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第35話 カドゥケウスの迷宮

20180226 更新1回目

         ※




 エクスたちが北の迷宮を目指し村を出た頃……。


「ここか……」


 正義感だけが武器の無鉄砲な女騎士――ティルク・トントは現在、北の迷宮の入口に辿り着いていた。

 入口には、見るからに人相の悪い二人の男が見張りをしている。

 ここが盗賊団のアジトというのは間違いないようだ。


(……奴らがデント村を、私の故郷の人々を……!)


 ティルクの心には沸々と怒りが沸く。

 人々の傷付いた姿、村の惨状は今も目に焼き付いて離れない。

 思い返すだけで、ティルクの瞳からは涙が零れそうだった。


(……攫われたみんなを、早く救出しなければ)


 強い信念と共にティルクは足を踏み出した。

 見張りたちの視線がティルクに向く。


「あん? なんだテメェは? デントの村の人間じゃねえよな?」


「貴様らはドグマ盗賊団の者か!」


 本来ならここで、不意打ちの一つでも喰らわせてやるべきなのだろう。


「だったらなんだってんだ?」


 盗賊団の男たちが、持っていた斧を構えた。


「そうか――ならば容赦はせん!」


 ティルクは腰に携えていた鞘から剣を抜く。

 そして、故郷の人々を救う為、女騎士の戦いが始まった。




          ※




 俺たちは村を出て北の迷宮を目指していた。 

 ニースは迷宮のおおよその位置を村長に確認した上で、持ってきていた地図マップにルートを記した。

 そのお陰もあり、俺たちは迷うことなく、盗賊団のアジトとなっている北の迷宮を発見することが出来た。


「ここが盗賊団のアジトか」


「ええ。

 北の迷宮――過去にはカドゥケウスの迷宮と言われていた場所よ」


「カドゥケウス?」


 聞き覚えのない名前だったので、俺は聞き返していた。


「カドゥケウスは、数百年前に実在した賢者の事ね。

 今では迷宮なんて言われているけれど、ここは元々、その賢者の魔法実験施設だったらしいの」


「ここに関わらず、迷宮の多くはいにしえの賢者たちが作った建造物と言われてるんだよ。

 仲には誰が作ったのか、なんの目的で生まれたのかもわからない迷宮もあるらしいんだけどね」


 会長の説明を、フィーが補足してくれた。

 魔界にも迷宮――ダンジョンは多く存在するが、どちらかといえばトレーニングルーム的な扱いだ。

 魔界の義務教育では、子供たちに訓練用のダンジョンを踏破させるなんてものもある。

 人間界とは随分と役割……というか、扱いが違うのかもしれない。


「しかし、ここは本当に盗賊団のアジトなのでしょうか?」


それがしも気になっていました。

 アジトの割に不用心すぎる。

 まさか見張りの一人も立っていないとは……まさかティルクが何か……?」」


 ニアとリンが迷宮の入口の前で疑問を呈した。


「考えてもいても仕方ないだろ。とりあえず入ってみないか?」


「そうね。

 迷宮の中は、盗賊団の構成員と遭遇する可能性も高いわ。

 各自、準備はいいかしら?」


 ニースが一人一人に確認の意味を込めて目を向ける。

 俺たちはそんな生徒会長に頷き返した。


「では行きましょう」


 そして、カドゥケウスの迷宮に踏みこんだ。

 灰色の石壁で形作られた通路の中に、一定の間隔で壁に松明が掛けられている。

 この時点で、カドゥケウスの迷宮には人の存在が見えてくる。

 ほとんど人が踏み込まない迷宮であれば、そもそも明かりなどなく真っ暗なのだ。

 少し進んだ先で通路が二手に分かれていた。


「迷宮なんて言うだけあって、少し入り組んでいるのかな?」


「そう考えるのが妥当かもしれないわね……。

 エクスくん、フィリス様、ニアさん、探索の効率を上げるのであれば、二手に分かれるというのはどうかしら?」


 少し考えるような間の後、ニースはそんな提案をした。


それがしは賛成です。

 一刻も早く囚われた人々を救いたい」


 確かに時間は惜しい。

 俺たちはこの迷宮の広さや通路がわかっていないのだ。

 分かれて探索した方が、間違いなく効率はいいだろう。

 だが、


「……二手に分かれるのもいい。

 だが、無理をしないと約束できるか?」


 ニースとリンは学園の生徒の中では確かに実力は高い。

 そう簡単に後れを取るようなことはないと思っているが、盗賊団の戦力は未だに明らかでないのも事実……。


「それは、私たちを心配してくれているかしら?」


 その声音は少し意外そうだった。


「当たり前だ。

 俺たちは学園の仲間だろ?

 万一がないとも言い切れないだろ」


「残念。

 そこはお前が大切だからではないのね。

 でもあなたが心配してくれるだけで、嬉しいと感じてしまう私がいるのだけれど」


 少し残念そうに黒髪の令嬢は微笑する。


「でもね、エクスくん。

 少しは私たちを信じなさい。

 これでも、それなりに修羅場は経験しているのだから」


「エクス殿、ご安心ください。

 それがしは何があろうとニース様をお守りいたします」


 俺はニースのことだけではなく、リンのことも心配していたのだが……。

 二人の真摯な眼差しは、自分たちを信じろと語っていた。

 なら今は、二人を信じて先に進むべきだろう。


「……わかった。

 二手に分かれよう。

 フィーもそれでいいか?」


「うん。でも、一つボクからも提案がある。

 ニアは会長たちに同行してほしい」


 それは会長たちを心配したからこその、フィーの提案だった。


「……かしこまりました。

 エクスさん、フィリス様をお願いいたします」


 短い逡巡の後、主の考えを理解した上で、ニアはその提案を受け入れた。


「それじゃあ、二手に分かれて探索再会ね」


「会長、リンさん、ニアも、みんな気を付けて!」


「ええ、エクスくんとフィリス様もね! どうかご武運を」


 こうして俺とフィーは左の通路、ニースとリン、ニアは右の通路に分かれて、探索を続けることになった。

今回、短めですみません……! 明日はもう少し頑張ります!

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