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第39話 VSドグマ③

20180301 本日更新2回目(1回目0時時更新)

        ※






「ひゃははっ、お友達との話はもういいのかよぅ?

 オレァ、もう少しくらいなら待っててやってもいいんだけどよぅ~~~!」


 俺の目の前にいる男が耳障りな声で笑う。


「お前が盗賊団のリーダーか?」


 俺の問いに、目前にいる男は皮肉な笑みを返した。


「おうよぅ~、このオレがドグマ様だ。

 その辺で伸びてる雑魚とは明らかに違うって見りゃわかんだろぉ?」


「いや、お前もその辺の雑魚と大して変わらないだろ?」


「ああん? ひゃははっ、言うじゃねえのよぅ」


 対峙すれば敵の強さはだいたいわかる。

 こいつの戦闘力はせいぜい、ガウルと同程度だ。

 だが、そうなるとニースたちがここまで苦しめられた理由はなんだ?


「エクスくん、その男のはめている指輪――それは魔法道具マジックアイテムになっているわ。

 その効果なのか、私たちの攻撃がそいつには一切通じなかった」


 ニースの助言でドグマの手に目を向けると、5つの指輪が見えた。

 確かに、結合指輪(コネクトリング)のような不思議な力を感じる。


「ひゃはははっ! 黒髪の姉ちゃんは目聡いねぇ!

 あの状況で良く気付いたじゃんかよぅ!

 いいねぇ、やっぱりオレァお前をボロボロにしたいぜぇ!

 奴隷にして死ぬまで、いや死んでも犯しまくってやりてぇなぁ!」


 あまりにも下賎な発言に、ニースは屈辱を覚えたように眉を顰め不快感を示す。

 人間界にも、これほどの悪が存在するのか。

 こんな非道な人間を見たら、魔族も仰天ぎょうてんするだろう。


「しっかよぅ〜、今日はたまらねぇなぁ。

 また犯しがいのありそうなお嬢様が一人増えてやがるんだからよぅ!」


 ドグマのねっとりとした視線が、フィーに向く。


「くあああああっ、いいねぇ!

 あの凛々しい面をどんな風に汚してやろうか、考えるだけで、今からオレの心は震えて――」


「お前さ」


「あん?」


「もう黙れ」


 俺はドグマの目前に移動して、その顔面に目掛けて拳を振った。


 ――ドガアアアアン!!


 大砲の発射のような爆音が響く。

 それはドグマの周囲に発生した『何か』が俺の攻撃を妨害した音だった。

 どうやら、この男周囲には障壁が発生しているようだ。


「ふおおおおおおっ! なんだなんだぁ!? 全く見えなかったぜっ!

 だがよぅ! テメェの攻撃もオレには通じねぇみたいだなあああぁっ!」


 ドグマのはめている指輪の一つが不気味な輝きを見せる。

 やはり、あの障壁を生み出しているのは指輪の効果で間違いないようだ。

 物理攻撃は防がれたが、魔法はどうだろうか?


「――フレアドライブ」


 太陽を凝縮させたような圧倒的熱量が俺の掌に形成された。

 直撃すればルティスにも極軽度のダメージを与えられる魔法だ。

 人間相手に使えば普通は即死……だが、物は試しだ。

 俺は疾駆しドグマに向かいその小さな太陽を叩き込む。

 だが、ドガアアアアアアアアアン――と、轟音が響くも、やはり見えない障壁がにその攻撃は防がれた。


「魔法もダメか」


「……ひゃはははっ! いいねぇいいねぇ!

 とんでもない奴が現れるじゃねえかっ! 可笑おかしくって仕方ねぇぜっ!」


「何がおかしいんだ?」


「そりゃ可笑おかしいさぁ~! 可笑おかしくて仕方ないねぇ!

 この状況を考えろよっ!

 今のお前は女たちを救いに来た英雄、もしくは勇者ってとこだろ?

 つまりお前はこいつらの希望ってわけだ」


 ドグマの顔が恐ろしいほど表情が歪む。


「その希望をよぅ、今からオレが潰せるってわけだぁ!

