(九)
風が制服の裾を舞い上げ、耳元で逆巻く。壁の無いフロアの縁に騎道は踏み出していた。
日没の残照が左手彼方、西の山々を縁取っている。
「見取ってやるよ。自分でケリをつけるんだな」
背後で凶悪な銃口が騎道の心臓を狙っている。
騎道の肩が揺れた。不遜なまでに笑いをこらえていた。
「僕を甘く見ないで下さい。自分で死を選ぶほど、柔じゃない。撃ちたければ撃てばいい。弾痕が僕の体に残っていても、秋津家の力なら簡単にもみ消せるでしょう?」
統磨は騎道の後頭部に銃口を押し当てた。ためらわず、予告無しに引き金を絞る。が、目を疑って眉を跳ね上げた。
トリガーが凍り付いたように動かない……!
「僕は悪運が強いんです。物騒な品物が効力を失うなんてことは、僕の周りではよくあります。それも、僕を狙った時に限っておきる。僕が使えば、正常に動くんですが」
「貴様っ……!」
一瞬だった。振り返りざまに、握られた拳銃ごと統磨の動きを封じた。そのまま不自然な方向に腕を捩じ上げ、統磨の指から銃は転げ落ちた。
反撃はここまでだった。騎道の受けたダメージは見た目以上のものだった。統磨は封じられた腕の痛みに声を上げながらも、逆に体ごと踏み込み、騎道が庇う右肩をコンクリート柱に打ち付けることに成功した。
「……貴様も、久瀬と同じか……!」
反撃された怒りに任せて、統磨は騎道の喉を締め上げた。
夜の冷気が唸りを上げて体を打ち付ける。
もがく騎道。渾身の手刀が、統磨に隙を作らせる。意識を奮い起こし、かろうじて体をコンクリートに預けた。
息が切れる。全身で呼吸しても、これ以上の戦闘は不可能だ。屈せざるを得ないのは、時間の問題……。冷淡な判断を下しながらも、騎道は両眼を見開いた。
素早く態勢を立て直した統磨は、はっと騎道を凝視した。
弱い残照に騎道の顔立ちが照らし出される。薄闇ではそれとわからなかった裸眼に、信じ難い光が宿っていた。
再び、統磨は騎道に両手を伸ばす。
悪鬼の持つ憑かれた眼光を、火花が散り乱れても不思議ではない眼威で、騎道は受け止めた。もう背中を見せはしない。お互いが獣の息を吐く。やらなければやられる。最後の死闘へと、陥るままに任せるしかなかった。
我を忘れた彼等に、聞き覚えのある呼び声が分け入った。
「やめて! ……二人とも、やめて下さい……!!」
佐倉……。
もう一度、男たちは正気の視線を絡ませた。
『これで終わり……!』
凄絶な意識が通い合う。均衡が崩れる。
「……イヤ…………!」
ガクンと統磨の体が沈む。知らずに足場を空中に求めていた統磨は、支えを失った。
落日後の天空には、宵の明星のみが冴え冴えと在る。すべてを青白い光に焼き付けるように、それは瞬きを止めた。
「騎道さん!! 騎道さん!!」
佐倉は声を枯らして叫んだ。統磨の影が失墜すると同時に、追うように騎道の姿も崩れたのだ。
ここまで暗闇を恐る恐る追うだけでも、彼女には恐怖の連続だった。野生に身を任せた二人に、幻を見ているような戦慄に襲われ、震えは両足だけではなくなっていた。
両手で顔を覆った。自分の叫び声すら、佐倉の耳には入らなかった。全身が目前の事実を否定した。
「騎道……さん……?」
遠くの、黒いシルエットが身動いだ。這うようにして、彼女はそれに向かって進み出した。
「なぜだ! 騎道!?」
「喋るな……! 動くなっ!」
それだけの一言を吐くだけでも、騎道には気が遠のくほどの苦痛を伴っていた。眼を閉じた。滲む脂汗が入り込もうとする。風も感じない。血液が、心臓が一拍送り出す度に引いてゆく感触。右肩の千切れそうな痛みだけが、彼の意識を持ち直させているという事実は、皮肉以外の何物でもなかった。
