6話 何故私が謝らなければいけないのですかね?
いつも誤字報告ありがとうございます。
ご飯屋さんに有益な話を聞いた私は、お城で情報収集をするためにエスペランサ城へと戻るつもりでした、が、帰り道で真っ黒のローブを着た怪しすぎる人達を見つけたので後をつけることにしました。
怪しい人達は、町の人の怪訝な目を気にせずに大通りを歩いています。町の人もかかわってはいけないものと認識しているのでしょう。
怪しさ大爆発なので、魔力を探ってみたのですが、エスペランサに魔族が多いのが原因で、上手く探れません。
まぁ、気配を殺して後をつけることにしましょう。
マジックとの約束がなければ、即殺しにかかるんですがね……。
怪しい人達は、路地裏へと入っていきます。
報告書にあった邪教のアジトと場所は近いですね。これは当たりでしょうか?
「ぎゃあああ!!」
悲鳴ですか? 何かがあったのですかね、行ってみましょう。
悲鳴を聞きつけ路地裏に入ると、怪しい人達が一人の人間の男性を殺そうとしてます。
あの格好……。商人と思われますが、何故襲われているのでしょう。
「た、助けてください!!」
商人の男性が私に近付きます。まぁ、助ける義理はありませんが、見殺しにしてエレンに怒られるのは嫌ですし、助けておきましょう。
怪しい人達は、私を睨みますが、そのうちの一人が驚いています。あぁ、こいつは魔族ですね。
邪教と言っても、殆どの邪教徒が私の顔を知りません。
ファビエにいた邪教徒でも私を偽物扱いしたくらいですから。
それに比べて魔族は別です。彼等は、私を完全に知っています。なぜなら一度殺されていますからね。
「じゃ、邪神レティシア……様」
『様』を付けるのを嫌がっている様ですね。まぁ、魔族ですから仕方ないかもしれませんが。
予想ですけど、この魔族は本心で邪教に入信したのではなさそうですね。邪教を利用して私を貶めようとでもしたのですかね。
まぁ、どうでも良いんですけど。
「貴方は私を知っている様ですけど、誰の許可でこんなことをしているのですか?」
邪教ですから邪神の許可というのでしょうけど、邪神は許可した覚えがありません。
彼等がこのことをどう弁解するのか見ものです。
「さぁ、答えてください。もし、私の言葉を欲するというのなら命令します。今すぐ自害なさい」
まぁ、私を利用しようとしているのなら少なくともこの魔族は自害は出来ないでしょう。
偽物とでも言ってきますかね? 彼が自害を避けるにはそれしかありません。
「黙れ……貴様が本物のレティシア様と誰が決めた」
誰が決めた……ですか。
私が私である理由など何故他人に決められなければいけないのでしょう。
かなりムカつきますねぇ……。
久しぶりに殺気でも開放してみましょうか。
「うぐぅ!!?」「「「ひぃいいいいいい!!」」」
流石は腐っても魔族ですね。
私の殺気を受けても気絶しないなんて……。
でも、これで終わりじゃありませんよ? 貴方を見せしめに殺します。
「で、この状態という訳か……」
殺気により町の住民にも影響が出たらしく、マジックが慌ててやってきました。
マジックは魔族の成れの果てを見て絶句します。
魔族は、巨大な十字架に磔にされ無数の剣が刺さっている状態で、殺されていました。
魔族以外の邪教徒は無傷ですよ。マジックに殺すなと言われましたから……。
「お前、殺してもいいとは言ったが、殺し方をもう少し考えるつもりは無かったのか?」
殺し方は考えましたよ。
見た目にインパクトがあり、尚残酷に見えるように、そして邪神を怒らせたらどうなるかを馬鹿でも理解できるように。
生かしておいた方々は、エスペランサの牢に捕らえるとのことです。
罪状は、商人に対する殺人未遂なのですが、それだと弱い気がするのですが? と聞くとマジックは笑いながら「邪神に手を出して、世界を混乱させたとでも言えばいいさ」と言っていました。
元々邪神というのは、アブゾル教の神官が言い出したことですから、私は本物の邪神ではないのですけどね……。
邪教徒を捕らえた次の日、私はクランヌさんやブレインと話をすることにしました。
「とりあえず、私は関係ないのですが、邪教徒がエスペランサで好き勝手やっていることは謝罪します」
棒読みですが、一応邪神とレッテルを貼られているので、謝っておきます。
当然と言えば当然ですが、反省などしていませんよ。というか、どうして私が謝らなくてはいけないのでしょうね。
「全く心がこもってない謝罪をどうもありがとう」
ブレインが半笑いで返してきます。
クランヌさんは昨日の邪教徒のことを聞いてきます。
魔族の信者は私を崇めるわけではなく、利用することが目的だと思われるという話をします。
これは推測なのですが、クランヌさんが魔王でなくなり、私がブレインをこの世界から消しました。その結果、好戦的な魔族はむやみに人間を襲うことは出来なくなりました。
そこで現れたのが邪教です。
邪教は私の名の下に、異教徒を殺し、アブゾル教を殺し、そして邪神を崇拝しない人を殺すことをします。
人間を殺すことに至福を感じている魔族がいるとすれば、これ程利用できる組織はないでしょう。
「どのみち、魔族についてはそんな下らないことに手を貸す時点で救いようはない。今まで通り好きにしてもらって構わないが、人間や亜人についてはマジックが説明したとおりにやってくれ」
「分かりました。あ、そうです」
クランヌさんにファビエの地下で見たものを説明します。
誰かに操られている可能性のある魔物がいたことを……。
これを話すと、クランヌさんの顔が険しくなります。
「そんなことが本当に可能なのか? 改造されている魔物ならともかく……」
改造ですか、それは考えていませんでしたね。
もしかしたら邪教というのは想像以上に厄介かもしれませんね。
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