 その時、ここにいる女たちがどんな絶望的な顔を見せてくれるか……。

 ああああああっ!! 考えただけで、おっっちまうよなあああぁっ!!」


 どうやらこいつの中では、俺を倒す前提で話が進んでいるらしい。


「お前みたいな最低な人間に、ボクの専属騎士ガーディアンは負けない!」


 ドグマに臆することなく、俺のプリンセスが声を上げた。

 その言葉から、俺に対する絶対的な信頼が伝わってくる。


「ああん? 知らねぇのかぁ、お嬢ちゃん、世の中には絶対なんて――」


「何を言おうと、私たちは絶望なんてしないわ。

 エクスくんは絶対にお前を倒すもの」


 絶望とは懸け離れた表情で、ニースはドグマを見据える。

 ニースも俺の勝利を信じてくれていた。


「エクス殿と戦った経験があるからこそ、それがしにはわかる。

 貴様では絶対にエクス殿には勝てない」


「あなたの勝利を信じる者などこの場にいません。

 だからわたくしたちが絶望することなどない」


 力強い意志を見せるリンとニア。

 二人の目に絶望など欠片も存在しない。

 そして、


「エクスは私に、任せろと言った。

 それはお前を絶対に倒すということだ!

 だから――勝つ! 私の信じた騎士はお前になんて負けない!」


 純粋すぎるくらい真っ直ぐな、ティルクの想いが俺に向けられた。

 みんなが俺を信じてくれている。

 なら、俺は――。


「ははっ……」


「テメェ、なに笑ってやがる?

 美人な姉ちゃんたちの応援で元気になっちまったか?」


「お前は知らないだろ?

 誰かに信じてもらえるってのは、それだけで力になるもんなんだよ」


 気付けば俺の結合指輪コネクトリングは小さな光を放っている。


『エクスそんな奴、やっつけちゃえっ!!』


 フィーの想いが俺に届く。

 それだけじゃない。


『エクスくん、信じているわ。

 あなたの事を心から』


『エクス殿なら、必ず奴を倒せます!』


『わたくしたちの分もどうか!』


『願うことしか、信じることしか出来ない。

 でも、私の想いがエクスの力になるのなら――』


 みんなの想いを力に変えてくれているようだった。

 俺は再び、ドグマに接近して俺は拳を振る。


 ――バン! ――バン!


 連撃をドグマに浴びせると、弾けるような音が室内に残響する。

 自分の攻撃の衝撃で、俺の拳から血が噴き出た。

 俺の攻撃はやはりドグマには届かない。

 ドグマの指で指輪が輝く――同時に、俺の耳には小さな音が聞こえた。

 本来は聞こえないような、小さなミシミシという音だ。


「無駄だ無駄だ無駄だ!

 テメェが何をやろうと無駄だ!

