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第1話

 みなさんはじめまして、こんにちは、奴隷のセイヤです。

 プロローグではテンパってましたが、二度寝したら落ち着きました。


 落ち着いてわかったこととして、俺今奴隷みたいです。

 どうやら二度寝している間におじさんに拾われて、奴隷にされちゃってたみたいです。やばいです。


 しかも、俺の値札には「雑用・性奴隷」ってて書いてあります。

 まじやばいです。

 美人のご主人様とかならまだいいけど、行き遅れたおばさんの性処理とか、油ギッシュなおじさんの性処理とかマジ勘弁して欲しいです。


 やばい状況ですが、1つだけ希望があるようです。いわゆるチートです。

 異世界トリップもの恒例のトリップ特典で強い能力がもらえるアレです。

 となりにいた奴隷仲間に聞いたのですが、この世界では『メニューオープン』と念じるとメニューコマンドを開くことができ、そこで自分のステータスなどを確認できるようです。


 ちなみに、おれのステータスはこうなっていました。

=========================

名前:セイヤ

==========社会的地位==========

 【男性】,【奴隷】,【外国人】,(【異世界人】)

========== ステータス =========

性別:男性

年齢:20才

種族:人間

Lv:1

========== パラメータ =========

HP:60

MP:5

力 :30

防御:40

魔力:5

回避:40

※20才男性平均を100とする

=========== スキル ==========

算術Lv2

========== 隠しスキル =========

異世界自動翻訳LvMax

経験値アップLv5(経験値10倍)

