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メルヘンキングダム

僕は、仕事をいくつか持っている。

ひとつは、普通に高校生。

一応、学生にとって、勉強は仕事だ。

もう一つは、店というか、相談所というか・・・。

親がやっている仕事の手伝いである。

その名もメルヘン取扱い事務所。通称メルヘンキングダム。

どこが事務所なのかもよくわからないし、主な仕事内容は、って聞かれてもいまいち把握してないのだけど、基本は物販・喫茶店みたいな感じである。

メルヘンの名に恥じない、メルヘンメルヘンした店内と、メルヘンメルヘンした品ぞろえが売りである。

ついでに店員の服装もメルヘンメルヘンしていて、悲しいことに店員の頭もメルヘンメルヘンしている。

両親はいつも海外での取引があるとかなんとかで、あんまりかえって来ないので、僕ら兄弟で基本は運営されている。

まあ、普段はそれで問題もないんだけど、たまにちょっと困ることもある。

いつもはすき過ぎはしないけどそんなに混んでない店内に人が大勢入ってきたりとか、事務所の名に恥じない仕事が舞い込んだりとか。

これは、仕方ない。

でも、こういうのは、ちょっと困る。

僕の目の前にはこれが世間一般において修羅場とよぶのではないか、というような戦いの真っ最中である。姉VS妹。早朝から響き渡る怒声。実に恐ろしい情景だ。

「いーい?わたしは言ったでしょ?まーくんはクリスマス衣装をつくるのに忙しいって」

ロングの黒髪に真っ白な肌が特徴的。世間一般の基準で癪ながら間違いなく美人の枠にはいる。

大和撫子と評されることの多いこの人は神林梓。僕の姉である。見ての通り、残念な人である。

大学2年になったというのに、残念ぶりは全く解消される見込みがない。

「はあ?だーかーらー!そのデザインが気に食わないっていってるのよ!クリスマスはミニスカサンタ、その決めつけは甘いの!」

こちらで叫んでいるのはわが不肖の妹、神林楓。

こちらも見てくれは一級品。見てくれと、ショートの髪型でも表現されている元気だけが取り柄・・・という認識でたぶん間違っていない。

僕はひとつ溜息をついた。

たぶんもうしばらくは終わらない。

「雅紀。とめないの?」

傍らにいつのまにかきていた少女がちらりと僕を見上げてきた。

我が家の居候系プリンセス。うちの高校のマドンナ。

銀髪に青い目の神級の麗しの姫君こと、姫川彼方。

つい二日前にやってきた、我が家のニューフェイスである。

「・・・ん・・まあ、止まらなそうだし・・」

「そう。頑張ってね」

極上の笑顔を浮かべると、ひらりと手を振って去っていってしまった。

なんというか、謎の多い人である。

この二日間で分かったのは、よく知らないから、っていうのが理由にならないくらいにはもともと変わっているような・・・。

「さてと」

わざわざ声に出して自分を鼓舞して、そして姉妹喧嘩に向き直る。

まずは、あれを止める。

さもさくばちょっと学校には行けなそうだ。

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