいです」


 レティシアちゃんの打撃が効いていない? そう言えば、オニの皮膚って……。


 魔宝板に映るアブゾルの肉体は茶色に見えるけど、アレはくすんだヒヒイロカネだ。ヒヒイロカネは打撃に強い。


「レティシアちゃんといえど、ヒヒイロカネを打撃で破壊するのは不可能だろうね……」


 あの子がエレンと名付けた神剣であれば、斬る事も可能だろうね。現に、脛の部分に傷がついている。

 傷があるという事は、再生能力はない様だね。


『自分を使えというのですか?』


 うん?

 レティシアちゃんの神剣が自動的にレティシアちゃんの掌に飛んで行った? あの神剣には特別な力はなかったと思ったのに……。

 私がふとエレンちゃんを見ると、エレンちゃんが神剣を操作していた。

 まぁ、よくここまで我慢したよ。


「エレンちゃん。行く?」

「い、良いんですか!?」


 今のレティシアちゃんじゃ、オニのアブゾルは倒せないかもしれないし、そろそろエレンちゃんもあの世界に戻してもいいと判断した。


「私がエレンちゃんをレティシアちゃんのところへと転移させるよ。できれば、アブゾルとの戦闘後にレティシアちゃんを説得してね」


 いや、私でも殴られるのは嫌だからね。


 私はエレンちゃんを送り出した後、アブゾルの魂を捕らえる為の準備をした。これは憶測だけど、アブゾルは魂で行動できる種族なのかもしれない。

 私は死界の王であるシェリルちゃんからの連絡を待つ。しかし、いくら待ってもシェリルちゃんからの連絡はない。


「おかしい。いくらなんでも遅すぎない?」


 エレンちゃんが加勢しに行ったのに、レティシアちゃんがアブゾルを倒せないとは思えない。

 私はシェリルちゃんにアブゾルの魂について聞いたのだが、死界の門を通過した神族はいないそうだ。

 いや、もしかしたらアブゾルは神族じゃないかもしれない。レティシアちゃんと戦っていたのはオニだ……。オニは魔物であって神族ではない。そう思って聞いてみたのだが、アブゾルの事をシェリルちゃんにも教えているため、見間違えることはないそうだ。


 まさか、あの二人がアブゾルを逃がした? 私は嫌な予感がする中、エレンちゃんに連絡を入れてみる。すると驚くべき結末を聞かされた。



 レティシアちゃんは非常識だとは思っていたけど、まさかアブゾルを捕らえるなんてね……。それも……。


 私の目の前には憔悴しきっている魂が入ったアブゾル像を呆れた顔で見ていた。


「拷問用の道具にされるなんてね……。哀れ以外の何事でもないね」


 私はとりあえずアブゾル神像を一度砕いてみる。するとアブゾルの神像はすぐに元の形に戻る。


「呆れた。絶対に死なないように再生能力を付与したの? しかも痛覚を十倍にまで引き上げられている……やる事がえげつないねぇ……」

「そうですか?」


 うん?

 この拷問部屋には特殊な結界を張っていたはずなんだけど、どういうわけかレティシアちゃんが私の後ろにいるねぇ……。


「いつからいたの?」

「サクラさんが入ってくる前からここに居ましたよ?」


 うそでしょ?

 私がレティシアちゃんの気配に気付けなかった? それとも……。いや、答えは最初から出ているか……。


「エレンちゃんに力を借りたね。エレンちゃんがレティシアちゃんの中に入って神気の使い方を教えた……いや、力の制御の仕方を学んだってところかな?」

「……サクラさん。いくつか質問に答えて欲しいのですが?」


 レティシアちゃんの声は怒気を含んでいる。

 さて、何について怒っているのか、心当たりがあり過ぎてどれがそうなのか分からないよ。


「アブゾルの事を知ったのが、つい最近というのは本当ですか?」

「うん。レティシアちゃんには言ってなかったかな? アブゾルは神界(私達)が送り込んだんじゃなくて、この世界を偶然見つけて勝手に管理していたんだ。エレンちゃんからそう聞いていない?」

「そうですか……。以前、サクラさんからも聞いた気がしますが、だから、自分には責任がないから殴らないで欲しいと……エレンを使って責任逃れしようとしましたね?」


 うーん。

 エレンちゃんはちゃんと仲裁に入ってくれたみたいだけど、これは逆効果だったかもしれないね……。


「あ、あはは。別にアブゾルを放置した事の責任から逃れられるとは思っていないよ。それに、アブゾルよりも優秀なエレンちゃんを女神としてこの世界の管理者にだね……」

「それはいいです。事情が事情ですし、エレンが言うにはいくつもの世界があるのでしたら、見落としていても仕方ありません」

「え? じゃあ……」

「でも、私が怒っているのはそこじゃないんですよ」

「え?」

「私が怒っているのは、エレンが生きている事を黙っていた事なんですよ?」


 あ、あぁー!?


「い、いや、それにはちゃんと理由があってね……っ!?」


 あ、あれ? う、動けない!? って、エレンちゃんが私を後ろから羽交い絞めにしている!?


「さて、責任がどうこう言うつもりはありませんが、一発殴らないと気が済みませんので、殴ります」

「ご、ごめんって!?」


 この後、私はレティシアちゃんに思いっきり頬を殴られた。

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