閲覧LvMax

注釈LvMax

スワップ-ポジションLv1

=========================


 うん、パラメータだけみると俺雑魚すぎだろ…。隠しスキルをつけてくれたのはありがたいが、パラメータも頑張って欲しかったと苦言を呈したい。

 経験値アップの隠しスキルもついてはいるが、基礎パラメータがこれだけ低いとレベルが上げても焼け石に水の可能性もある。

 最も、苦言を呈するのであればまずは望んでもないのに異世界トリップさせられたところから文句を言いたいところだが。


 とは言え、さすがに説明もなしにトリップさせるのはまずいと考えたのか、注釈というスキルは覚えていた。

 これはスキルやこの世界の常識について気になったことがあれば、それにかんする注釈説明をもらえるというものである。


 この注釈によると、『スワップ-ポジションLv1』というのは一発逆転を狙える面白そうなスキルであった。

 その効果とは、『自分と相手の社会的地位を交換する』というものである。

 つまり、今俺は奴隷なわけだが、目の前の奴隷商人と立場の交換をすれば、あいつが奴隷になり俺が奴隷商人となれるわけだ。


 とっとと、誰かと奴隷ポジを交換して自由の身になりたいところだが、ここは慎重に行かなければならない。

 というのも、スキルの使用には制限があり今のところは自分で解除することが出来ないし、また上書きして交換することも出来ないようだ。

 RPG風な世界観のようなので、レベルが上がり『スワップ-ポジション』のレベルが2に上がれば上書きや解除もできるかもしれないが、今のところは無理なようである。


 なので、仮に奴隷商人の地位になってしまうと、一生戦闘をせず『スワップ-ポジション』のレベルも1のままになってしまうかもしれない。

 職差別をするわけではないが、せっかくRPG的な世界観にきたので冒険者になりたいところだ。


 そんなことを考えている間に、ドアが開く音がした。どうやら客が来たようだ。


「いらっしゃいませ、お客様。今日のご用件はいかがでしょうか?」


「Cランク昇格しましたので、雑用奴隷でも買おうかと思ってたところですわ」


「冒険者向けの雑用奴隷ですか、でしたら、こちらなんてはいかがでしょうか」


 奴隷商人はそういって、冒険者の女性を俺のいる檻の前へと連れてきた。

 冒険者の女性というと、職業柄荒っぽい女性が多いのかと思っていたが、目の前の女性は気は強そうなものの、いいところのお嬢様のような気品の良さを隠し持っていた。

 そして、俺はそんな気丈さと気品を兼ね備えた美しさに見とれてしまっていた。


「そうね、身なりがマシなのはいいけど、貧弱なのがちょっとね。あと、なんか視線がキモいのがね」


 おいおい、それって身なり以外は全部ダメってことかよ。ていうか、視線がキモってなんだよ。

 冷静になり、俺は『閲覧』スキルを使い、冒険者の女性の情報を見た。


=========================

名前:エリザベス

==========社会的地位==========

 女性,Cランク冒険者,没落貴族

=========================


 なるほど、没落貴族か。

 それで冒険者なのにあの気品があるわけだ。

 どうせ誰かに買われるならこんなきれいな女性のほうがいいとは思うが、ただあの言い方 からして俺を買れる可能性は低そうだし、そもそもこんな高飛車なやつに使えるのもなんかシャクだ。


 ドクン。


 そうだ、スキルを使えばいいじゃないか。立場を交換してあいつを奴隷にして、俺がアイツを買えばいいんじゃないか。

 そうすれば、アイツに従う必要なんて無いし、あの体を好きにできる。


ドクン、ドクン。


 いや、でも、見ず知らずのやつから地位を奪い取り奴隷にするのはいいんだろうか?

 アイツだって、没落貴族で苦労して冒険者やってここまできてるのに、それを奪い去っていいのだろうか。


 ドクン、ドクン、ドクン。


 そんなの言い出しだら、俺も同じか。

 普通に生きてたのに急に異世界に放り出されて奴隷にされてるんだもんな。

 誰が悪いと言い出したら、この世界に呼んだ奴が悪い、俺は悪くない。


ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。


 それに、あんなプライドの高そうな女をこういう形で従えるのはそそるものがあるな…!


 その時、俺の中のSが開花した。


 再び冒険者の女性がこちらへと戻ってきた。

 どうやら、これが最後のチャンスのようである。


「お嬢様、どうかわたくしめを・・・!」


 俺はできるだけ情けない声を出し、そうやって、冒険者の女性の手をにぎった。


「ちょ、離しなさいよ、アンタ」


 手を振り払われそうになるが、すぐに心のなかでこうつぶやいた。


(『スワップ-ポジションLv1』 俺の【奴隷】とあいつの【Cランク冒険者】を交換)


 その瞬間、目の前が真っ白になった。

 視界が戻ると、俺は檻の前にいて、檻の中にはさっきまで冒険者だった女性の姿があった。

 服も彼女の服は奴隷の着るような服になっていて、俺の服はさっきまで彼女が着ていたような冒険者らしい服装になっていて、俺の手には奴隷を買うために用意したのであろう金の袋が握られていた。


 冒険者だった女性は急に檻に入れられてパニックになり、なにか叫んでいた。


「ちょい、いまアンタなにしたのよ。なんであたしが織りの中にいるのよ。幻惑呪文か何か?今すぐココから・・・・」


 しかし、その声は続かなかった。


「こらっ、命令:しばらくだまりなさい。すいませんね、お客さん。急に奴隷が騒ぎ出しちゃって。」


「いえいえ、それだけいきがいいってことですし、大丈夫ですよ」


 この世界の奴隷には自由権は存在しない。首輪の魔法により奴隷は主人から命令されると強制的に順守されるのだ。

 ふと見ると、彼女の顔はさっきとは打って変わって真っ青になっている。それもそうだろう。

 命令されて喋れなくなったということは自らが奴隷になってしまったという証拠である。


「では、この子をいただけないでしょうか?」


「お客さん、本当にいいんですか?こう言っちゃあなんですが、この子今混乱してて危ない感じですが」


「いいですよ、どのみち奴隷契約しているなら逆らえないですしね」


「それもそうですな」


「では、これでお代は足りますか」


「ええ、毎度ありです」


 そういい、金袋の金貨を数え、お釣りを差し出す奴隷商人。なんとなくお釣りをごまかされているような気もしたが、こちらの通貨単位がわからない以上口を出すのはやめておこう。

