片鱗
相変わらず短いです。
廊下には土下座をしている少年の姿とその前で膝を立てながら困惑する少女の姿があった。
「本当にすいませんでした。」
誠也はいまだに謝り続けていた。
自分で言うのはなんだがさすがにあれはないだろ…
いくら咄嗟的に触れてしまったといっても相手はまだ見た目15歳にも満たない少女である。
その少女が嫌がっているにも関わらずに触り続けてしまった。
「主様もうそのことはお気になさらずに。お顔を上げてくださいませ。主様にそのように頭を下げられますと私もも困ってしまいます。私もいきなりでしたのでびっくりはして変な声をあげてしまい申し訳ございませんでした。」
少女も謝る。少女が謝るのはおかしい気もするが、本人は気にしているようだ。
「とりあえず、食堂に向かいましょう。いつまでもここでこうしているのもなんですから。さぁお立ちになってくださいませ。」
そういうと少女は誠也の手をとりながら立ち上がる。
少女に引っ張られるように誠也も立ち上がると、なにも言わずにそのまま少女につられて歩きだす。
誠也は少女に引っ張ぱられて歩きながら、少女と自分の手が繋がれているのを考え深げに眺めている。
(すべすべしてるし一本一本の指が細い。それになんかあったかい・・・。これが女の子の手か。じいさんのしわしわでゴワゴワして手とは全く違うな・・・。)
家族は祖父しかおらず、学校では誠也には友達と言える存在もなく、言うならば浮いていた。そんな誠也にガールフレンドなどいるわけがなく、そのため女の子と触れあうことなど皆無であった。学校生活してる上で、異性と手をつなぐ機会くらいあると思われるかもしれないが、誠也の通っていた学校は昔はフォークダンスなどもあったようだが、父兄からなにかクレームがあったようで異性とダンスを踊る事などなくなっていた。古き良き文化というものはどんどん失われていくものである。
そこでふと少女の足が止まる。ついで考え事していてなされるまま引っ張られて歩いていた誠也の足も止まる。
「主様、こちらが食堂となります。」
少女が食堂の入口の脇に立ち誠也の入室をうながすのだが、誠也は部屋に入ることなく少女と一緒に入口の脇に立っている。
(あのしっぽをモフモフするのもよかったけど、こうして手をつなぐのもなんか安心もんだなぁ~)
「主様どうかなさいましたか?」
反応がない誠也の様子を心配する少女。そのまま誠也の目線の先に自分も目を向けると、
「っ!?」
慌てて誠也の手から自分の手を放す。少女は誠也と手をつないだまま歩いていていたことを全く意識していなかったようだ。
(あ・・・)
誠也は自分の手が少女の手から解放されると、自分の手を開いたり閉じたりする。なにか感触を求めるように。
そこに少女から声がかかる。
「あ・・・主様も…申し訳ございませんでした。」
勝手に手をつないでいたことを謝っているようだ。その後少女はポツリと漏らす。
「・・・主様もお気づきになられているのでしたら、言ってくだされば良かったのに・・・。
そういう少女は、いつものように幼い見た目の割に大人びた印象ではなく年相応な少し照れながら拗ねたような表情をしていた。
先の時間、誠也に尻尾を触られた際にもこれに似た照れたような表情をしていたのだが、その時は誠也もトランス状態だったために気づいていなかった。
そんな少女の愛くるしい顔を見ながら誠也は思ったことをそのままいう。
「ごめんね。君の手があまりにここちよかったから、放したくなかったんだ。」
そんな誠也のストレートな言葉をうけ、少女の顔がより一層に赤くなる。さらに誠也は続ける。
「あといつもの大人びた表情もいいけど、今みたいな表情もすごくかわいくていいと俺は思うな。」
そんな誠也の言葉の攻撃(?)をうけて、
「はぅ~」
少女は足から崩れて行きそのまま丸くなってしまった。。
「え?どうしたの!?大丈夫!!!?」
誠也の心配する声はもう少女にはとどいていなかった。
ここに将来、その端正な顔と無意識な言動にて『女の敵』と言われるようになる誠也の才能(?)の片鱗が垣間見える。
もちろん誠也本人は無意識に行っているため、自分の言動がどういう影響を相手に与えているかは知る由がなかった。
食堂を目の前にしながら誠也がご飯をありつけるのは、まだもう少し時間がかかりそうである。
とりあえずの投稿です。
相変わらず短くて申し訳ございません。
『一回ごとに話が進まないのは文が短いせい』ということに気づきました…。
とはいえ文才がないせいか長く書くのが苦手なようで、ゆっくり進めて以降と思います。
できる限り早く続きを書くように頑張りますので、何卒ご容赦ください。
今回も読んでいただきましてありがとうございます。