 さぁ、早く絶望しやがれぇっ! その絶望がオレを満たすんだよぉぅぅっ!」


「さっきから絶望絶望って言うがな――俺がフィーたちを、絶望なんてさせねぇよ」


 自分の拳が傷付くことを厭わず、俺は全力で拳を振った。

 すると――パリンッ! さっきまでとは明らかに違う、ガラスが割れるような音が響いた。

 直後、パン! と、弾けるような音を立て、ドグマの付けていた指輪の一つが砕け散る。


「なっ!? 防壁の指輪が……!?」


 ドグマ自身、想定外の事態だったのだろう。

 その表情に確かな焦りが浮かんだ。

 どうやらこれで、邪魔な障壁が消えたらしい。


「ならまずは――」


 こいつをぶん殴る回数は、もう決めている。

 こんな奴、消し飛ばすのは本来一撃で十分だが、今回は全部で6回。


「最初の一発! フィーに汚い言葉を吐いてはずかめたぶんだ!」


「ぼべっ!?」


 ボゴッ――ドグマの顔面に拳を叩き込んだ。


 その拳がドグマの顔面にめり込み、その衝撃でドグマの身体が吹き飛んでいく。

 だが、まだまだこれからだ。


「次は、傷付けられたリンのぶん!」


「あぐっ!?」


 壁に激突する直前、俺はドグマの身体を蹴り上げた。

 すると、男の巨躯は天上に向かって飛んでいく。


「そしてこれが、ニアのぶん!」


「おぶっ!?」


 俺は飛び上がると、宙に浮かぶドグマの身体に足を振り下ろした。

 すがまま猛烈な勢いで落下するが、その身体が地面に触れることはない。


「次はニースのぶんだ! 思い切りいくぞっ!」


 ニースを救出した時、彼女の首にはドグマに絞めつけられた指の跡が残っていた。

 服を剥がされ、それでも戦意を失わず仲間を助けようとしていた彼女の姿が、俺の目には焼き付いている。


「もし跡でも残ったら土下座じゃ済まさねねぇ!」


 俺は重力制御グラヴィティを使い、俺はドグマよりも早く地面に着地すると、


「喰らえっ!」


「あがあっ!?」


 俺は落下してきたドグマの身体を掴むと、顔面に再び拳を叩き込んだ。


「そしてこれは、嘲笑されたティルクのぶん!」


「おごおおおおおっ!?」


 続けて俺は思い切り拳を上げて、ドグマの顔面に振り下ろす。

 パンチの衝撃で吹き飛ぶと、ドグマの身体が迷宮の壁を貫いた。

 砕け散った石壁にドグマの身体が埋まっていく。


「お前はティルクの尊厳を踏みにじろうとした。

 でも、ティルクの心はお前に負けなかった。

 あいつが絶望せずお前に立ち向かったから、俺はこうしてみんなを助けられてるんだからな」


 俺はゆっくりとドグマに向かって歩いていく。

 最後の一撃がまだ残っているからだ。


「……ひゃはっ、ひゃははははっ!

 いてぇ、いてぇじゃねえかよおおおおおっ!」


 大笑いの後、ガタガタ――と、地面に埋もれたドグマの身体が動いた。

 ボンッ! と砕けた石壁を飛び散らせ、ドグマが立ち上がる。


「最高だ、最高だぜぇ! いるじゃねえか!

 たまらねぇくらい強い奴がよぅ!!

 俺を楽しませてくれそうな、ぶっ殺しがいのある男がよぅ……!」


 狂気に歪むドグマの顔はもう人間ではない。

 魔物以上の悪鬼羅刹だ。


「だがよぅ、だめだ、ダメだダメだぁ!!

 こいつをぶっ殺すには絶望が、絶望が足りねええええぇっ!

 オレに絶望を、絶望をよこせええええええええっ!」


 叫びながらドグマが駆け出す。

 その方向にはフィーが立っている。

 だが、ドグマの行動はあまりにも軽率だ。

 既にあの男を守っていた防壁はないのだから。


「はっ!」


 ドグマの前に立ちふさがったのはニアだった。

 両手にナイフを持ち、ドグマの太腿を切り裂く。


「うおっ……クソがっ! テメェら――」


「多勢に無勢で卑怯などとは言わせぬ――」


 その声はリンのものだ。

 カチャン――と鞘に刀が収まった瞬間、斬ッ!! ――ドグマの胸に赤い十字傷が刻まれた。


「がはっ……はははははっ! いてぇ! いてぇ! だが、こんな痛みじゃ生温いねぇ!

 そうだ! 絶望だ! もっとオレを絶望をさせてみろおおおっ!

 恐怖をオレ見せてみろおおっ! それがオレの力に変わるっ!

 テメェらを絶望させる力に変わるんだよぉおおおぅっ!」


 それでもこの悪の権化の動きは止まらない。

 ドグマのはめている指輪が光り――身体の傷を癒していく。

 どうやら他の指輪の効果も、中々面倒なものらしい。

 一体、こんな物をどこで手に入れてきたのか……。


「お前が欲しいものを、俺は与えてやれそうにない。

 知ってるか?

 痛みや恐怖、絶望……そういうを感じられるのは生きているからなんだぞ?」


「そんなのは良く知ってるぜぇっ!