苦痛に耐える努力を空しくさせるように、コンクリート柱に回した左手がずるりと滑る。騎道自身、体半分を虚空に乗り出していた。
「……なぜだ……?」
統磨は死の恐怖に駆られながらも問うた。彼を生かしているのは、今や宿敵であったはずの騎道。それも、負傷した一本の右腕だった。
「生きろよ……!」
統磨の爪先下には『空』しかない。騎道の指先が食い込む右腕だけが確かなものだった。なぜだと問いながらも、統磨は騎道の腕を握り返していた。
「……手を離せ……!」
統磨の唇は震えていた。
ゆっくりと騎道は引き上げにかかった。
昼間の徒労が悔やまれる。佐倉たちを速く見つけたい一心で、無理を重ねていた。街中を丹念に、佐倉の気配を探して、精神集中を繰り返したのだ。
「……ちょっと『力』を余計に使い過ぎて、手間……かけるけど。でも、死なせないからな……」
統磨は凍り付いた。『ばかな……』と呟いて。
騎道は眼を堅く閉じて一心に集中した。信頼できるのは自分の身一つ。すべてをそれに賭ける。
それを無残に打ち砕く、恐るべき一瞬が訪れた。
「ウァっ!!」
灼熱の、極少の突風が騎道の右腕をかすめた。腕を伝い始める血に、その意味を理解する。統磨は予測していた。
「……次は外さないぞ。あいつの腕は確かだ」
「あなただって、死にたいわけないでしょう?」
更に騎道は、握り締める掌に力を込めた。
青ざめた統磨は静かに告げた。
「手を離せ。次は心臓だ。これで解っただろう? 私はもう見放された。もとより、死ぬ覚悟だ……」
「家か。やっと秋津の本家が乗り出したってことか!」
うるさいと言わんばかりに騎道は言い捨てた。
「もういい。命が惜しければ手を離せ。お前を殺せと命令したのは、俺だ」
「あんたはどこまで身勝手なんだよ!」
騎道らしからぬ荒っぽい語気。
「見放されたのなら、ちょうどいいじゃないか。上がってこいよ。嫌気が差していたお荷物が、勝手にむこうから降りてくれたんだ。もう自由だ。家になんか縛られなくていいなら、はじめからやり直せる。欲しがってた自由だろ!?
さあ、そっちの手を!」
統磨の頬に血の気が差した。そこに笑みが、浮かんで。
「!」
騎道の制服に食い込む指が硬直した。
「統磨!」
痛みからくる驚愕を頬に、瞳は一筋安らぎを浮かべた。
騎道の指は、滑り落ちる統磨の指先に触れた。それだけ。
伸ばしても、風がすり抜けるのみ……。
込み上げる怒りが、騎道の内部で限界に達していたはずの、超常的な力を振り絞らせた。
集中する。念じる、堕ちる体を静止させる為に。
「……一体、なぜ……!」
見えないスナイパーは、騎道の怒りに答えを着弾させた。
予言通り胸に。一発、二発。
息を止める激痛が、無念無想の集中を破綻させた。
意識さえ奪う。統磨の後を追うように、体が支えを失ってのめってゆく。
「キドウサン! キドウサン!」
無我夢中の呼び声。思い出せないが、懐かしいような声。良く知っていたような名前。
『キドウ……? ダレ…ダ? ボクノナマエハ……』
虚無の暗闇から、呼応するように沢山の呼び声が木霊してくる。非難、追求、詰問、哄笑、不安、慈愛。根底に信頼を込めて。滝のように彼の魂を揺さぶって、放さない。
無意識に体を引き、手を確かなものへと付いた。冷ややかな物質も、今は彼を救う寄る辺となる。
生への直感がみなぎり、その場を転がるように逃れた。
新たな攻撃が、空しく床を削った。
本能だけで、騎道は顔を上げた。狙撃者を求める。居るとすれば、向かいの完成しているビル。
「……騎道さん……!」
「来るんじゃない! 佐倉さん!」
騎道はフロアの奥、闇の中を振り仰いだ。
