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第100話 変化の原因

ついに100話となりました!

ここまで更新を続けてこれたのも応援してくださっている読者の皆様のお陰です!

本当にありがとうございます!

記念に作者自身が描く自作ファンアートでも書こうかなと思います。

もしかしたら活動報告でお見せするかも!?

 俺はニースにこの短時間で起こったことを全て伝えた。

 ユグドラシル帝国皇女の消失。

 最愛の皇女――フィリス・フィア・フィナーリアの存在が人々の記憶から抹消されてしまっている。

 第三者が聞けば首を傾げらるようなそんな突拍子もない話を、ニースは真剣に聞き続けてくれた。


「……は、話を聞いた上でも某には信じられぬ話ですが……」


 そう簡単に信じられる話ではない。

 が――俺とニース、二人の記憶には確かにフィーの記憶が残っていることを知り、リンは納得せざるを得なかったようだ。


「……エクスくん。

 結合指輪コネクトリングの反応は本当に一切ないの?」


 話を聞き終えたニースが俺に尋ねる。


「ああ……」


「見せてもらったもいいかしら?」


 俺は左手を彼女に向ける。

 いくらフィーを想っても指輪は輝きを放つことはない。


「……一切、反応がないみたいね」


「少し前まではフィーの想いが伝わってたんだ……」


 優しくて温かくて愛おしい。

 互いを想い合う気持ちが溢れて止まらないくらいだったのに。


「……エクスくん。

 その指輪……外してもらってもいいかしら?」


「? ……何故だ?」


「契約者と繋がっているのなら、結合指輪が外れることはないの」


「――そうなのか!?」


 思わずニースに詰め寄る。


「契約により二人は身も心も一つになる。

 それが結合指輪――しかも、あなたがしているのはフィリス様から渡された王家の指輪なのだとしたら、その効果はより強くなっているはず」


「なら――」


 俺は指輪に手を掛けた。

 そしてゆっくりと引っ張ってみる。

 が――。


「……外せないわね?」


「そう、みたいだ……」


 つまりこれは――俺とフィーが今も繋がっていることを意味していた。


「良かったわね、エクスくん。

 まずは不幸中の幸いというところかしら? あとは……この状況の原因を突き止めるだけよ」


「ニース……ありがとう」


 今だけは思わず抱きしめたくなるくらい、ニースに感謝していた。

 恋愛感情があるわけじゃない。

 フィーを助ける為に彼女が手を尽くそうとしてくれていることが嬉しかったから。


「……別に感謝されるようなことじゃないわ。

 私はただ……あなたの悲しそうな顔が見たくなかっただけだもの」


「……ニース」


 なんだか今日のニースはいつものと違う。

 誠実な生徒会長の側面が強く表に出ている気がする。


「あ、あまり熱い視線を向けないでくれるかしら?

 思わずキスしてしまいたくなるわ」


 と思ったら、いつものニースだった。

 でも俺から顔を背ける辺り、本当にそんなことをしようと思ってるわけではないのだろう。


「でも……真面目な話、問題はどうやってフィリス様を見つけ出すか……ね」


 その点に関してはニースの言う通りだろう。

 結合指輪コネクトリングで呼びかけても反応がない以上、手詰まりな状況は変わらない。


「……大婆様に相談してみる?」


「マリンに?」


「ええ……あんなでも、人間としては頂点に立つ魔法使いだから」


 人間としての頂点……と言ったが、魔法使いとしても魔王ルティスに比べれば大したものではないだろう。


「……そうだ。

 ルティスなら――」


「ルティス……さん?」


「そのかたはエクス殿のお知り合いですか?」


 二人にはルティスのことを紹介していなかったか?

 一応、魔王だからな……。

 人間の世界にいると知られたら何かしら問題になる……と考えていたのだ。


「来てくれ」


 俺はニースたちを連れて急ぎ部屋に走った。


「――ルティス!」


 バン! と大慌てで扉を開く。


「なんだ……そんなに慌てて?」


 ルティスが首を傾げる。


「にぃに……戻ったの?」


「先輩……?」


「なんだ……戻ったのか?」


 魔界の友人たちは寝ぼけ眼を俺に向ける。


「エクスくん……この人たちは?」


 見知らぬ者たちを見て、疑問を向けるニース。


「俺の育ての親の魔王と、友達の魔族たちだ」


「「ま、魔王……!?」


 俺は隠すことなく答えた。

 ニースとリンは驚きから目を丸めているが、今はそれを気にしている余裕はない。


「ルティス、フィーがいなくなったんだ!」


「フィー……? なんだそれは? 人の名か?」


 やはりフィーのことを覚えていないらしい。

 ならどうして、俺とニースだけが……?

 やはりルティスも、フィーのことを覚えてはいないようだ。

 その為、急ぎ魔王たちにも事情を説明する。


「……ほう。

 それが事実なら面白いことだが……」


「何が面白いんだ! あのな――お前だってフィーのことを――」


 気に入っていただろ……と口にしようとして言葉を止める。

 今のルティスはフィーを知らないのだから、この態度も無理はないだろう。


「わらわの記憶では、お前の恋人はそこにいるニースになっているのだがな……」


「そ、そうなの?」


「その嬉しそうな態度を見るに、エクスやニースの持つ記憶の中では違う結果だったようだな……」


 その言葉にニースは眉根を顰めた。

 ルティスも少し表情に影を落とす。

 どうやら今の魔王様は、ニースをそこそこ気に入っているようだ。


「ルティス……この状況を生み出す原因について、何かわかることはないか?」


「魔法しかないだろうな。

 それも事象を揺るがす最大級レベルの……」


 魔法に関する知識は俺よりも遥かにルティスのほうが詳しい。

 今の口振りでは、やはり何らのか魔法による原因があったのだろうか?


「そもそも、魔王ルティスの魔力抵抗を凌駕して記憶の改竄を行えるような奴がいるのか?」


「改竄? エクス、お前……何を言っているのだ?」


「何って……お前はフィーを覚えていないんだろ? だから記憶が――」


「あのな、わらわの魔力抵抗を舐めるなよ?

 たとえ相手が勇者クラスであっても、精神攻撃など効かぬわ」


 どういうことだ?

 なら、一体、どんな魔法で……。


「お前は考え違いをしている。

 消えたのはフィーではなく、お前たちのほうだ。

 正確には飛んだとでも言うべきか?」


「は?」


「え?」


 俺とニースは声が重なり、思わず顔を見合わせた。

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