 安心しろ! オレを殺せる奴なんていねぇ!

 どんな傷でも一瞬で癒えるんだからよぅおおお!!

 オレは永遠に、殺って、って、ヤりまくるんだよっ!」 


「あ、そう。

 ならお前には、永遠に反省する時間を与えてやる」


 もう手加減は要らない。

 最後はドグマ盗賊団が苦しめた、デントの村の人たちのぶん――。


「よかったな。

 死なないっていうなら――お前が感じたい恐怖と絶望を存分に味わえるぞ」


 俺はドグマの顎を目掛けて――全力全開の一撃を見舞った。


 ――パアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!


「永遠に――ぶっ飛び続けろ!」


「おっごあああああああああああああああああああああああっ!?」


 絶叫するドグマの身体が迷宮の天井を突き抜け、天へと駆ける。

 その勢いは止まるところを知らず、雲を突き抜けても止まらない。

 空の彼方――さらにはもっと上の誰も知らない場所へとドグマはぶっ飛んでいった。


(……確か空の上にはもっと広い場所があると、ルティスが言っていたっけ……)


 誰も知らない、名前すらないその場所で、羅刹は永遠に空の彼方を駆けるのだろう。

 いつか反省したのなら、助けてやらなくもないのだが……多分、永遠にそんな日はこない。

 人間界に来てから初めて、俺は絶対悪と呼べる人間を見た。


「……さて、一応これで100倍返しくらいにはなったか?」


 戦いを終えて、俺は振り返る。


「十分過ぎるわ……。

 後は勝利のキスでもしてくれると、私は嬉しいのだけれど?」


 いつもよりも疲れた顔だったが、ニースは微笑する。

 そしてフィリスの方を見た。


「ぅ……」


「どうしたのかしら、フィリス様?

 いつもなら直ぐに『ボクのエクスを取っちゃヤダ!』って言ってくるはずなのに」


「そ、その真似、全然似てないから」


 フィーの表情には少し影落ちていた。

 どうしたのだろうか?


「……ニア、会長、リン、ティルク……ごめんなさい」


 そして唐突にフィーは謝罪をした。

 深々と頭を下げる皇女に俺たちは戸惑いを覚えたようだ。


「ふぃ、フィリス様、どうか頭をお上げください!

 一体、わたくしたちに何を謝罪されているのです?」


「そ、それがしには、フィリス様に謝罪されるような事など……」


「あ、謝らなければならないのは私です!

