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11話 世界の管理


『どこかで見ているんでしょう。姿を見せてください』


 うん?

 この声はレティシアちゃん。

 あぁ、私が常に監視をしていると思っているんだね。まぁ、タロウが消えて、私を呼び出す。まぁ、レティシアちゃんなら、気付く(・・・)よね。


 レティシアちゃんは勘のいい子だからね。私が拷問部屋にいたのがバレると、色々と聞かれるだろうし、一度神界に戻ってレティシアちゃんの部屋に転移するかな。

 エラールセに頻繁に転移していたから、十秒くらいのラグで転移できるだろうからね。


 一度神界に戻り、レティシアちゃんの部屋へと転移すると、私の分のお茶が用意してあった。


「やぁ、久しぶりだね、レティシアちゃん。さて、聞きたい事は何かな?」


 私を呼び出すくらいだ。聞きたい事は見当がついているけど、一応聞いておく。そして、レティシアちゃんの聞きたい事はやはりアブゾルの生存に関する事だった。


 レティシアちゃんには生きている事は伝えるけど、アブゾルの正体に関しては黙っておこう。レティシアちゃんの性格だったら、孤児院の子供を皆殺しにしようとか言いかねない。実行はしないだろうけど、万が一そうなったら、私が止めるしかなくなる。

 それに、アブゾルはきっと自分から姿を現す。


『ウジ虫を殺したのはアレですか?』


 そう聞かれて気が付いた。レティシアちゃんにはタロウが殺されているように見えたのだろう。

 まぁ、自分の張った結界内で煤のようなものがあったとなると焼き尽くされたと考えてもおかしくはない。

 だけど、タロウの魂が死界の門を通過した形跡がない以上、アブゾルに連れ去られたと考えてもいいだろうね。

 でも、無用な混乱をさせたくないから、ここは話を合わせておこう。



 レティシアちゃんと話を終えて神界に帰って来て、私は溜息を吐く。

 まさか、レティシアちゃんから責任問題について言われると思わなかった。

 これは予想外だ。

 レティシアちゃんなら適当な理由をつけておけば、細かい事を考えずに動くと思ったんだけど……。


「流石に知らなかったは通用しないだろうね。一発くらいは殴られる覚悟はしておいた方がいいかな……。それに、管理者も用意しておかないと……」


 あの世界の管理者はレティシアちゃんにお任せしたいけど、おそらく首を縦に振ってくれる事はないだろう。となると、エレンちゃんしかいないよね。



 あの世界の管理者をエレンちゃんに任せる為に、世界の管理について教える事にした。

 きっとエレンちゃんが管理者になれば、レティシアちゃんも協力するだろうと打算もある。


「サクラ様。世界の管理と言うのは、具体的に何をするのでしょうか?」

「うん。まずはそこから話をしていこうか」


 世界の管理。

 言葉そのものは大層なモノだが、実際はそれほど難しくもない。

 そもそも、管理者は神として姿を現す事は滅多にない。だから、別に管理者である神が何をしていようと何も問題はない。

 現に、タロウがもともと住んでいた『アース』という世界にも管理者としての神がいるが、彼女はとある国の研究員として日々研究に明け暮れている。


「つまり、基本は好きに生きていて良いと言う事ですか?」

「そうだね。強いて言うなら、神の役割は年に一度、神界で行われる会議に出席してもらい、一年でどんな出来事があったかを報告するくらいだよ。もし、何か手に負えない問題などあったとしても、私達神界にいる神族や、各世界の神達と相談をして、解決に導く助言をするくらいだよ」


 とまぁ、世界の管理といっても過干渉するわけにもいかないので、この程度しか出来ないだろう。


「でも、私が管理者になれば、レティやネリー様の国の事を優先してしまいますよ?」


 そうなれば過干渉になるかもしれないけど……。


「問題ないよ。神の力を使って残虐な行動をしない限りは、それでも構わないよ」

「残虐な?」

「レティシアちゃんは自分が邪魔だと思ったモノはすべて滅ぼしても構わないと思っているでしょう? 理不尽な大量虐殺をエレンちゃんが容認するならば、私や上位の神が出る事になる。でも、エレンちゃんならそんな事をしようとしても止めるでしょう?」

「そうですね。でも、相手が相手なら、私もレティに協力してしまいますよ」


 うーん。

 まぁ、私も元人間だから、エレンちゃんの気持ちは分かるし、エレンちゃん自身もあの世界で酷い目に遭っているから、その感情を止める事は出来ない。


「まぁ、そんな事があるのなら、まずは一言、エレンちゃんは私の直属になるから、私に相談してね。そうならない方法も何か策があれば、協力だってするし、場合によっては大量殺戮を許可する事だってあり得るんだからね」


 相手が非人道的な集団だったり、その世界にとって害にしかならないのであれば、過干渉も是とするだけだよ。

 ぶっちゃけた話、話し合いだけで解決できると言っていいのは、他の物を寄せ付けない、レティシアちゃんの様な圧倒的な力を持った強者だけだよ。


 私とエレンちゃんが話をしていると、私の代わりにあの世界を監視してもらっていた神が部屋に慌てて入ってくる。


「どうしたの?」

「サクラ様!! 監視していた世界に勇者が発生しました!!」

「はぁ?」


 アブゾルは、また懲りもせずに勇者を召喚したの? 馬鹿じゃないの……。


「とはいえ、勇者が召喚されたからと言って、今更、レティシアちゃんの敵になる事はないでしょう? 何を慌てているの?」


 神は私に魔宝板を渡してきた。そこには五人の男女が映っていた。


 ん?


「これはタロウ? 現れた勇者ってタロウなの?」


 魔宝板に移された唯一の男。どこからどう見てもタロウだった。だけど、タロウからは以前の様な邪な気配を感じない。


「いや、これ本当にタロウ? 顔は一緒だけど別人に見えるんだけど……」


 私はエレンちゃんにタロウの顔を見てもらおうとした。でも、エレンちゃんは一人の少女の顔をジッと見ている……。


 あ……。


 エレンちゃんが凝視していたのは、新しく用意された聖女……、名はエレーナとなっている、エレンちゃんそっくりの少女だった……。

 

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