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6話 観戦


 自分の剣にエレンちゃんの名前を付けたレティシアちゃん。それを見てエレンちゃんは膨れっ面で魔宝板から目を逸らしている。

 うーん。

 これは……。


「レナータ。エレンちゃんのご機嫌取りは任せたよ」

「えぇ!?」


 今回ばかりは戦闘が終わった時点でレティシアちゃんに接触しなきゃいけないから、この戦いから目を離すわけにはいかない。だから、レナータに丸投げしておく。

 

 まぁ、目を離すわけにはいかないと言っても、アブゾルにどんな奥の手があったとしても、レティシアちゃんに勝てるわけがないんだけどね。

 その事が分からない時点で、アブゾルには神の資格はないよ。

 さっさと諦めればいいのに、今もアブゾルはレティシアちゃんに勝てるつもりでいるみたいだね。馬鹿な奴だよ。


 しかし、本当に驚くべきはレティシアちゃんの剣だ。あのエレンと名付けられた剣。信じられないけど、とても人間(・・)が作り出したとは思えない。

 あの剣の種類をいうのなら、聖剣ではなく神剣だ。


 まったく……。

 どうやって神剣を作り出したのかは分からないけど、そんな事が出来るのなら、エレンちゃんと共に神族になって、アブゾルの代わりにこの世界を管理して欲しいモノだね。


『そもそも、貴方がこの世界を管理(・・)しているのならば、こうやって直接対峙しなくとも、私を消す事は可能でしょう?』


 ん?

 今レティシアちゃんは何て言った? 少し戻して確認してみよう……。


『貴方がこの世界を管理(・・)しているのならば……』


 聞き違いじゃなかったみたいだね。

 私はレティシアちゃんとはまだ接触していないし、アブゾル以外にこの世界の事を知っている神族は、私とレナータ。それに月の女神であるあの子だけのはずだ。

 まさか、私の知らないところで別の神が接触した?

 いや、その気配はないね。

 それなら一体どうして『管理』なんて言葉が出てきたんだろう?

 仕方ない。私ではレティシアちゃんの事は詳しく分からないから、彼女をよく知る人物に聞いてみよう。


「エレンちゃん、ちょっと来て」

「なんですか?」

「レティシアちゃんが世界の管理について知っていたんだけど、なぜそんな事をレティシアちゃんが知っているんだい?」

「え? いや、それは知りませんけど……。あ、少し待ってくださいね」


 エレンちゃんは魔宝板越しにレティシアちゃんの顔をジッと見る。そして……。


「多分ですけど、神族が世界を管理しているというのを知っているんじゃなくて、アブゾル様を挑発しようとしただけだと思いますよ。おそらく……適当? いや、本能といった方がいいのかな? レティは、何も考えずに核心的な事を言う事がありますから」


 なるほど……。

 エレンちゃんの言った事が正しいのか、レティシアちゃんはアブゾルの驚き様に首を少し傾げていた。


 逆上したアブゾルは、破れかぶれにレティシアちゃんに攻撃を繰り出している。

 しかし、アブゾルはレティシアちゃんが手加減している事すら気付いていないんだろうね。

 しばらくレティシアちゃんの一方的な攻撃が続いていたのだが、突然レティシアちゃんの手が止まる。


『あ、たまには苦しめずに一撃(・・)で殺せそうなほどの攻撃もするかもしれませんが、不老不死(・・・・)なのですから安心ですね。心を強く持てば心は死にません。頑張ってくださいね』


 あぁ、アブゾルは不老であって不死では無い事に気付いたみたいだね。

 それにあの言葉。アブゾルは気付いていないのかな?


 レティシアちゃんは、いつでもアブゾルを殺せるという自信があるという事なんだけどなぁ……。


 私が呆れて魔宝板を見ていると、エレンちゃんが首を傾げて質問してきた。


「あ、あの……。レティが言った事って、どういう意味ですか? 神様は死なない存在なんじゃないんですか?」

「あぁ、エレンちゃんは不老と不死については何も知らないんだったね。簡単な話で、不老になったとしても不死にはならない。不老は一定の領域を越えたら自然に身につける事が出来るんだけど、不死は違う。不死の場合は文字通り死なないけど、体は老化して、そして体が活動停止(・・・・)した後、体が腐敗して骨になり、風化して完全に跡形もなくなるんだ。だけど、魂は意識を保ったままその場に永遠に縛られる……。正直な話、最悪でしかない」

「じゃあ、アブゾル様は不死ではないと?」

「あぁ、今レティシアちゃんが言っていた通り、一撃で殺してしまえばアブゾルを殺す事が出来る」


 私としてはそれを望んでいるんだけど、果たしてレティシアちゃんが望み通りやってくれるかどうかだね。


『ふざけるな!! 神であっても死ぬときは死ぬんだ!! ……はっ!?』


 アブゾルの言葉に私はさらに呆れてしまう。


 はぁ……。自ら弱点を暴露するなんて、本当に馬鹿な男だ……。まぁ、レティシアちゃんは分かっていたから、わざわざそんな事を言ったんだろうけど……。


 ……さてと。


「レナータ。エレンちゃんをよろしくね」

「サクラ様はどこに行くのですか?」

「そろそろ決着がつきそうだから、レティシアちゃんに会って来るよ」

「え!? そ、それなら私も!!」


 エレンちゃんが必死に私に懇願してくる。

 だけど、連れて行ってあげたいけど、今は時期じゃない。それに、今のエレンちゃんではあの世界の魔力に神体が耐えられない。あの世界に行き来するにはもう少し時間が必要だろうね。


「レナータ。エレンちゃんに説明しておいてね」

「あ!? サクラ様、説明と説得が面倒だからって私に押し付けないでくださいよ!!」


 私は苦笑しながら次元転移の魔法陣に乗った。

 

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