 元々俺が稼いだお金でもないしな。


「では、準備させますので、しばしお待ちを。」


 そう言って、奴隷商人は元冒険者の女性に対して出荷用の着替えるように命じた。

 いくら冒険者という荒っぽい仕事をしているとはいえ、こうやって男性の前で裸になり着替えるの恥ずかしいのであろう。

 羞恥と屈辱の感情が交じり合ったなんとも言えない表情で、淡々と着替えている。

 正直、これを見れるだけで全財産を払ってもいいような公開ストリップショーだった気がする。

 これを毎日見られるというのであるから、期待が高まらざるをえない。


「こちらにサインをお願いします」


 そう言って、奴隷商人は契約書を差し出してきた。

 中身は「奴隷『エリザベス』を譲渡する」という内容であり、具体的に奴隷に下すことにできる命令、出来ない命令などが事細かに書かれていた。


 概要だけその場で説明してもらったのだが、基本的な生存権(衣食住や睡眠時間など)を保証しないといけないことや、極端に危険なことをさせてはいけないといったことだった。

まあ、細かいことは帰ってから読めば大丈夫だろう。


「俺の名前はセイヤ、よろしくね、エリザベス、いやこれからはベスって呼ぼうか。」

「よ、よろしくお願いします、ご主人様」


 どうやら、奴隷の首輪の魔力で喋らされているらしく、ぎこちなくしゃべるエリザベス。

 下手なことをここで喋られてもまずいので、念には念を入れておくか。


「じゃあ、最初の命令をあげるね。宿へ帰るまでは俺の質問に答える時しかしゃべらないこと。その時も大きな声は出さないこと。あと、俺の近くから離れないこと。OK?」

「はい、わかりましたご主人様」


 そう言うと、いやいやひきつった顔でピタリ横へついてくるエリザベス。

 そこまで近づけと言ったつもりではないのだが、顔さえ見なければ可愛いしこれはこれでいいか。


「あと、ベス顔はもっとリラックスね。そんな嫌そうな顔して街を歩いてたらボクが変な人に見られちゃうよ」


 お前へは変態だろう と言いたげな表情を一瞬みせたエリザベスであったが奴隷魔法の効果か、すぐにすました顔になった


「では、宿へ行こうか」


「はい」


「お買い上げありがとうございました。またのご利用お待ちしております」


 商売人の定型句に見送られ、俺達は店を後にした。




 店を出て俺がまずしたことといえば情報収集だった


「ベス、今からする俺の質問に答えて欲しいんだけど、俺ってこの世界の常識が無いから、常識的なことでもきちんと答えてね」


「はい、わかりましたご主人様」


 俺は、エリザベスが宿をとっていたかと、俺が宿をとっている可能性がないかを確認した。

 立場を交換をすると、その立場に合わせて所持品や所持金も適宜交換されるようであったが、エリザベスは昨日この街に来たばかりで今日の宿はまだ取っていないようであった。


 俺が宿の札を持ってない様子からも宿はまだ取っていないようであったので、2人1室で泊まれる防音性の高そうな宿を探すことにした。

 防音性の高そうな宿にしたのは、決してやましいことをする目的ではなく他の人には聞かれたくない話をするからである。

 まあ、一番の目的でないだけでやましいこともするつもりだが。


 宿を決め、女将さんには食事は自分で取りに行くといい部屋に入った。


「よし、ベス。大きな声は出しちゃダメだけど、自由に喋っていいぞ」


「ふぅ、やっと自由に喋れるようになった。ってアンタ一体何してくれたのよ。なんで奴隷のあんたがそんな格好で自由に歩いてて、私が奴隷させれらてるのよ。訴えるわよ!」


「どこにどう訴えるつもりかはわからないが、やめといたほうがいいぞ。俺は俺の【奴隷】という立場とお前の【Cランク冒険者】という立場を交換した。他の人から見たら、お前はCランク冒険者でも何でもない、ただの雑用・性奴隷だ」


「そ、そんなことないですわよ。現にわたくしにはCランクの冒険者カードだってありますし」


「冒険者カードってこれのことか?」


 そういって、俺はアイテムボックスの中から自分の冒険者カードを取り出した。そこには俺の名前、俺の顔写真が書かれ、Cランク冒険者であることを認めると書かれていた。


「嘘よ、それ私のカードよ。つい先週もらった私のカードよ。ちゃんとわたしの冒険者番号が書かれてるし。なんで、あんたの写真と名前が書かれているのよ」


「俺が立場を交換したっていうのは、あの場限りのことじゃないんだよ。俺やお前に係る全世界の記録や記憶を書き換えたってことなんだよ。今やCランク冒険者だったことを覚えているのはお前と俺のただ2人だけだぜ。それに、お前にだって【奴隷】としての記憶があるはずだぜ、思い出してみな。」


