最終話
おっぱい消失騒動の翌日、俺は元勇者に色々と女神のことを聞いた。
それによると、まゆみを呼び寄せた女神は魔王に封印され動けないようである。
魔王の居場所は女神特製ガイドブックに載っていたので、早速俺たちは魔王討伐にいったのであった。
というわけで、魔王城の前へ来たのだが中世的なこの世界観ではどう考えても作れないような巨大な城が建っていた
「でかいな、これ…」
「さすが、魔王城というだけありますわね」
「これを登らないといけないのか、疲れそうだな」
「そうでしょうね。罠などもあるでしょうし、大変そうですわね」
「なんか、やる気が無くなってきたんだが、帰ってもいいか?」
「ここまで来たんですし、こういうものだと諦めてくださいまし」
うーん、とは言え、何とかならないだろうか。
俺のスワップスキルは直接視認できてないと使えないし、そもそもこの状況では役に立たないか…。
ふむ、まてよ、まゆみからもらった『マスターシーフ』スキルならもしかしたらいけるかもか。
「ちょっと試してみたいことがあるんだがいいか?」
「何を試すつもりですの?」
「まゆみからもらった『マスターシーフ』スキルなんだが、これって1日1度だけなんでも盗めるスキルなんだ」
「ええ、知ってますわ」
「で、発動条件なんだが盗む相手に触っているか、盗むものに触ってればいいみたいなんだ」
「ええ、そうですわね」
「つまり、魔王城に触っている状態であれば魔王城を魔王から盗むことが出来るんじゃないかと思うんだ」
「なんとも大胆な発想ですわね。ですが、盗んだ魔王城はどうなってしまうんでしょう?」
「やってみないとわからないが、アイテムボックスに収納できるんじゃないのかな?よし、とにかくやってみよう」
早速俺は、魔王城の壁をさわり『マスターシーフ』スキルを発動させた。
すると、魔王城が合成映像のごとく下から徐々に消えていった。
そして、しばらくすると、魔王城は完全に消えアイテムボックスを覗くと「魔王城×1」という表記が出ていたのでどうやら成功したようである。
「まさか、本当に魔王城を消してしまうとは…」
「よし、ジャマな魔王城も消えたし魔王の捜索をするか」
「あ、はい」
しばらく魔王城跡をうろついていると、地面で寝ている魔族らしき女性を発見した。
ゲームやアニメで出てくるような、悪の幹部や魔王さま的な露出の高い格好をしていたので、まずこいつが魔王で間違いないだろう。
「おーい、起きろ~。こんなところで寝てると風邪引くぞ~」
「うるさいっ!我を起こすのは誰じゃ!って本当にお前誰じゃ?というか、ここどこじゃ?我が魔王城で寝ていたはずなのに…」
「ああ、魔王城なら俺が盗っちゃったぞ」
「盗っちゃったってどういうことじゃ?」
「だから、俺が盗っちゃって、今はアイテムボックスの中に入れてあるぞ」
「な、なんと、大胆不敵な」
「そうだ、一応確認したいのだが、お前が魔王か?」
「いかにもそうだが」
「よし、魔王、城を返して欲しければ、俺と勝負して勝ってみせろ」
「望むところだ、勇者!」
こうして、魔王城を賭けて魔王との最終決戦が始まった。
そして、1分で決着がついた。
まあ、みんなが予想している通り、いつも通りに『スワップ-パラメータLv2』で弱体化させたところを勇者に拘束呪文をかけてもらい、すぐに決着がついてしまった。
そして今、魔王であるグラマナスな女性が、露出の高い服で、拘束呪文により全身を縄のようなもので縛られていて、ちょっと危ない感じの絵面になっている
「くそ、勇者の力がこれほどまでとは…」
「さあて、どうするかだな」
本来なら人類の敵である魔王は殺してしまうのがいいのだろうが、この魔王は即位したばかりで人間への侵略戦争も起こしていなく、被害も出てないので殺してしまっていいのか少々悩みどころである。
女神の封印についても詳しく聞きたいところだし、生かしておくべきか。
「とりあえず、弱体化してみるか」
俺は、『スワップ-ステータスLv2』を発動させ俺のレベルと魔王のレベルを交換してみた。
すると、魔王から強大な力が流れ込んできた
「ち、力が抜ける。貴様、何をした!今すぐ止めるんじゃ!」
うろたえる魔王をよそに、魔王から俺への力の流出は続いた
そしてレベルの交換が完了し、俺のレベルがLv1000になったころ、魔王のいたところには涙目の幼女が座っていた。
どうやら魔族はレベルによって姿が変化するらしく、Lv30にまで下げられてしまった魔王は幼女の姿になってしまったらしい。
「うぅ…、貴様、魔王城を奪い取り、王としての能力まで奪い取り、どうしてくれるんじゃ!責任はどう取るつもりなんじゃ!」
そんなヤリ捨てしたみたいな発言をされても困るのだが…。
とは言え、元魔王だしその辺に放置するわけにもいかないか。
「よし、じゃあ家で飼ってやるよ。3食昼寝付きを保証してやるよ」
「わーい、なのじゃ」
とういわけで、元魔王は責任持って家で飼うことになりました。
というか、元魔王はそれでいいのだろうか。
もしかしたら、元魔王は結構残念な子だったのかもしれない。
あんだけ広い魔王城で部下もいなかったみたいだしな。
「それはそうと、元魔王、女神はどこに封印したんだ?」