危険。危険。危険である! 目覚めた野性が警告する。
あんまり持たないな……。
素直に駿河は認めていた。だからといって手を引いて逃げる気も無かった。間合いを取りながら、拳で唇の端を擦り上げる。隠岐は背後で手を出し兼ねて焦れている。というより、半泣き状態だ。
一方的に負けているわけではない。手負いの野獣と化した潮田は、すでに駿河の手には負えないだけだった。
だから、隠岐には手を出すなと怒鳴りつけた。成人している間瀬田に関しても同様だ。素人に下手に手を出されては、逆に命取りだった。
威勢がいいだけの矢崎は、加勢に入った田崎と隠岐の二人がかりでのされて転がっていた。
「どうした、ボーズ。来いよ」
挑発だ。乗ってやる気にもならない。
駿河は冷静に時を計っていた。援護の当てもないのだが、待っていた。
「! 佐倉さんの声だ……!」
緊迫の中で、田崎は漏らした。待ち構えていた変化が訪れる。
潮田は構えを解いて、首をねじった。
駿河も視線の先を追う。
一番入り口近くに立っていた間瀬田が、視線の先へと走り出していた。予感がした。最悪の予感。
「隠岐っ! 見るな……!」
潮田が猛然と走り出した。駿河が、隠岐と田崎も遅れて追いかけた。
街灯の輪からやや離れた場所に、黒い影が横たわる。
見下ろす間瀬田。威嚇するように潮田が吼えた。
「離れろ! 見るんじゃない!」
眠る人を庇うように立ちはだかり、ポケットをさぐり小さなスイッチを取り出した。
「近寄るんじゃない! これを見ろ!」
瞳の色が変貌していた。さきほどまでの、余裕に満ちた残忍さは失われていた。狂気。紅の狂気に染まっていた。
「これは起爆装置だ。押せばビルごと貴様らも吹っ飛ぶ」
「はったりはやめろ。もう終わりだ」
冷たいアスファルトに横たわるのが騎道であったなら、立場は逆だった。主の死に錯乱する心情は理解できるのだ。
「まだ終わっちゃいない」
ニヤリとする。
「本当です。駿河さん! 佐倉さんの話では、上にも爆薬らしいものが仕掛けてあるって!」
顔色を無くした四人を見渡し、潮田は膝を付いた。起爆装置を握る手を突き出したまま、統磨を抱え上げた。
「動くなよ。ガキども」
「どうする気だ。逃げ場はないぞ。
俺たちは秋津本家を告発する。今度は逃がさないぞ!」
くくっと、潮田は哂った。
「本家など、どうとでもしてくれ。貴様らに出来るのならな。……あれは、かなり手強いぞ?」
駿河は、心からの忠告とも思える言葉に戸惑った。
ビルの奥へと引き返す潮田は、大声で矢崎を叩き起こした。車の用意をしろと告げている。
「先輩、このままでいいんですか?」
「……あんな状態で逃げても。末路は同じだ。統磨の息は無かったんだろ、間瀬田?」
「え、ええ。ただ……」
「何だ? はっきり言えよ」
「……彼は、笑っていたみたいで……」
潮田の広い背中が闇に溶けようとしている。ふと足を止めた。振り返り、視線を投げる。
駿河はそれを受け止めた。
顎を上げて背筋を伸ばし、潮田は勝利を得た者以上に、幸福な、解き放たれた表情を見せた。
彼等は闇の中へ、消えていった。
「……上はどうなってるのかな?」
恐る恐る隠岐は口にした。
「佐倉さんを迎えにいかなきゃ!」
「……あいつ、あのままどうする気なんだ……?」
駿河の呟きは深い思案にあって、一同の気を引いた。
「死人と一緒に逃亡なんて、ゾッとしますね」
「!」
駿河は間瀬田を見上げた。
「僕、佐倉さんを迎えに行きますから」
「待て、田崎! みんなここを離れろ。速く!」
首謀者の死。あの解き放たれた顔立ち。ぞっとする静寂。仕掛けられた爆薬。それも、上の階にまで。
