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1章 転生者のもたらすもの 2

聞こえた悲鳴は一人分で、対して気にする必要もないように思えた。



恐らく森から出てきた魔物にでも不意をつかれたのだろう。

この村の大人は当然自分達と同じように幼い時から修練を積んでいる。実力は折り紙付きだ。


だから自分が行くまでもなく周りの大人で容易くかたずけてしまうだろうとたかをくくって、レビンの家に急いだ。


レビンの家に着くと同時にコルドとリアと鉢合わせた。丁度同じタイミングだったようだ。


レビンの親に挨拶をしてから丁度悲鳴の上がった方向とは正反対にある空き地へと移動する。偶然俺がレビンと森で遊んでいた時に見つけた場所だ。以来4人の修行場兼遊び場になっている。

時折、迷い込む魔物も絶好の修行相手になるからな。


途中の道でコルドがさっきの悲鳴のことを話しだした。


「さっきの悲鳴大丈夫かなぁ?僕たちもあっちに向かった方がいいんじゃ・・」


「ばっか!俺達が行っても大人の邪魔になるだけだろ。それに向こうには俺の剣の師匠がいるんだ。あの人には誰も敵わないぜ!」


「またレビンの師匠自慢が始まった・・・。それあんたが凄いんじゃなくて師匠が凄いだけだから。まあ凄さでは私の魔法の先生の方が何倍も凄いけどね!」


「リタも結局先生自慢じゃねーか」


心配するコルドをレビンが笑い飛ばし、お互い師匠と先生が大好きなリタとで言い合いを始める。



そんないつもどうりの会話を半分呆れながら聞き流していると村の異変に気がつく。

もう悲鳴が聴こえてから魔物を倒すのに十分な時間がたっているはずだ。


だが、騒ぎは一向に収まらない。むしろ村に広がって来ている気さえする。

明らかにおかしい・・


そんな俺の様子に話してた3人も気が付き、続いて村の異変に気が付いた。


「ガトラ、これは・・・」


尋ねてくるレビンにただ首を縦に振るだけで答える、少しでも村の様子を伺うために。


コルドが落ち着かなくなり、リアも訝しげに辺りを見つめ、レビンも剣の鍔を握った。


気が付けば辺りの大人はみんないない、騒ぎの方へ向かったようだ。ここは騒ぎの反対側のはずだ、なのに皆いないということは村のほぼ全員が騒ぎの鎮圧に向かったはずだ。


・・当然両親も。



皆その事実に辿りついたのか、浮足立ち始めた。


親が心配だ・・


だが大人が手を焼く相手に自分達が何かできるのか?


そんな葛藤を心の中で繰り返す。


しかし、いつまでもこうしてるわけにいかない。何か起きているなら、早急に行動する必要がある。


とりあえず、皆に話して森に隠れる事にした。子供の自分達が行っても大して役にたたないはずだ。ならば、大人を信じて待つほかない。


みんな親への心配を隠すことは出来ないが一応納得してくれた。


ならばいそげと森にむかい走り出そうとした時近くの家へと人が飛んできた。



「父ちゃん!!」



レビンが駆け寄る。そう、それはレビンの父親だった。俺もよく知る彼の顔にはしかし、青い痣が出来ていた。



まとまりかけていた思考が一気に崩壊する。

どうしてだ!!レビンの父親は村でも特に体格がよく腕っぷしの強さで有名だった。

村の誰にも負けた事がないというほど。




その彼が満身創痍で倒れている。しかも、騒ぎは時間がたったとはいえ村の反対側まで来るにはまだ早いはずだ。さすがに近くで戦闘音がすれば、そんな所には長くいない。



つまり、大の大人がかなりの距離飛ばされて来た事になる。どれだけの力があればそれが可能になるのか、想像もつかなかった。



リアが回復魔法で傷を治していると・・


「お、お前達、森に行ったんじゃ無かったのか!?速く4人で逃げろ!いいか、今すぐだ!4人で絶対生き残れ!」



焦った声でレビンの父親が叫んだ



「無理だ!こんな父ちゃん残しておけない、一体何があったのさ」



事情を聞こうとするレビン。リアとコルドが必死に治療して他の事に気が回らない中、俺は何か気にかかった。だからだろうか、建物影から現れた人影にいち早く見つけることができた。


足音も何もしない。



そこにいたのは見たことも無いような、美しい人であった。


黒い髪の毛は腰にかかろうとするほど伸びているが、決して鬱陶しくは感じない。むしろその深さに目が吸い込まれる。顔はどこか子供らしさが漂うものの、とても整っている。



神秘的で清らかな美しい人であった。



だがその光の宿って無い目には背筋が凍った。一体何があればそんな目になるのか、そんな底が見えない程、深く暗い目であった。



その目がレビンの父親を助けようと必死のこちらに向けられる。



彼女は破顔してこう言った。



「よかったー、まだ生きてる子がいたよー」



そう言う顔は先程とはかけ離れて、ただ不気味なものであった。

いよいよ話しが動き始めました。

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