「ああ、あの小娘ならあそこの北の山の麓の祠に封印したぞ」
というわけで、俺達は早速女神の封印をとくために祠へと向かった。
女神が封印されているという祠へ行き封印の結界を解くと、そこにはドアがあった。
しかも、インターフォン付きのマンションにあるようなドアだ。
なんで、ファンタジーな異世界にこんな生活臭のあるものがあるんだ…
そう思いつつ、インターフォンを押すと、ジャージ姿の女性が出てきた。
かろうじて後光のようなものがジャージの後ろから見えるが、どう見ても引きこもりな20代前半の日本人にしか見えない。
「は~い」
「えっと、女神さんのお宅でしょうか?」
「あ、は~い、そうですよ~。もしかして、Amaz●nからの荷物ですか~?今印鑑持ってくるので待っててくださいね~」
「いや、俺、宅急便の業者とかじゃないですからね。というか、あんた本当に女神なんですか?どう見ても、ひきこもりのニートにしか見えないんですけど」
「失礼ですね~。私こう見えても女神さまなんですからね~。それに住み込みで働いているからニートじゃないですよ~」
「えっと、住み込みで働いているって、もしかして仕事で女神をやってるの?」
「そうですよ~。『月給100万、未経験歓迎、住み込み』の求人に募集したら受かっちゃったんですよ~。」
「ほうほう」
「最初はちょっっと戸惑っちゃったけど、女神なんてやる仕事ほとんどないし、こうやって引きこもって通販しながら生活できるから最高だったのよね~」
「へぇ~…」
「魔王ちゃんにドア封印されて宅配業者が入れなくなった時はヤバイ!って思ったけど、こうやって、勇者ちゃんが助けに来てくれて助かったよ~」
「てことは、もしかして、勇者呼んだ理由って通販できなくなったからとかなのか?」
「そうだよ~。食べ物の生成とか地上への干渉とかは部屋でも出来るんだけど、通販だけはドアが使えないといけないから、暇で暇で困ってたのよ~ありがとうね~」
「ちなみに、勇者以外にも1人に男性をこの世界に呼んでいたともうのだが覚えているか?」
「え~と~。あ、もしかしてアレかな~。勇者呼ぼうと思って儀式してて、途中で眠くなっちゃって失敗しちゃったんだよね~。もしかしたら、その時に誰かが呼ばれてたのかもね~」
「って、寝落ちかよ!」
「うわっ、急にどうしたの~?あ、もしかしてその時に呼ばれたのが君か~。ごめんね~。てへぺろ♪」
「なあ、エリザベス」
「なんでしょう」
「時には神様を殴っていい時もあるよな」
「ええ、ていうか、私にはあの人が神様には思えませんし好きにしていいんじゃないでしょうか」
「そうだな、まずあいつが神様ってとこが間違ってるよな」
そう言って、俺は『スキル-ステータス』を発動させ、俺の種族「人間」と女神様の種族「神族」を交換した
「あれ~。あなたもしかして何かしましたか?急に力が抜けた気がしたんですが~。」
すると、電話のコール音のような音が鳴り出した。
あ、ちょっと待って下さいね、電話出ますね~
そう言って、女神的な人は電話を取りに行ってしまった。
「あ、はい、女神です。ご無沙汰しております。えっと、今日はどういうご用件で…。って私クビですか!?え、神様の力がなくなってるからって…、あホントだ~確かに無くなってますね~。どうしましょ~。え、今月中にここ退去ですか~。私、元の世界に戻されてもいくところ無いんですけど~。そんな~。え、そこにいる男の人と話がしたいんですか~?わかりました~。」
受話器を持ってこちらへ向かってくる女神
「上司の人が、あなたとしゃべりたいようなので、どうぞ~」
「はい、代わりました、セイヤです」
「どうも、こちら創造神です。いきなりでアレなんだけど、セイヤくん、もしかして女神ちゃんの神としての力奪っちゃった?」
「はい、でも返すつもりは無いですよ。自業自得のようなものですし」
「まあ、それはいいや。天然で女神ちゃんかわいいんだけど、あんま仕事やってくれなかったしね。」
仕事やることがないって言ってたけど、単にやってなかっただけなのか、あいつ。
「ところで、セイヤくん、君神様やってくれない?」
「俺も性格なので、きちんと仕事するかわかりませんよ?」
「大丈夫大丈夫、基本週1くらいで働いてくれて、魔王復活とか異常事態の時だけ対応してくれればいいから楽な仕事だよ?」
「え、それだけでいいんですか?ていうか、女神さんはそれすらしてなかったんですか?」
「そうだね~、あの子の場合、海外ドラマ10シーズン徹夜で見ている間に魔王に封印されちゃったからね。そういうことさえ注意してくれれば大丈夫だよ。」
10シーズンって一体、何徹するつもりだったんだよ。色々と残念すぎるな…。
「てことでやってくれるかな?」
「いいともー」
こうして、俺は異世界の神となった
まあ、神になったからといって特に大きく変わること無くエリザベスとイチャイチャ生活を送っている。
飽きっぽい俺がいつまでがいつまで神様なんてやるかはわからないが、飽きるまではやってみようと思う。
そして、飽きたら適当に誰かに押し付けよう。
これが俺のスキルの本質であり、俺自身の本質なのだから。
(完)