 勝手な行動を取っただけでなく、敵に捕らえられ……どれだけ迷惑を掛けたか……」


 ティルクは深く反省していた。

 だが、フィーが何を謝っているのかは俺にもわからない。


「ボクは、みんなとの合流を後回しにした。

 攫われた人々を、村に送り返すことを優先したんだ。

 もし……みんなと先に合流する選択をしていたら……」


「私たちを傷付けずに済んだ……と言いたいのかしら?」


「……うん。だからボクはみんなに謝らないと――」


「なら、そんな謝罪は要らないわ。

 村人の救助を優先するのは当然よ。

 私があなたの立場でも同じ選択をした」


 ニースは断言した。


「村の者たちが救助されているのならこれほど嬉しいことはありません。

 何より今回の敗北の原因は、それがしが未熟だからというだけのこと……ニース様、専属騎士ガーディアンでありながら、あなた様をお守りできず……申し訳ありません」


 悔しさで表情を歪めるリン。


「それを言うのなら、わたくしも謝らねばなりません。

 フィリス様からうけたまわったニース様を守れという命を、わたくしは果たすことが出来ませんでした」


 深く頭を下げるニア。


「……だとしたら、私が一番の原因です。

 私が捕まりさえしなければ、ニース様たちを危険に晒すこともなかった……」


 ティルクは瞳に涙を溜める。


「全く……。

 フィリス様のせいで、謝罪大会になっちゃったじゃない」


「ぼ、ボクが悪いの?」


 フィーは本当に、みんなに申し訳ないと思っていたのだと思う。

 だが、誰もそんなことは思っていなかった。

 全てを完璧にこなす事なんて出来ない。

 その中で俺たちは最善を尽くしただろう。


「みんな、もうこの話は終わりよ。

 全員無事、村人も無事に救助できた。

 何より盗賊団は壊滅。

 依頼も達成で、これ以上の成果はないのではないかしら?」


 ニースが苦笑を浮かべつつ、生徒会長らしく話をまとめた。


「あ、でも……どうしてもフィリス様が私に申し訳ないと思うのなら……次の休日、エクスくんとデートさせてもらってもいいかしら?」


「なっ……そ、それは……」


「あら? 申し訳ないと思ってくれているのではないの?」


「ひ、卑怯者! だ、ダメ……だけど……ぼ、ボクも一緒でいいのなら……」


 複雑な表情を浮かべるフィーにとって、今のは最大の妥協点だったようだ。 


「いいわ……なら、次の休日はみんなで出掛けましょう。

 今日の祝勝会の代わりに、ね……」


 生徒会長は皆にそんな提案をした。


「わ、私も……参加していいのでしょうか?」


「あなたの反省は十分伝わったわ。

 そうでしょ、リン?」


「はい。

 ただしティルク、もう二度と無鉄砲に行動するな。

 一言くらいは相談するのだ。

 お前が騎士に憧れるのなら……騎士として最低限の振る舞いをしろ。

 正義感に身を任せることは騎士道ではないのだから」


「リン先輩……っ……はい!」


 瞳に溜まっていた涙が零れた。

 その涙の理由わけは、尊敬する先輩の温かい言葉と、自分への反省だろう。


「女の身でありながら騎士を目指す事――強くなろうとすることは難しい。

 だが、お前は女の身でありながら、それがしと同じ目標を持っている。

 皆を守れる騎士になりたいという目標をな。

 だからこそ、それがしは、お前と共に頑張っていきたいと思っている。

 泣いている暇はないぞ? 明日からまた勇往邁進していくのだからな」


 力強いリンの呼びかけに、ティルクはごしごしと服の袖で涙を拭いた。


「――はい!」


 ティルクの顔には、もう笑顔が戻っていた。

 学園の女騎士は少ない。

 俺が知っている限りでは、リンとティルクの二人だけだ。


 今まで俺は、別に女が男より弱いと思ったことはなかった。


 それはルティスという別格の存在と、物心つく前から共に過ごしていたせいなのかもしれない。


 魔族は人と違い特殊だからということもあるが、身体能力を考えれば、女は男にどうしても劣ってしまうだろう。


 それでも前に進むというのなら、俺は可能な限りで応援したい。


「なぁ、帰る前に一応、こいつら全員、拘束しておいたほうがいいよな?」


「そうね。

 念の為、魔法道具マジックアイテムは取り上げておきましょうか。

 気になることもあったし、学園長にも一応報告しておかないとだけど……。

 まずは、学園に戻る前に村の人たちに無事を伝えにいかないとね」


 俺は迷宮を出る前に、団員たちを魔法で拘束した。

 後は村に戻ってから衛兵を呼び、牢屋にでも送ってもらうとしよう。



            ※




 それから、俺たちはデント村に戻った。

 村人たちからは、英雄が凱旋でもしたかのような喝采が浴びせられた。


「こうじょさま! おにいちゃん、おねえちゃん!」


 人々からの感謝の言葉が伝えられる中、ジェミニが俺たちに駆け寄って来る。


「みんなをたすけてくれ、ありがとう!

 じぇみに、おおきくなったら、おにいちゃんたちみたいにね、みんなたすけられるひとになる!」


 眩しいくらいに純粋な眼差しで、ジェミニがそんなことを言ってくる。

 村人たちを救った俺たちは、もしかしたらこの少女にとって英雄のような存在なのかもしれない。

 ジェミニが将来、多くの人々の助けになれるような、そんな存在になってくれたらと俺たちは思う。

 そんな小さな希望の芽生えを見届け、俺たちの初めての依頼は完了となった。

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