「嘘よ、だって私はお父様が亡くなってから頑張って冒険者になるための試験に合格して、依頼を一生懸命やって、やっとCランクになったのよ!冒険者になるためにギルドの試験を受けようとしたらハメられて、奴隷にされたとか、そんな記憶絶対嘘よ!こんなのただの悪夢よ!」


涙目でそう訴えかけるエリザベス。

少年マンガの主人公であればここで優しくなだめるのであろう。

しかし、俺は俺だ、そんな聖人君子になるつもりはない。


「残念ながら、今はその悪夢が現実だ。諦めて現実を受け止めろ。」


 そう耳元でささやくと、エリザベスは床へへたりと座り込み、泣き崩れたのだった。



 俺はエリザベスを部屋に残し、女将さんや他の客とのいる1階へと向かった。

 適当に雑談などをして時間をつぶした後、女将さんから夕食をもらい部屋へと戻った。

 部屋へ戻ると、エリザベスはすっかり泣き止んでいた。


「よし、きちんと泣き止んでいるようだな」


「ええ、泣いててもしょうがないし、少しずつでも現実を受け入れることにしたわ」


「それは、よかった。あんだけ泣いて腹も減っただろうし夕食にしようか」


 そういって、俺は食事の片方を机の上に、もう片方を床へと置いた。


「さあ、ベスはこっちだよ」


 俺は笑顔でそう言って、床の皿を指でさした


「あなた、何を言ってますの。わ、わたくしは人間ですのよ。わたくしもテーブルを使って食べますわ」


 そう言うと思い、俺はこう言った


「ベス、命令:夕飯を食べるかどうかは自由だけど、もし食べるならベスは床で食べること。スプーンやフォークを使うのも禁止ね。皿を持ち上げてもいいけど、床から20cm以上離しちゃダメだからね」