「爆破されるぞ! ぼやっとするなっ!」
「……そんな! 佐倉さんがっ!」
わめく田崎を駿河は引っ掴んだ。
「生き残ってから、その台詞を吐くんだな!」
潮田が消えてからの長い静寂。突き破るように、ビル一階の中心部が赤化する。爆音と爆風が、同時に四人の背中を突き放した。
ズンとい重い振動は、車を疾駆させ、今や未完成のツインビルを視界に捕らえた彩子たちにも、不吉に届いた。
佐倉が駆け走ってくる。暗闇の中、騎道のシルエットだけを目指して。
「だめだ! 佐倉さん、動くんじゃ……!」
放つ声は手遅れに途切れた。
「!」
ガタンと渡し板が佐倉の足元で跳ね上がった。くらりと体が揺らぐ。ふわりと浮いたのは、ほんの一瞬。風が吹き上げてくる。周囲も暗いが、下は奈落の暗黒だった。
あとほんの10メートルだった。騎道の顔の輪郭まで見えるほどに近かった。
中央部以外にもう一ヶ所、業務用のエレベーター孔がここに開いていた。安全の為のポールもロープも無く、作業用に幅一メートルほどの板が渡してあった。
「…………さん……?」
佐倉は目を閉じた。彼が生きている。それだけで、幸福だった。落下の中で恐怖が生まれるだろう。ほんの短い一瞬に。
彼女には耐えられても、ここにはその悲しみに耐えられない一人が居た。
自然ではない風が、彼の全身を巻き上げた。高く、強く、風は光のほとんどないこの場で色を帯びた。白くなびき、彼の思念にその意を委ねた。その証拠として、再び鮮やかに色彩を変じた。闇に溶けることのない紫光へと。紡錘形に彼を包むその中から、水平に一条の白光が放たれる。
彼はがくりと手を付いた。限界にきている。傷付いた右肩を自分の左手で鷲掴みすることで、意識を保つ。
放たれた白刃が、落下する佐倉の中に消えた。
佐倉は切るような風が止んだことに気付いた。もう一つ、忘れもしない温もりが体に触れていた。手を包み取られた。
永遠のような時が過ぎたような気がしていた。もう目を開けてもいいのだろうか。自問していた頃だった。
「……さん…? ……騎道さん、なんですか……?」
かすれた声が他人のもののようだった。白い輝きを透かして、稜明学園の制服が見える。制服の腕が、佐倉を胸の中へ引き寄せた。頭を押し当てて、彼女は確かめた。
暖かい、規則正しい鼓動を感じる。涙が、溢れた。
腕の強さは確かでも、爪先の下は完全に不確かだった。心無しゆっくりと降下してもいた。
降下が停止し、水平移動を感じた。爪先に堅い床。ぺたりと二人は座り込んだ。
そこに、ズンという鈍い振動とともに、エレベーター孔を爆風が垂直に登っていった。
佐倉はもう一度、庇われた。辺りが再び静けさを取り戻した頃、彼方のサイレンがはっきりと聞こえた。
「わかっただろ? 僕は、普通の人間じゃない……」
彼を包む全身の輝きは、ぼんやりと辺りを照らし出して、弱まる気配もなかった。
「どうして? どうしてそんなことを言うんですか?」
佐倉は顔を上げて、目を大きく見開いた。
「これが、僕」
短く、なんでもないことのように告げる騎道。佐倉は首を振った。彼の瞳は物寂しく、全てを言い尽くしている。
「とっても素敵だと思います。一番騎道さんにぴったり」
柔らかく流れるくせをそのままに、優雅な細い金髪が輝いていた。長めの前髪の下で、蒼い瞳が弱く笑う。
彼の顔立ちは、血糊が乾き壮絶な闘いを物語っていたが、闘争とは無縁な厳しい陰りがあった。
「私、騎道さんのような人に初めて会いました。一生懸命で強くて、どんな人でも否定しないで、統磨さんを信じてくれました。騎道さんはとっても優しいわ。他の人と違うのはそれだけです。なのになぜ自分のことをそんなふうに言うんです?
