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第97話 フィーの相談

20180916 更新しました。

          ※




 少しして、ルティスが戻ってきた。


「全く……着替えくらいは済ませてあると思っていたが……」


 言って彼女は苦笑する。

 続けて部屋に入ってきたアンとリリー、オルドは、なぜかフラフラだ。


「徹夜で訓練は流石のオレ様も疲れたぞ……」


「アンも……限界……」


「お風呂に入りたいですけど……リリーももう無理です……」


 そして三人はバタン……とベッドに倒れた。

 最上級魔族の中でもトップクラスのアンたちが、これほど疲弊しているのだから余程ハードな訓練だったに違いない。


「あの程度の訓練で情けない。

 これではまだまだ、誰にも魔王の座を譲ることは出来そうにないな」


「ルティス、訓練中に大陸を消し飛ばしたりしていないだろうな?」


「笑わせるでない。

 わらわを誰だと思っている」


 万が一にも自分がそんな失敗をしない。

 と、ルティスの表情は語っていた。

 実際、力の制御に関しては俺よりも遥かに上だろう。


「愚門だったな」


 俺が言うと、ルティスはニヤッ微笑んで見せた。


 コンコンコン――。


「――フィリス様、エクス様……お食事の準備が整いました」


 ノックの後、扉の外からニアの声が聞こえた。


「ふむ……食事の時間か。

 では行くとしよう」


 どうやら彼女も一緒に食事をする気満々らしい。




       ※




 食堂に着くなり、ルティスは食事を始めていた。

 魔法で気配を消している為、彼女に気付く者は俺を除きいない。

 問題は、ホテルの従業員が料理の減りが早いことを驚くくらいだろう。


「フィリス様、エクスさん」


 食堂に入って直ぐ、セレスティアに名前を呼ばれた。

 ガウルも一緒だ……が、あいつは困惑するような表情を浮かべている。

 俺たちは二人の下へ足を運ぶ。


「お二人とも、御婚約おめでとうございます」


「ありがとう、セレスティア。

 突然のことでびっくりさせたよね」


「突然の婚約発表でしたから、驚かなかったと言えば嘘になりますけど……近いうちにこうなるだろうなぁとは思っていましたから」


 セレスティアの発言に、なぜか周囲の生徒たちまで頷いた。


「ところで、キミの騎士くんはなんだか様子がおかしいね?」


 フィーもガウルの様子がおかしいと思ったのか、疑問を口にした。


「……」


 俺とフィーがを向けると、ガウルは目を背ける。


「ガウルはエクスくんとどう接すればいいか悩んでいるんですわ」


 口を閉ざすガウルに変わり、セレスティが答えた。


「どういうことだ?」


「ほら、エクスくんがフィリス様とご婚約されたということは、皇族になるということになるでしょ?」


「そう……だな」


 理解はしていたが、誰かにそれを口にされるとまだ違和感を覚えた。


「ガウル……今後はエクスくんのことを、エクス様とお呼びしなければなりませんね」


「うぐ……」


 表情を歪めるガウル。

 仮に俺が皇族になったとしても、忠誠を誓うような真似はしたくないのかもしれない。

「別に今まで通りでいいぞ。

 婚約はしたが、正式に婚儀を上げるのは学園を卒業してからだしな」


「ぐっ……ま、まぁ、貴様がどうしてもそうして欲しいと言うなら……」


「ああ、そうしてくれ。

 お前は俺の友達だからな。

 変に改まる必要はないさ」


「と、友だと……ま、まぁ、確かに僕はキミを友だと感じたこともあるが……ふ、ふんっ。まぁ、いいさ」


 ガウルは不満そうに顔を逸らした。

 だが、いつもの調子を取り戻したようにも見える。


「エクスく~ん! 取材させてもらってもいいかな!?」


 続いてミーナが、ドタバタと駆け寄ってきた。


「陛下にはいつフィリス様との関係を認めてもらったの!?

 近日、国民に向けて婚約発表を行うって話だけど具体的な日取りは?」


 朝食を取りに来たはずが、暫くは慌ただしい時間が続くのだった。




           ※




「あ~……朝食を取りに行っただけなのに、なんだか疲れちゃったね」


 流石にフィーも質問ぜめで疲れたらしい。

 なので今から部屋に戻って今日はのんびりと過ごそうと思っていたら、


「部屋の中ならゆっくり――」


「「「zzz~」」」」


 まだオルドたちはぐっすり眠っていた。

 それなりに広い部屋なので、寛ぐことはできるが……。


「ボクたちが話していたらみんなを起こしちゃうかもしれないよね」


「そうだな……」


 どうしたものか……と、考えていると、


「なら、お主らデートでもしてくるがいい。

 此奴こやつらのことはわらわが見ておいてやろう」


 ルティスからそんな提案があった。

 二人きりのデートというのは確かに魅力的だ。

 もう数日……国民に向けた婚約発表を終えた後、俺たちも学園に戻ることになるのだから、今のうちに城下町を二人で見て回るのも楽しそうだ。

 勿論、大騒ぎになることを避ける為、お忍びで……という形になるけれど。


「フィー、どうする?」


「ボクはエクスが構わないなら是非。

 それに……少し二人で話したいこともあったから」


「そうか。

 なら、早速行くか」


「うん!」


 そして、俺は気配消しの魔法を使ってからホテルを出たのだった。




          ※




 特に予定も立てずに城下町を見て歩く。


「お前らあの噂を聞いたか?」


「なんだよ?」


「おれもさっき聞いたばかりなんだが、フィリス様が御婚約されるらしいぞ?」


「え!? 確かにとても仲睦まじいお二人と聞いてはいたけど……本当なの!?」


 既にそんな噂が出回っていることに驚いた。

 昨夜、パーティに参加していた者の誰かが話を漏らしたのだろう。

 勿論、口外禁止ではないし近日発表になることなので問題はないと思うが……噂というのはあっという間に広がるものだ。


「もう知られちゃってるんだね……」


 飛び交っている会話を聞き、フィーは苦笑していた。


「でも、みんなが不安そうにしているよりはずっといいよね」


 先日の反乱クーデターが民の心に強い不安が残したのではないか? と、フィーは心配していたようだ

 が、町を見渡せば皆の笑顔が見えた。

 それから2時間ほど町の中を見て回った後、


「ねぇ、エクス。

 少し静かな場所に移動しない?

 この間の陛下の願いについて……相談したいことがあるの」


「わかった」


 そして、俺たちは町外れまで移動した。

 皇帝から後継者にと声を掛けられてから、フィーはずっと自分の中で考えを纏めていたのだろう。

 果たしてフィーは、どんな決断を下すつもりなのだろうか?


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