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親友が酷い目に遭わされたので全てに復讐しました。  作者: ふるか162号
番外編 私とレティ様

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1話 私とレティ様

カチュア編 スタートです。

3月28日 少し書き直しました。二話・三話も書き直してから四話を更新するつもりです。

修正内容はあとがきに書いておきます。


 私の名前は、カチュア=フォルロンタ。

 フォルロンタ家は、前王である『プドル=レド=ファビエ』にゴマを擦って栄えた、愚かな貴族でした。

 私はその家の三女として十九年前に生を受けました。


 しかし、上に二人の姉がいた事もあり、私は両親から、無視されて生きてきました。

 そのせいか、私はとても不愛想でした。

 前王にゴマを擦るのに忙しい父や、姉二人を権力者に嫁がせる事だけを考えていた母は、笑いもせず可愛くもない私なんていらなかったのでしょう。

 そのおかげか、姉二人みたいに母の操り人形になる事も無く、自分の意思を持って育つ事が出来ました。ただ、姉二人は両親の愛を受け、私は誰にも相手にされなかった事を考えれば、どちらが不幸かは分かりませんでしたが。


 十三歳の時、父に呼び出されました。今更何の用だ? とも思ったのですが、父の顔を見に行くのもたまにはいいかと思い、素直に父の前に行きました。そうでもしないと、顔を忘れそうでしたから。


 父は、姉二人を権力者に嫁がせて、財政的に潤った事で、次は前王とのコネを欲しがりました。

 しかし、ゴマをする貴族が多すぎて、顔を覚えて貰えない。

 そこで、いてもいなくてもどうでも良い私を、第一王女であるネリー様に仕えさせる事で、王の気を引こうと考えました。


 ネリー様の噂は、以前から聞いていました。

 性格は愚王の娘らしく我が儘で、自分の気に入らない侍女を、家ごと潰していると噂には聞いていました。


 その話を聞いて私は少しだけ困惑しました。

 もし、私が粗相してしまえば、フォルロンタ家が取り潰しになりかねないのに、この男は何を考えているのでしょう。そこまでして、コネというモノが欲しいのですかね。

 しかし、私としては、この腐った家が潰れようと、どうでもよかったので、黙って従う事に決めました。



 城で出会ったネリー様は、聞いていた噂とは全く違う性格の女性でした。

 侍女を大切にし、我が儘は一切言わず、ドレスの着替えすら自分でやってしまう人でした。


「出来る事は自分でする」


 いつも、ネリー様が口癖のように言っていた言葉の一つです。

 その他にネリー様は、薄汚い貴族から、年端も行かない侍女を守り続けてくださいました。こんな素晴らしい方がなぜあんな噂を流されたのでしょうか?

 いえ、逆に考えれば、今まで潰されてきた侍女は何をしたのでしょうか?


 それを他の侍女に聞いてみたところ、どうやら今まで潰されてきた侍女達は、私と同じで王族や有力貴族に取り入る為に送り込まれたそうです。だからか、ネリー様のお世話も適当にしていたそうです。

 とはいえ、そんな役に立たない侍女でも、自分で何でも出来るネリー様には関係ありませんでした。


 しかし、どんな理由であれ自分のお仕事をまともにできない人が、何故優遇されると思うんですかね。私はそこが理解できません。

 しかし、そんな事で優遇されてしまう。この国はそんな状態だったのです。


 ネリー様は「今の王族は腐っている、そして、その血を持つ私も腐っている」といつも言っていました。

 しかし、彼女も黙って見ていたわけではありません。

 民が平和に暮らせるようにと、この状況を打破しようと足搔いていましたが、一人ではどうしようもなかったみたいですが、好意を寄せているレッグ様に相談し、更に他の冒険者達に協力を仰ぎ、クーデターを起こす事を決めました。

 この時点では、国が亡びる事も覚悟していたそうです。

 国が亡びるという事は、王族であるネリー様も死んでしまうという事……。

 ネリー様は、私や侍女達に逃げるように言っていたのですが、私達はネリー様について行く事にしました。

 そして、念入りに計画を立てていた時に、あの男が召喚されてしまいました。


 彼は稀にみる下衆で、城の侍女だけで飽き足らず、町の女性にも手を出していました。

 しかし、タロウが手を出せていた侍女は、ネリー様の世話を放棄している侍女だけでした。

 タロウはネリー様に囲われている侍女にも目をつけ、あろう事か私達にも手を出そうとしてきました。

 そこでネリー様は自分を矢面に立たせ、襲って来た所をレッグさんに阻止してもらい、私達に手を出せ無くしました。

 しかし、タロウは隠れて、私に言い寄ってきました。

 私はタロウの事が嫌いです。顔を見るだけで嫌悪感を持ちます。だから、襲われそうになった時に股間を蹴って逃げました。

 私の貞操は無事でしたが、勇者を蹴ったのです。処刑されても仕方ないと思っていましたが、それもネリー様が守ってくれました。


 勇者タロウが現れた事で、クーデターの計画がかなり狂い始めました。

 このまま、クーデターを起こすタイミングを失いかねないと思い始めた時に、レティ様が現れました。


 初めてレティ様のお姿を目にした時から、私はレティ様に惹かれていました。

 見た目は幼い少女なのですが、目に力を宿し、何事にも動じない。そして、自分に必要のないモノは滅んでも構わないという覚悟。すべてに惹かれました。


 レティ様が来てから、一気にこの国は変わりました。

 たった一人で、前王政を終わらせ、勇者一行を破壊して、この国は救われました(・・・・・・)