わたしが大好きだったのは、そんな人じゃない……」
騎道がどうしても隠し切れない痛みを、佐倉は悟ってしまっていた。悔いても、騎道にはどうすることも出来ず、知られてしまった真実を晒すしかない。
「統磨さんみたいに、自分に嘘をつくのはやめて下さい……」
泣きじゃくる佐倉に、どう今の感情を伝えられるか、騎道はしばらく考えて、試みた。
「本当は、学校に通うつもりはなかったんだ。僕には通う必要もなかったし、そんな時間も惜しかった。第一、この姿やいろんなことを、ずっと偽って過ごさなくちゃならないからね。だから、全然考えないでここに来た。
だけど、手配をしてくれてもいいと言う人が居て……。
僕ね、学校ってほとんど行ったことなかったんだ。どんなふうだったのかも、もう忘れてた。
行ってもいいと言われた時、初めて、学校に興味が湧いた。おもしろそうだな、って」
子供のような好奇心を抱いた自分を照れるように、目を細くした。
「面白かったな。毎日楽しかった。初めの頃は窮屈でどうしたらいいのかわからなかったけど。自分を抑えなくなってからは楽になった。佐倉さんにホームランをプレゼントしてからだよ」
「ダメです! どこにも行かないで下さい。このまま、一人で行ったりしないで。みんな悲しみます。
私、誰にも言いません。だから……!」
佐倉は、騎道の制服を握り締めた。
「ありがとう……。本当はよくないんだけど、まだここに居たいから。佐倉さんに嘘を言わせることになるけど」
「いいんです。そんなこと。……居て、下さい」
「……うん。そうするよ」
心底安堵したように、騎道は無邪気な笑みを作った。
ふっと、彼の体が傾きかけ、輝きが失われた。
「騎道さん……!」
「……大丈夫。少し疲れただけ。平気だよ」
闇の中では彼の表情は読み取れない。声は無理に平静を装っている。
「……誰か下から助けに来てくれるでしょうか?」
「いや。さっきの爆発で、向こうでも何かあったようだから、無理かもしれない。二人でここを降りよう」
「でも、騎道さんは……」
言いずらくて口ごもる佐倉に、自分で言った。
「髪の色はもう元通りに変えたから大丈夫。ただ、目だけは眼鏡がないと、黒目にはできないんだ。仕方ないから、目をつぶっているよ。行こう」
あっさりした答えに佐倉は慌てた。
「だ、だって、こんなに真っ暗なんですよ?」
不注意な自分では、また転落するかもしれないのだ。
「みんなの所に行くまでは、ちゃんと目を開けて歩きますからご心配なく」
「そうじゃなくって。もう、騎道さん無茶なんだから」
ぱたぱたと手を振る。
「あ、それペンギンみたい。かわいいな」
「は?」
……何のことだか。佐倉にはさっぱりだ。
「僕を信じて。ちゃんと下まで連れていってあげますから」
騎道は『見えている』かのように、ためらわず佐倉の右手を取った。
「……はい」
本当に見えているのである。彼の、蒼い瞳は。