忠義心?
サブタイトルは適当です。
「主様のばかぁ~~~~~~~~~~~。」
そんな言葉とともに少女の右手がどんどん近付いてくる。
その様子がなぜか誠也にはスローモーションに見える。
避けようと思えば避けられそうな気がする。
もし避けることは難しいとしても防御しようとすれば防御はできそうだ。
だが…本能的にそれを選択してはいけない。そんな気がする。
なんでそう思うのかはわからない。避けたらどうなるとかそんなことはわからない。
でもこれは『食らわないといけない。』それだけはなぜかわかる。
(きっと俺が悪いんだよな…良くはわかってないけど…)
少女の拳が誠也に突き刺さるまでの時間にしてみれば1秒にも満たない時の中で誠也はそんなことを考えてたが、『ゴスッ』っと音を立てて突きささる少女の右手によって思考を中断させられる。
その瞬間誠也の頬に鈍い痛みが走る
「っ…」。
意識を奪われるほどでも吹っ飛ぶわけでもない。けれどもたしかにたしかな痛みを左頬に感じて誠也の顔が歪む。
そんな誠也の表情はお構いなしに少女の拳は誠也の頬に突き刺さった状態のままの状態を維持してる。少女が拳を引くこともなければ誠也が顔をズラすこともない。
辺りは沈黙が支配している。ふと少女の口から音が漏れる。
「え?」
そんな少女の言葉とともに誠也の頬に突き刺さっている拳に急に力が入ったり抜けたりするような感触が生まれる。
拳を誠也の頬に突き刺した状態のまま開いたり閉じたり。開いたり閉じたり。を繰り返しているらしい。
誠也はそんな少女の行動の意味がわからずに、少女の拳のあるせいで首は動かせない為に目線だけ少女の方を向ける。
視界の端にぎりぎり収まる少女の姿。そこには不思議そうに自分の腕の付け根の辺りと誠也に突き刺さったまま手を開いたり閉じたりしている自分の拳を交互にキョロキョロと目で追っている少女の姿。ふいに少女と誠也の目が合うと少女は首をかしげる。
(これって…やっぱり俺が何か言わないといけないのかな?)
そんな風に考えて誠也の若干喋りにくそうながらも口から出てきた言葉は…
「え、えっと…ナイスパンチ?」
(パンチを褒めてどうすんだよ…俺…)
「え?」
そんな誠也の言葉を受けて再び首をかしげる少女。そして再び自分の拳の先を見つめる。
そうした後少女は何かに気付いたのか、目を若干見開きそれと同時に拳をいきよいよく引き。
「……」
「……」
再び沈黙が辺りを包みこむかと思われた瞬間少女が一言喋る。
「え、えっと…や、やっぱりこの状況ってそういうことございますよね…」
どこか諦めたような声色。少女の顔が見る見るうちに青くなっていく。
元々色白のためか血の気が引いたその顔はすごくよわよわしい。
「う、うん?た、たぶん?」
誠也はそんな少女の様子を見てそう返すのが精いっぱいだった。
そんな誠也の返答の末少女は、
「う……た、大変申し訳ございませんでした。あ、主様に手を上げるなどと…もうカエデは死して主様にお詫び申し上げるしかございません…」
若干涙声になり、そういうと俯いてしまう。頭の上にある狐耳も今は元気がなくペタンと垂れ下ってしまっている。
「えぇ!?だ、大丈夫だよ!そ、そんなに痛くはなかったし!!?たぶんきっとだけど無意識的に力を抜いてくれてたんじゃないかな?」
「いえ…主様に手を向けるなど…どんな理由があれ許される事ではございません。どうか死ぬことをお許し下さいませ。」
「いやいや!?元々俺が助けて貰ったわけだし!!?それで水に流すことにしよう!!それがいいよ!!」
「いえ…ですが…」
「主の俺が気にしないっていってるんだから…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
少女が思いとどまってくれるまでさらにこれより30分余り説得の時間を要することとなる。
ご覧いただきましてありがとうございます。
投稿が遅れて申し訳ございません。
ついに少女の名前が作中に登場しました。なんでこのタイミングになったのかは私にもよくわかりません。
特に引っぱった意味も特にありませんでした…
こんな適当ですがこれからもよろしくお願い致します。