「そ、そんな。私に家畜みたいな食べ方をしろというのですか。私人間ですのよ!」


「でも、奴隷には必要なことなんだよ。これからベスには奴隷として色々と働いてもらわないといけないから、少しずつ慣れていかないとね。」


「そうかもしれませんが…。」


「じゃあ、俺は先に頂いちゃうね。ベスも冷めないうちに早く食べたほうがいいよ」


 そう言い放ち、苦悩や羞恥の入り混じった複雑な表情でご飯を見つめ悩んでいるエリザベスを横目に、俺は異世界初のまともな食事にありつくことにした。


 食事の味は可もなく不可もなくな味で、食の豊富な日本に慣れ親しんだ俺でも十分に満足できる味であった。

 この世界、中世ヨーロッパの生活水準のように見えたのだが、もしかしたら魔法のお陰でそれほど低くないのかもしれない。


 そんなことを考えつつエリザベスのことを眺めていると、どうやら覚悟を決めたらしくエリザベスも夕食を食べ始めたようだ

 お嬢様風なキャラのエリザベスが床に這いつくばって食べている姿は非常にそそるものがあると思った。


 俺がそんなふうに思ってたのに気づいたのか、


「なに、こちらをジロジロ見てらっしゃいますの。ご自分の夕食を食べ終えたのなら、ベッドでお休みになるなりなんなりすればいいんではないの。」


「俺は、ベスのご主人様だからね~。ベスがちゃんとご飯食べてるか確認するのもご主人様の役目だからね。」


「そんな役目果たさなくてもいいですわよ。」


「いやいや、奴隷の管理はご主人様の重要な役目だからね。ベスの食べてる様子はきっちり確認しないとね。」


 そんなふうにエリザベスをいじりつつ、エリザベスの恥ずかしがる様子をニヤニヤと眺めていた。


「ふぅ、やっと食べ終わりましたわ。」


「お疲れ様」


 慣れない食べ方だったからか、俺の2倍以上の時間をかけエリザベスも夕食を食べ終えた。


「本当に疲れましたわ。普通の食事を食べるのにこんなに苦労したのなんて初めてですわ。」


「よしよし、がんばったね、ベス。」


 そう言い、俺は奴隷首輪の後ろにあるボタンをコッソリ押しつつ、エリザベスの髪を優しくなでてあげた。


「ふぁあああ。って急に髪をなでないでください。ビックリしますわ。」


 エリザベスは一瞬表情をゆるませたものの、すぐさま顔を整えそう言って抗議してきた。

 しかし、赤く染まったその顔には確かに快楽を感じたあとがあった。


「奴隷が頑張った時には、なでなでして褒めてあげるのがご主人様の役目だからね。しょうがないだろ。」


「や、役目ならしょうがないですわね…。」


「あ、そうだ、夕飯も食べ終えたし、お皿を女将さんのところへ戻してくれるかな」


「わかりましたわ。」


 エリザベスは先ほどの快楽に戸惑っている様子を残しつつも、手際よくお皿をまとめ女将さんのところへ向かった。


(どうやら、奴隷首輪のご褒美ボタン機能を使った髪をなでなで作戦は成功みたいだな)


 奴隷首輪のご褒美ボタンというのは、その名の通りご褒美を与えるためのボタンであり、押すとリラックス効果があり気持ちいいらしい。

 ご褒美ボタンは奴隷には認知できないようになっているので、このボタンを使い、俺のなでなでが気持ちいいと錯覚させてうまく利用しようという作戦だ。


 エリザベスが部屋に戻ってきたところで、俺はさっそくこう切り出すことにした。


「夕飯も食べたし、俺のスキルの話とか、今後の話とかをしようか」


「私もそれは聞きたいところですわ。社会的地位を交換するスキルなんて聞いたことありませんし、使い方によってはすごく危険ですわよ。こんなスキルどうやって手に入れたのですの。」


「それについては1つずつ説明していこうと思う」


 俺は、別の世界から来たこと、なぜ、どうやってこの世界に来たのかわからないこと、『スワップ-ポジション』スキルで社会的地位を交換したことなどを説明した。


「なるほど、通りで常識がなさそうだったり旅慣れてない感じでしたのね。それにしても異世界人とは珍しいですね。もしかしたら、魔王復活の兆しありとの噂は本当なのかもしれませんわね。」


「珍しいってことは過去にはいたってことなのか。もしかして、過去に勇者として呼ばれた異世界人が魔王を倒したとかそういうことなのか?」


「ええ、少なくとも童話とかにある勇者の物語はそういったものが多いですわね。」


「ということは、異世界人であることは絶対にばれないように行動しなきゃマズイな」


「ですわね。異世界人であることがバレたら、勇者認定されて魔王討伐に向かわされるのでしょうしね。一蓮托生の身の私としてもそれはご勘弁いただきたいですわ」


「だよな、やっぱり。」


「これからのことだが、俺のレベルを上げることを優先してダンジョンに潜って行きたいと思う。」


「というと、初心者向けの1の洞窟あたりで戦いながらレベルを上げる感じかしら?」


「いや、3の洞窟あたりでお前に戦ってレベルを上げる予定だ」


「いわゆる、寄生レベリングというやつですわね…。寄生レベリングだと戦闘経験も身につきませんがそれでもいいですの?」


「ああ、俺がレベルを上げる理由は強くなることではないから問題ない」


「と言いますと?」


「一つにはギルドカード対策だ。俺の社会的地位はCランク冒険者となっているがレベルは1のまま不自然な状態だ。レベルの確認が必要なケースは多くはないが、いつ確認を求められるかわからないから、早めにレベルだけでもCランク相当に上げておきたいということだ。


もうひとつは、スキルのレベル上げについてだ。一般的にスキルは使うとレベルが上がるものが多いらしいが、スワップスキルは性質上何度も使うことが出来ない。なので、スワップスキルは俺自身のレベルに依存して上がるんじゃないかと思うんだ。パラメータに恵まれていない俺が成長するにはレベルアップでスキルを強化できたり、新たなスキルを覚えたりしたほうが早そうだしな」


