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第86話 ずっと傍に

20180803 更新しました。

 戦いの後、俺たちは三人の騎士と遭遇した。

 倒れ伏すヴィアとランスを見て彼らは驚いたようだったが、フィーから状況を説明された後、反逆者である二人を拘束した。

 去り際、ユミル・ハイランダーという円卓の騎士から、皇帝が無事であることも伝えられフィーは安堵したようだった。



「フィリス様~~~~~~~~~!」


「エクスくん、フィリス様!」


 突如、通路に声が響いてきた。


「この声って……」


「ああ、心配して探してくれてたみたいだな」


 歩いていくと、


「フィリス様!?」


「エクスくんも!」


「お二人とも、ご無事ですか!?」


 俺たちを心配したニア、そしてニース、リンの三人と合流することになった。

 三人に話を聞くと、どうやらベルセリア学園の生徒は先程、ホテルへの避難を完了させたそうだ。

 それと……ヴィアとランス以外の皇女と騎士も捕縛されているらしい。


(……オルドたちのお陰だな)


 こういう時、仲間の存在はありがたい。

 事態は迅速に解決に向かっているようだ。


(え~と……あいつらは?)


 気配を探ると……どうやら既にホテル――俺とフィーの部屋にいるようだ。


「これもエクスくんが迅速に解決してくれたお陰ね!」


 話を続けていると、ニースが言った。

 今回の反乱クーデターによる死亡者、怪我人は出ていないらしい。


「俺だけの力じゃない。

 みんなが――フィーが、一緒に戦ってくれたからだ」


 俺は足を止めて、フィーに笑みを向ける。


「ボクは大したことはできてないよ。

 全部、エクスのお陰」


 するとフィーも足を止めて俺の瞳を見つめた。


「フィーは傍にいてくれるだけでいいんだ。

 それだけで俺は不思議なくらい力が湧いてくるから」


「エクス……。

 そんなことでいいなら、ボクをずっとキミの傍にいさせてね」


「もちろんだ。

 俺の方こそフィーの傍にいさせてくれ」


「うん、エクス……ずっと一緒だよ」


 一秒でも離れていたくなくて、俺たちは抱きしめ合った。


「ぐっ……なんだか前よりも仲が進展しているような……。

 このままじゃダメね……どこかで勝負を掛けなくちゃ……」


「に、ニース様、どうかされましたか?」


「なんでもないわ。

 ただの一人言よ。

 フィリス様、こんな場所ではしたないわよ」


「……そ、そうですね。

 誰の目があるかわかりませんし……」


 生徒会長と忠実な皇女の従者に窘められる。

 でも、俺はフィーを離したくなくて――


「……この後はホテルに戻るんだよな?」


「そうだけれど……」


「なら――」


 俺はフィーを抱きかかえて、重力制御を使って空を飛ぶ。


「エクス?」


「これなら誰にも見られなくて済むだろ?」


「ぁ……――うん!」


 そしてホテルに戻るほんの少しまでの間だけど、俺たちは出来る限りゆっくりと飛び王都を見渡しながら、空の旅を楽しむのだった。




          ※




 エクスたちの活躍により、反乱クーデターは収束に向かった。

 反逆者たちも捕縛され現在は幽閉されている。

 形の上では未遂ではあるものの、皇帝の命を狙った以上は重罪となるだろう。

 今後は尋問が行われ彼女たちの協力者も捕らえられることになるはずだ。


「……なぁ、聞いたか?」


 だが民を導く皇族と国の絶対的な守護者である円卓の騎士であることは、民の間で大きな波紋を生むことになっていた。


「ああ……あの噂のことだろ」


「いやいや、あれは噂じゃないわよ!

 わたし、あの場にいたんだから」


「闘技場は大騒ぎだったよね。

 直ぐに衛兵さんたちが避難誘導してたしさ」


 円卓剣技祭が中止となったこともあり、非常に信憑性の高い【噂】として王都の民たちの間で話が広がり続けている。

 しかし、彼らは決して悲観的になっているだけではない。


「そういえば、反逆者たちを捕らえたのは誰なんだろうな?」


「円卓の騎士たちじゃないのか?」


「そうよね……。ラグルド様ではないの?」


 一人の民が口を開いた。

 口に出しはしないものの――反逆者は皇族と円卓の騎士。

 であるならば、円卓の騎士に勝てる者は、円卓の騎士だけという共通の認識が民の間ではあったのだ。


「それが違うんだよ」


「え?」


「フィリス皇女殿下の専属騎士ガーディアン――エクス様が戦い捕縛したそうだ」


「それってドグマ盗賊団を討伐したっていう噂の専属騎士ガーディアンよね?」


「円卓剣技祭の余興を見ていた者なら知っているが……円卓の騎士を圧倒していたよな」

「学生の身でありながら、フィリス様の騎士を務めているくらいだものね。

 今回の功績が事実なら将来的には――」


 こんな調子で、第五皇女フィリスと専属騎士エクスに対する民の期待はさらに大きくなっていく。

 今後の国を導いていく希望の象徴であるかのように。


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