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右目と貴族と聖騎士

卒業!!!しました!!!春休み!!!なので!!!1日〜2日おきに連載したいと思います。

リハビリ中なので短めです

勢いは鈍いながらも少しずつ、確実に魔人の魔力は俺の中に入ってきて俺の持つ魔力と混ざってゆく。

混ざれば混ざるほど俺のうちから力がわいてくる。

反対に魔人の方は魔力という動力源を失っていき、保有魔力が空になったと同時に足で踏んでいる俺の方に倒れてきた。

魔人化したときの様子はわからないが俺が見た感じでは少なくとも正確な手順--つまり、魔力を大量に保有した人物がいまわの際に

負の感情を強く抱き、魔力が瘴気化した後制御を失って魔人化--を踏んでいたとは思えないし、何かしらの被害者である可能性は高いと思ったので抱き留める。

直後、激しい頭痛に見舞われた。

ズキズキと痛み、脈打つ頭の痛さに耐えかね声が漏れた。

目をつむり痛みが過ぎるのを待つ。

そして、目を開けたとき。

俺の世界は一変していた。

左側は正常に世界を映していて、目をつぶる前と同じ光景が目に入る。

しかし、また(・・)右側に異変が起きていた。

今まで見えていなかったものが見えるようになっていた。

幽霊とかそういうたぐいのものではなく、波のような、或いはリボンのような。

色とりどりの何かが人や動物。あらゆる生物から伸びていた。

もちろん俺からも伸びており、それは紫がかった青色だ。

元魔人には緑。いつの間にか現れている衛兵からは赤や茶。まれに白や黒の人もいる。

ここまで来て俺はやっとこの視界に移っているものが何かに気がついた。

答えは魔力だ。

赤、青、緑、茶、白、黒の色は魔法属性。生き物から伸びるリボンの正体は生命活動で生産、消費されている魔力なのだろう。

そして、今俺が抱き留めている元魔人から伸びているリボンはか細く、今にも消えてしまいそうだ。

「っ!!」

魔力が見えるようになって、直感的に魔法が使えるのを悟った。

今にもあふれそうな俺の魔力や周囲の魔力を集め、元魔人に流し込む。

「ウォーターヒール」

元魔人の男が淡い水色の光に包まれる。

が、それでも回復しない。

クソッ!!

何か間違っているのか?

もしくは不発?

わからない。が魔力が消費される感覚はあった。

もう一回。もう一回。右目で見ていると、俺の魔力は確かにいくつもの奔流となって元魔人の男に流れ込もうとする。が、直前で何かに阻まれるようにほどけて消えてしまうのだ。

何度試しても男は回復しない。

ふと、あの日の光景が脳裏にちらつく。

「なんでだよ…何で回復しねぇんだよチクショウ!!!」

もう何度目かわからないヒールをかけようとして、やめた。

元、とはいえ魔人なのだ。普通の魔力のヒールで治るわけがない。

すぅ、と息を吸い魔力を高める。

魔力は際限なく高まっていき、やがて可視化し始める。

黒い霧は瘴気一歩手前。俺から霧が漏れ出るように周囲にあふれ始めたところで、

元魔人を包むイメージで発動する。

「ウォーターハイヒール」

今度こそ発動したヒールは元魔人を包み、俺の魔力の流入を妨げていた何かを突破してわずかながら魔力と外傷を治癒し始めた。

始まった回復を右目で確認し、詰まっていた息を吐く。

恐らくではあるが、時間がかかっても回復するだろう。

しかし、今ので俺の魔力が底をついた。

しばらくは魔法も魔力も使えまい。

立ち上がり、貴族街の門だったものの残骸から降りると、駆け寄ってきたものが三人いた。

片方はまだ俺より若い長い茶髪で青い目をした少女だ。もう片方は黒い燕尾服を着た妙齢の男性。

二人ともいい服を着ているし、貴族のご令嬢とその付き人なのだろう。もう一人は白銀の鎧に身を包んだ聖騎士だ。

男性の方を見て一つうなずくと、男性もうなずき返してきたので、元魔人の男性を引き渡す。

「一応ヒールをかけましたがとても危険な状態です。はやく本職に見せた方がいい」

執事の出で立ちのその男性は平民の俺に対して頭を下げた。

「このものへの治療とあなた様の対応に感謝を。このものを殺しても誰も文句を言えない状況下にもかかわらず、このものを生かしてくださったことに最大の感謝を」

「いえ。たまたま、偶然ですから」

「それでも、です。申し遅れました。私はこの地を治めるダウナー辺境伯の次女、ルーシェ・ダウナー様にお仕えする執事のヴェルと申します。このものはルーシェ様の馬車で御者をしておりましたダンでございます。向こうは聖騎士ディー。後は頼みましたよ。ディー」

執事と入れ替わるようにルーシェの前に出てきたのはディーと呼ばれた聖騎士だ。

さっきから俺から目を離さず変な動きをしないか見ていた。

ディーはルーシェと俺の間に立つと剣を抜いて俺に向けた。

「ちょっと!!!ディー!!!」

「お下がり下さいルーシェ様。ダウナー辺境伯領地統括代表聖騎士ディー・ゼルブトだ。失礼極まりない行為だと分かっていながら友人の命の恩人に剣を向けていなければ気が気でない私の未熟を恥じるとともに許して欲しい。君は古代史実にすら載っていない偉業であり異業を成したことを自覚しているか」

何ともまぁ丁寧な挨拶だ。まぁ剣を向けられた程度でキレる程短気ではないし警戒される理由も自覚しているので怒ったりはしていない。

「してます。かなりの危険人物扱いされてもおかしくないでしょうし、口を聞いてもらえるだけまだマシですかね。俺はノアと言います」

「ノアか。この街に入った理由を教えてくれるか」

身元確認の後は目的確認か。

当然と言えば当然ではある。自分で言うのもあれだがこんな危険人物が街に入った理由は街の安全を預かる者として聞かねばならないのだろう。

ここでもし嘘でも「街を破壊しに来た」とか「魔人が暴れるのがわかった」とか言ったら良くてお縄、悪くて即殺害だろう。

「衛兵になりたくて。けど入団に年齢制限があることを知らなかったので昨日レオ傭兵団に入れてもらいました。今日はこの街で俺の装備を整える為にオーグリーの武器屋にいた所であの人が魔人化するのに遭遇しました」

嘘は言ってない。出身地も言ってないし瘴気扱える理由も言ってないが。

ディーはまだ訝しむ目で俺を見ているが、幾分か警戒が緩んでいる気がする。

「瘴気を扱った理由は、言えるか」

「人の目があるので言いたくありません。あとコレは奥の手になりそうなので多くの人に知られるような場所でも言いたくないです」

しばらく間を置いて、

「……わかった。誰か真偽判定を使える者を1人。それからレオ団長、鍛治師オーグリーを詰め所に。私はノアを連れて行く」

ハッと声を上げその場で数人が敬礼して走っていった。

「拘束具、嵌めます?俺は構いませんよ」

「……あぁ。そうさせてもらいたい。誰か拘束具を」

お前持ってねぇのかよ。

と言いたくなったがそれは口に出さなかった。

そこまで子供ではない。

そういう訳で、拘束具でガッチガチにされた状態で俺は街の詰め所に連行された


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