禁忌
[禁忌]
これは誰も知らない物語。
この少年に名はない。生まれついたときから、呪われた子、忌みの子として存在そのものが「禁忌」とされてきた。
この村には伝説がある。眼が紅い者は、天災を起こす。そして「禁忌」は生まれた。物心つく前は誰も知らなかった。でも物心ついたとき、村の人は気づいた。
彼が「禁忌」ということに。
そこからは檻の日々。飯は無し、日々の暴力、体中に傷、アザだらけ。そんな日々が一ヶ月続いた。つまり、一ヶ月たっても死ななかった。紅眼の力で。村のも者は何をやっても死なないことに気づいた。少年は洞窟の奥深くに閉じ込められた。
少年は思った。
「悲しいことは何も無い。なぐられても、けられても、かみを千切られても、体に傷を入れられても、飯がなくても。何も痛くない、辛くない。でも外にいる子は何故だろ、なんで笑ってるの、なんで泣いてるの、なんで怒ってるの。」
少年は欲しいと願った、
「感情」を。
でも、望んでも何もなかった。ただ暗い日々が過ぎるだけ。
少女は思った
「なんで僕は死なないの。感情はない、夢はない、欲しいものは手に入らない。」
そう考える日が続いていった。だがある日、一筋の光が差し込んだ。紅色の眼の少女が、そこにたっていた。そして少女は、
「今まで寂しかったよね。死にたいって、何度も思ったよね。でもそんな日々はもう終わり。一緒に逃げよう。」
そう言って少女は僕の手を引っ張っていく。少年は初めて感情というものがわかった。
「これが嬉しいってことなんだ。」
二人は走り続けた。もちろん村では異変に気付き探し回ってた。「禁忌」の双子を。
二人は遊びまわった。そして。捕まった。
少年は少女がなぐられるのを見てるしかできなかった。
少年には力がない。
「なんでこんなことになるんだ、なんで僕達が生きていたらダメなんだ。」
少年は強く望んだ、
「こんな世界、僕と君以外、皆いなくなればいいのにな。」
世界は紅と黒に染まった。人は誰もいない。
これが
「禁忌」
の力。
そして、本当の
「天災」
が起こった。