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第69話 まさかの来訪者

20180711 更新1回目

 だが――ドガアアアアアアアアアアアアン!!


「――っ!?」


「な、なに!?」


 王都中に響き渡るような爆音で、俺とフィーの穏やかな終わりを告げた

 直ぐに周囲を警戒する……と、少し離れた場所に尋常ではない強烈な気配を感じる。


(……なんだ?)


 気配は全部で四つ。

 その中の一つはルティスと同格。

 残す三つも最上級魔族と並び立つほどの力を放っている。


(……まさか勇者? それとも――)


 もしかしたら……という予感はある。

 が、万が一にもフィーに被害が及ぶ可能性があるのなら、放置するわけにもいかないだろう。


「フィー……」


「行くの?」


 俺は頷く。


「直ぐに戻ってくるから、ここで待っていてくれ。

 俺が戻るまで鍵は絶対に開けちゃダメだぞ」


「……気を付けてね」


「心配しなくていい」


 不安に瞳を揺らすフィーの頭を撫でる。


「お前の専属騎士ガーディアンは最強だ。

 だから信じて待っていてくれ」


「……うん!」


 しっかりと頷くフィー。

 彼女の不安を1秒でも早く取り除く為にも、全速力で事態を収束してこよう。

 そう決意して俺は部屋を出た。




          ※




 まだ早朝ではあるがホテル内は大騒ぎだった。


「な、なんだよ今の音!?」


「爆発? ホテルの中じゃないよね!?」


 生徒たちは部屋を出て、何があったのかと事態の確認に努めている……が、誰も状況を掴めていない。

 だが、何か事件が起きたのではないか? と考えるのが自然な流れだろう。


「みんな、落ち着きなさい!

 音はホテルの外――誓う

 教官方から指示があるまで、部屋で待機していて!」


 混乱する生徒たちに、ニースの指示が飛んだ。

 この場はニースや教官たちに任せておいて問題はないだろう。


「エクスくん!?」


 ホテルを出ようとした時、ニースに名前を呼ばれた。

 が、俺は彼女を一瞥する。

 それだけで俺の考えを理解したのか、彼女は頷いてみせた。

 そのまま俺は外に出ると、砂埃のような煙が空高くまで上がっているのが見える。


「――重力制御グラヴィティ


 魔法を使い重力から解放された俺は、一気に飛び上がった。


(……あそこで間違いないな)


 煙が上がっているのは、城門から数キロほど先。

 そこに位置尋常ではない魔力を感じる。

 俺は重力の方向を変化させて、気配の位置に向かって急速落下。

 地面に激突する前に、魔法で速度を抑えて着地した。


(……煙で見えなかったが……大穴ができてるな)


 隕石でも降ったのかと思うくらいだ。

 恐らく何かが落ちてきて、その衝撃で煙が舞ったのだろう。


(……さて、気配の正体を確かめるとするか)


 穿たれた地面の中に俺は飛び降りる。

 すると、


「いたた……全く、送還中にお主らが暴れるから着地に失敗したであろうがっ!」


 聞き覚えのある声が聞こえた。


「久しぶりにライバルと会うのだ!

 軽く身体を動かしておきたかったのだよ!」


 こちらもまた聞き覚えのある男の声だ。


「あう……ちょっと痛い……」


「でも、やっと先輩に会えるんですよね!」


 こっちの二つも……。

 俺はこの段階で、この大穴を作った四人の人物が誰かを理解していた。

 同時に思い出していた。

 実力試験の翌日――念話をした時に、近いうちに人間界こっちに来ると彼女あいつが言っていたことを……。


「この戦闘バカ! 次元移動がどれほど高難易度な奇跡まほうかわかっているのかっ! 全く……この程度の誤差で済んだからよかったものを、別次元に送還されていたら、とんでもなく面倒なことになって――」


「ルティス」


「なんだ、エクス! 今この戦闘バカを叱っておるのだから――って、エクス!?」


 魔界の現魔王が俺の顔を見て驚愕していた。

 まさかこの場で会うと思わなかったのだろう。


「もしかして……わらわの気配を感じて、出迎えにきたのか?

 うむ、ご苦労。なかなか愛い奴よ!」


「いや……そういうわけじゃ――」


「にぃに!」

「先輩!」


 ドン――ぎゅっ! と、二人の少女に挟まれるように突撃&抱きしめられて、俺の言葉は遮られた。


「久しぶりだな、アン、リリー」


「ん」


「お久しぶりです!」


 アンナシアとリリアス――二人の美人姉妹は満面の笑みを浮かべて頷く。

 どうやら久しぶりの再会を喜んでくれているようだ。


「にぃに……アンね、ずっと……寂しかったの。

 にぃに、人間界に行っちゃったって魔王様に聞いて……会いたかったから」


 小動物のようなアンナシアは、瞳をうるうるさせて俺を見つめる。


「リリーもです! 送還の魔法が使えるならすぐにでも人間界に行きたかったんですけど……魔王様がケチだからなかなか連れていってくれなくて……」


 アンの妹のリリーも俺の服をギュッと掴んで、上目遣いを向ける。

 その表情からは置いて行かれたことへの寂しさと不満を感じた。


「おいリリアス! 誰がケチなのだ!

 これでもお主らの為にかなりの魔力を消費して人間界に連れてきてやったというのに……!」


「でも、元気そうな先輩が見れて、リリーの不安は吹っ飛んじゃいました!

 先輩、大丈夫ですか? 何かお困りごとは? 人間界の雌猫の毒牙にかかったりしていませんか?」


「こいつ……わらわを無視した!?」


 リリーに無視されて、ルティスは微妙にショックを受けてしまったようだ。


「にぃに……リリーに聞いた。

 人間界には、とっても強い毒を持った猫さんがいるって……!

 アンとリリーで、にぃにを守る!」


「そうですアン姉!

 リリーとアン姉が傍にいれば、雌猫が近付く心配もなくなりますよ!」


「ん!」


 なんだか勝手に話が進んでいるが、


「二人とも人間界にはそんな危険な動物は――っと!?」


 顔面を狙ったハイキックが唐突に俺に迫り、俺はアンとリリーを抱えながらもスレスレでそれをよけた。

 ただの蹴りではなるが、直撃すれば上級魔族程度なら首が吹っ飛んでいただろう。

 もう少しわかりやすく威力を説明するなら……今のはドラゴン族の王様――竜王くらいなら殺せる蹴りだ。

 それを放ったのは、

 

「流石はオレ様のライバル!

 人間界に来て弱くなっているのではないかと心配していたが、その心配はないようだな」


「いきなり仕掛けてくるとは……相変わらずの戦闘バカっぷりだな」


 魔界一の戦闘バカ――最上級魔族のオルドだった。

 ちなみに俺のライバルというのは自称だが、魔界でもそこそこ強いほうで、魔王継承権を持つ魔族の一人だ。


「エクス! 久しぶりにバトルといくのだよ!」


「やらん」


「んなっ!? まさかオレ様に臆したのか!?」


「違う。そんな暇はないからだ。

 この後は――」


 俺はルティスたちに、今日は円卓剣技祭という催しがあることを伝えた。

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