 その後、諸悪の根源であるアブゾルを倒したレティ様は、この国に留まる事を決めました。私はすぐに、レティ様の侍女をしたいとネリー様に頼み込みました。

 ネリー様は「レティは誰よりも強いけど、誰よりも心が幼いの。だから、守ってあげてね」と笑顔で了承してくださいました。

 嬉しかったのと同時に、この短期間で、そこまでレティ様の事を理解しているネリー様に凄いと思わされました。


 そんなネリー様でも勝てないのが、聖女であったエレン様。

 実は、私もエレン様には会った事があります。彼女が人間だった頃、最期を看取ったのは私とネリー様でした。

 私が見たエレン様は、すでに心が壊れていました。「レティ、ごめんね」という言葉を死ぬ寸前まで繰り返していました。心が壊れて尚、まだ想い続ける事の出来る、そんな姿を見ていたからこそ、レティ様に興味を持ち、惹かれてしまったのかもしれません。


 レティ様の侍女になってから、レティ様の心の支えになるように、私はレティ様の傍にずっといました。そして二回目のアブゾルとの戦いの後、エレン様がレティ様と共に帰ってきました。


 ネリー様は嬉しそうでしたが、私は複雑でした。レティ様がとられてしまう。そんな事を考えていました。

 でも、エレン様は「レティは貴女といると、とても楽しそうにしているわ。あの子は、戦闘応力は極端に高いけど、心は幼い子供のままなの。だから、ずっと傍にいてあげてね」と言われて、やっぱりこの御方には勝てないと思ってしまいました。


 レティ様と過ごす日々は、私にとっては生まれて初めて感じる幸せでした。

 こんな幸せがずっと続けばと思っていました。


 鬱陶しい邪教徒を潰すだけだった筈なのに、何故か異世界の勇者との戦いが始まり……そして、エレン様が手助けに行き、戻ってきたのは、エレン様一人でした。


『レティは、もう帰ってこない……』


 エレン様は、憔悴しきった顔で、ネリー様と私にそう告げました。


 エレン様の話では、戦っていたのは異世界の勇者ではなく、異世界の邪神だったそうです。

 邪神の力は凄まじく、エレン様と合体した状態のレティ様でも苦戦する程で、最悪な事に、邪神との戦いの影響で世界が滅びかねない状況だったそうです。

 先程までの地震は、そういう事だったんですね。


 レティ様は、世界を壊すわけにはいかないと、自身の空間魔法内に邪神を引きずり込んだそうです。そして、その時にエレン様を強制的に追い出したと。

 ならば、その異空間からレティ様を助ければ……、と思ったのですが、エレン様は無言で首を横に振ります。


『もう、助けられない。いえ、その空間は、もう(・・)存在しないの……』


 ど、どういう事ですか?

 今、レティ様は自身の空間魔法内に入ったと……。


 エレン様は、二回目のアブゾル戦の時に、レティ様と合体したらしく、レティ様の存在というモノがどこにいても感じる事が出来る様になっていたそうです。

 でも、今は何も感じなくなってしまった……と。

 つまりは……。


 レティ様が死んでしまった(・・・・・・・)。そして、術者であるレティ様がいなくなってしまった事で、邪神の魂ごと、この世界から消えてしまった……と。

 だから、魂すら助け出す事が出来なくなってしまった……と、エレン様はその場で静かに泣いていました。


 その話を聞いた全員が言葉を失いました。

 泣く者もいれば、放心する者、様々でした……。

 しかし、私はその話を信じられません……。


 レティ様は帰ってくる。


 気が付けば、私はレティ様の部屋に一人でいました。


「レティ様が死んだなんて嘘です。レティ様は、絶対帰ってくる……」


 その言葉だけを繰り返して、レティ様がいつ帰ってきてもいい様に、レティ様の部屋を綺麗にし、そして出来る限りいつも通りの生活をしようとしていました。


 ネリー様とエレン様は、強い方々です。レティ様が帰ってこない間も「レティが守った世界だから」と前を向いていました。私も見習わなければ……。そう思っていましたが、一月ほど経った後、ネリー様に呼び出されました。


「何か?」

「カチュア、貴女にこんな事を言うのは心苦しいのだけど……」


 ネリー様が何を言おうとしているのかを察知できました。だけど、それを聞きたくない私はネリー様の前から逃げました。そして、レティ様の部屋に逃げ込み、レティ様がもう帰ってこない事を、私は……。


 涙が止まりませんでした。


 嫌だ。嫌だ。嫌だ。

 レティ様は……レティ様は……。


 私は一人で泣き続けました。


 どれだけ時間が経ったでしょうか。


 エレン様とネリー様は、レティ様の守った世界と守る為に前を向きました。

 だけど、私にとってはレティ様が全てでした。レティ様のいない世界なんて……。


 こんな世界に、もう興味は無い。


「今は夜中……出ていくなら今しかない。このお城にいるのは……辛い。レティ様がいないこの世界にいるのも……もう嫌だ」


 私は、何も持たずにファビエ城を出ます。


 これから死ぬ私に何も持っていく必要なんてないとおもっていましたから。

 ただ、レティ様との思い出だけ持っていればいい……。

修正内容

カチュアが父親に呼び出された年齢を十五歳から十三歳に修正。

一人称をいつもの口調に戻す。直す前のだと、違和感が凄すぎて書きにくかったので。

その他、結構書き直したので多数。

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