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第4話

 ベベの騒動から後も、俺達は相変わらずゴーレム狩りを続けていた。

 いい加減、飽きてきた気もするのだが、まともに戦うよりゴーレム狩っている方が楽にレベル上げできるのだからしょうがない。


 とは言え、それだけでは腕が鈍ってしまうということで、3日に1回くらいは普通のダンジョンに潜るようにしている。

 普通のダンジョンでは俺は戦力にならないので、2人と一緒に前衛に出て避ける練習をしつつ、攻撃は二人に任せている状態である。

 素のパラメータは相変わらずの平均以下だったが、あの騒動の後、べべからマジックストーンのお礼として俺専用の守備力・俊敏力アップのブレスレットを作ってもらったので、前衛に出ても何とか死なずに済んでいる感じだ。


 そんな感じで順調に修行も進んでいて、レベルも23になっていた。

 レベル20で覚えたスキルは『スワップ-ステータスLv1』というスキルで、ステータス(年齢や性別など)を交換できるようだ。

 『スワップーパラメータ』の時とは違い、永続的に効果は続いてくれるようである。


 エリザベスやナターシャはというと、彼女たちもゴーレム狩りでレベルアップをしていた。

 単に『スワップーパラメータ』を使うだけの俺とは違い、彼女たちはとどめを刺す際に、色々なスキルを使っているので、そのスキルのレベルも上がっているようである。

 俺も少しは強くなったかな~と思ってパラメータを確認したら、むしろ差が開いていた感じなので、俺のヒモ脱却は当面先になりそうである。


 そんな頼もしい彼女たちであるが、今日はベベのところで女子会をしているらしい。

まあ、酒好きのベベとナターシャがいる段階で女子会というよりは宴会になっていると思われるが、楽しみにしてたのでいいだろう。

 俺はというと、大人ぶってたまには一人で飲もうと思い、落ち着いたバーで飲んでいたものの、何か寂しくなってきて、女の子のいるお店でも探そうとさまよっていたところである。


 ふと、路地の角を曲がると、そこは狭い路地裏で10代に見えるエルフの女性と、中年にさしかかろうとする年齢の人間の女性が喧嘩していた。

 いや、喧嘩ではなく、エルフの女性が一方的に怒鳴りつけているというのが正解か。

 人間の女性の方はエルフの女性のことが怖いのか、嵐が過ぎ去るのを待つかのようにじっと話を聞いている感じだった


「おい、そこの二人、道の真中でそんなことされてるとジャマなんだよ」


「はぁ?それはもしかして、わたくしに言ってるんですの?」


「ああ、そうだ。厳密にはお前ら2人にだがな。」


「お前らとか一緒にまとめないでもらえます?わたくしはあなたみたいな下等種族の人間とはちがう高貴なるエルフですのよ。それを知ってての発言かしら?」


「エルフだ、人間だ関係ないだろ。とにかくジャマなんだ、どけよ。」


「そんな言い方で言われたら意地でもどくわけには行きませんわ。あなたにはエルフをバカにしたことを後悔させてあげますわよ。」


「はいはい、そう言われても俺はここを通りたいんだ、悪いが通らせてもらうよ。」


 俺はそう言ってエルフの肩に手を載せエルフを押しのけて無理やり道を通ろうとした。


「だから、わたくしのことを無視しなさらないでくださいます。『ウォーターパレット』!」


 エルフは呪文を唱え、水の弾丸を俺に飛ばしてきた。


「おいおい、危ないな。てか勝手に戦闘始めるなよな」


「うるさいですわ、勝手に無視して通ろうとするあなたが悪いのですわ。わたくし、エリフィード・サン・ミレンはあなたに決闘を申し込みますわ。」


「決闘?」


「そう、決闘ですわ。わたくしが勝った暁にはエルフの素晴らしさをその身に存分にわからせてあげますわ」


「そうか、じゃあ、俺が勝ったらお前のことを好きにしてもいいか?」


「あなたが勝つことなんて万が一にも無いでしょうが、いいでしょう。勝ったらこの身を自由にさせてあげてもいいでしょう」


「じゃあ、始めるか」


「ええ、では、早速いきますわよ、『ウォーターウォール』!…ってあれ何も起きませんわ、あれ、『ウォーターウォール』!『ウォーターウォール』!、ええい、『ウォーターパレット』!」


 『ウォーターウォール』の呪文を発動させようとするも、発動しなくて混乱するエルフ。『ウォーターパレット』はギリギリ発動したようだが、魔力切れだったからか水の弾丸を空に作るところで止まってしまい、そのまま水は地面へと落ちてしまった。