「なるほど、そうですわね。ギルドカードの件については少なくともLv25程度にまで上げれば怪しまれずに済みそうですわね。スキルについては、本人のレベル依存でスキルのレベルが上がるものもたまにあるという話は聞きますし、その可能性が高そうですわね」


「というわけで、明日の朝、装備などを揃えたらさっそくダンジョンに行こうと思う。お金も稼がないと出しな。」


「そういえば、私の装備も無くなってしまったのですわね。アイテムボックスの中身も空ですわ…。奴隷だから当たり前ですけど。」


「いや、多分消えてはないぞ。俺のアイテムボックスの中にお前が使っていたと思われる装備やアイテムも残ってるぞ。」


そういい、俺はメニューを操作して、適当に武器や防具をいくつか出してみた。


「これですわ、これ。ああ、我が家宝のクリムゾンソード。もう二度と見ることが出来ないと思ってましたわ。それに、お父様に作っていただいた冒険服も残ってますわ。これなら何とかなりそうですわね」


「それは良かった、じゃあ、これらはお前が使ってくれ」


「え、いいですの?ご主人様優先で装備した方がいいのではありませんの?」


「いや、俺は戦力にならないだろうしいいよ。それよりも前線で戦うお前が使ったほうが有意義だろ」


「…そうですか。いえ、でも、この服はやっぱりご主人様が着てくださいな」


「え、それはお父さんがお前のために作ってくれたものだろ、お前が着ておいたほうがいいだろ」


「ですが、今の私は奴隷の身ですわ。私がこれを着てご主人様が普通の服を着ていたら釣り合いが取れませんわ。それに戦わないといってもご主人様にも攻撃が来るかもしれませんし、用心しておくに越したことないですわ。」


「そうか、気を使ってくれてありがとうな」


 そういって、俺はエリザベスの頭をぽんとなでた。

 エリザベスは、テレたのか恥ずかしそうに顔をうつむけた。


「まあ、明日のことはそれくらいにして、風呂にでも入ろうか。」


「そうですわね、せめてお風呂でゆったりしたい気分ですわ。」


「じゃあ、一緒に入ろうか」


「そ、そんなハレンチなこと出来ませんわ」


「何を想像したのか知らないが、せいぜい体を流してもらうくらいだぞ。奴隷なんだしそれくらいのことはしてもらうぞ。」


「うう、でも男の人に裸を見せるなんてふしだらですわ…」


「そんな気にするような仲でもないだろう。店で着替えるときに見ちゃったしな。」


「あれだって、すごく恥ずかしかったのですわよ!と、とにかくあんな狭い個室で裸で二人きりとか耐えられませんわ!」


「耐えられないのはいいが、俺と一緒に入らないなら風呂入るのは禁止だぞ。」


「ううっ、ですが…」


「じゃあこうしよう。もし俺と一緒に入るのなら、俺が出た後もお前一人で風呂に入っててもいいぞ」


「わかりましたわ、その条件なら一緒に入ってもいいですわよ。」


「よし、そうと決まればすぐに入ろう」


 美女と一緒のお風呂というシチュエーションにテンションも上がり俺は、ノリノリで部屋の風呂へと向かっていった。


「ふぅ」


 風呂から出た俺は一人窓から夜空を眺めていた。


「予想以上だったな…」


 間近で見たエリザベスの体は予想以上だった。

 冒険者であるエリザベスの体は引き締まってはいるものの、ファンタジー補正のおかげか筋肉しつになりすぎず美しかった。

 また、全体としては無駄な脂肪が少ないにもかかわらず胸の部分には無駄じゃない脂肪が実っていた。

 普段はサラシで抑えている隠れた果実を見れたので眼福であった。

 R-18にギリギリならないレベルの方法で体も洗ってもらえたし、大満足である。


 エリザベスの機嫌は若干不安だが、長風呂というご褒美も与えておいたし大丈夫だろう。

 この世界でも長風呂は女性の特権のようだし。


 それにしても、今日はもう疲れた。明日も早いし先に寝ておくか。

 俺はベッドへ横たわると同時に、深い眠りへとついていった。


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