 MP切れの反動からか、エルフ頭を抱え座り込んでしまった。


「くっ、この頭痛はもしかして、これがうわさに聞くMP切れですの。何でわたくしのMPが0になってしまっていますの?ハッ、まさかあなたの仕業ですか。卑怯な真似をしてくださいまして。」


 そう、正解、俺の仕業だ。

 エルフがこちらへ突っかかってきた段階で俺はエルフのパラメータを確認し、MPが豊富な一方で力がひ弱な魔法使い型であること知っていたので、エルフの肩をさわった時に、俺の僅かばかりのMPとエルフの豊富なMPを交換しておいたのだ。

 それゆえ、エルフのMPはほんの少ししかなく、最初のウォーターパレットを撃った段階でほとんど0に近い状態になっていたのだった。


「卑怯だかなんだか知らないが、決闘の決着はつけさせていただくぜ」


 俺はアイテムボックスからできるだけ見た目が派手な剣をとりだし、エルフの方へ近づいていった。


「ヒッ、わ、わかりましたはわたくしの負けですわ。だから、どうかその剣で斬りつけるのだけはやめてくださいませ」


「じゃあ、約束通りお前の体を自由にいじらせてもらおうか」


「くっ…」


 エルフの女性は何とか逃げ出そうと視線を動かしているのがまるわかりだが、MP切れでふらついている様子を見るに大丈夫だろう。


「そういや、そこのお前、なんでこんなエルフに絡まれてたんだ?」


「それは…。わたしエルフみたいに若々しい長命種の方々が羨ましいんです。化粧や美容法を頑張っても限度はありますし、こういう仕事をしてるとどうしても年齢を感じてしまうんです。だから、エルフの人とか見かけると羨ましいなと思ってつい見てしまうのですが、そこのエルフの方はそれが気に食わなかったらしく説教されてました」


「そりゃ、あんなにジロジロ見られたらわたくしだって、文句も言いたくなるわよ。しかも、見てるのが人間の娼婦ですわよ。汚らわしいといったらありはしませんわ。」


 なるほど、思ったよりもしょうもない理由で喧嘩をしていたようだ。

 しかし、まあエルフの若々しい姿に憧れるというのもわからなくはない。よし、こいつの罰ゲームはこれにするか。


「よし、そこのエルフ罰ゲーム決めたぞ」


「ヒッ、や、やめてくださいませ」


 何か恐ろしいことをさせられるのではないかと身構え、縮こまるエルフを無理やり引っ張り、人間の女性のところまで連れてきた。

 そして、俺は両方の女性の腕を掴み『スワップ-ステータスLv1』を発動させた。

 次の瞬間薄暗い路地が眩しく照らされ、光が収まるとそこには10代前半にしか見えないようなエルフの女性の姿と、中年過ぎの人間の女性の姿があった。


 「あれ、あなた誰…?」「あなたこそ、誰ですの?」


 すると、娼婦だった女は仕事用のバッグから手鏡を取り出し自分の顔を覗きこんだ。


「っ!やっぱり、わたし若返ってる!わたしエルフになって若返ってるわ」


「な、なんですの、あなたが先ほどの人間だというのですの?」


「ええ、そうよ、そして、今のあなたがこれ。人間の中年女性、ババァよ。」


そう言って、娼婦だった女は手鏡をエルフへと向けた


「う、うそですわ。何かの間違いですわ。わたくしは生まれも育ちも高潔なるエルフ種ですわよ。こんな下等種族がわたくしなんてありえませんわ」


「いや、間違いじゃないよ。俺の能力で二人の種族を交換してあげたんだよ。だから、君は生まれや育ちはエルフだったかもしれないけど、今は人間なんだよ。元エルフさん」


「いやぁァァァ」


 絶叫し泣き崩れる元エルフの女性。

 いつまでもここにいてもしょうがないと思い、俺はこの場を立ち去ることにした。


「待って、私をエルフにしてくれてありがとう、通りすがりのお兄さん。」


「俺はただ、いちゃもんを付けられたウサ晴らしをしただけさ」


「ねえ、お兄さん。良かったらあたしの店に来ない?サービスするわよ」


「悪いが、俺はロリコンじゃないんでな」


「私お兄さんより年上だから大丈夫だよね♪」


「そういう問題じゃなくて、見た目がな…」


「ねえ、ダメ…?」


 そう言うと、エルフの女の子は首をかしげ、おねだりのポーズをしてきた。

 そこには、子供には出せない大人の色気とエロ気が混じっていて、不意にも俺はドキリとしてしまった。


「はぁ、しょうがない。相手してやるよ。その代わり痛くても知らないからな」


「大丈夫だよ♪わたしこう見えても経験豊富なんだからね~」


こうして、二人は店の中へと消えていったのだった。


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