重い雰囲気
少しは話しが進んだと言えるのでしょうか?
『モグモグモグモグ』
座敷に座りながら食事をしていると思われる2つの影。一般的に上座と言われ場所には金髪の少年が座っており、ちらちらと斜め向かいにちょくちょく目を向けている。少年の目線の先を追ってみると、そこには銀髪の少女が無表情にどこか顔を赤らめながら座っている。2人の間に会話という会話はなくどこか気まずそうな雰囲気が辺を包んでいる。
気まずい沈黙に耐えかねたのか、少年は大根の煮付けを箸で刺しながらふと声を出す。
「こ、この煮漬物す、すごくおいしいなぁ~。」
少年の声はどこか上擦っており妙に白々しい。そんな少年を少女で一瞥すると、手にもっていた箸を丁寧に茶碗の上に置いてから答える。
「それはよろしゅうございました。ですが主様、食べ物を箸で刺されるのは如何なものかと思います。」
最初だけ自分が作ったものを褒められてか一瞬笑顔になるが、言葉の最後のほうにはもとの無表情に戻ってしまう。
少女に作法について指摘された少年は、小さな声で「すいません…。」と呟くと、そのまま、また気まずそうに食事を再開しながらどうしてこうなってしまったかを思い返す。
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「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
誠也の目の前で悲鳴を上げる少女、耳が一瞬キーンとする。だがそんなことに構っている余裕は今の誠也にはない。
(まずいぞ…これはまずい…)
誠也の脳裏は今焦りで埋めつくされていた。。
それまでの状況をしっているのは誠也だけ。少女からしてみたら意識が朦朧としていて気がついたら誠也に抱きつかれて胸を揉まれていたという状況なわけである。
(と、とりあえずは説明をしなきゃ…このままだと俺はただの変態になってしまう。)
「ごめん…でもこれには訳があって別にただ抱きついて胸を揉んだってわけじゃないんだよ?とりあえず俺の話を聞いて欲しい。」
目の前の少女に向けてなぜこういう形になったのかの経緯を説明を続ける誠也
「君がいきなり反応をなくして座り込んじゃったからさ、このままじゃいけないと思って立たせようとしただけなんだよ?嘘じゃなくて本当に!!!。」
息をすることさえ忘れながら、早口で説明を続ける。その表情と口調からは誠也の必死さが伝わってくる。
そんな中少女が口を開こうとする。
「あ、あの主さ・・「とりあえず今は僕の話を聞いて!そのあとで君に話はしっかりと聞くから!」
少女の言葉を途中で遮り説明を続ける誠也。
「そして立たせようとしたら、キミがバランスを崩して倒れそうになってそんな君を庇ったらこんな格好になってしまっただけなんだよ。間違っても抱きつこうと思ったり、む、胸を揉もうと思ってこんな格好になったわけじゃないんだよ?信じてほしい!」
そんな必死に説明する誠也に圧倒されたのか、
「わ、わかりました。あ、主様は私をお助けくださっただけ、で、でしたのですね?わかりましたから…あの…その…そろそろお手をお外しいただけませんでしょうか…。このままだと私は、み、身動きを取ることができませんので…」
少女は頬を赤めながら目線を自分の胸や腰の方へと向ける。
そう誠也は説明することに気を取られてしまっていたために現在少女を抱きしめている状態なことも、少女の胸に手で触れてしまっていることもすっかり失念して、その状態のままずっとしゃべり続けていた。
「あっ!?ごめん。」
少女に言われてあわてて少女を拘束(?)している手を外す。
誠也の手が外れて自由になった少女はそのまま立ち上がり、誠也に背を向けながらひとつの部屋を指差し、
「あ、主様とりあえずお食事にいたしましょう。少々冷めてしまっているかもしれませんが…。主様はあちらの部屋にてお待ちくださいませ。すぐに残りのお食事をお持ち致しますので。」
そう言うと小走りで消えていく。
一人残された誠也は走り去っていく少女の後ろ姿と2本のしっぽを眺めながら、「た…助かったのか?」そう呟くと額の汗を右手で拭いながら立ち上がると、少女の指さした部屋に向かって歩き出す。
部屋に入るとそこは誠也が最初寝ていた部屋よりも数倍くらい広い和室でいつかテーブルが置かれていた。そのテーブルの中で一番入口から遠くて掛け軸が掛けられた床の間の前にあたる席には黒い茶碗、その斜め迎えの席には白くて桜柄の茶碗がすでに裏返しに置かれていて煮漬物などの料理もすでに置かれていた。、
(ピンクは彼女のものかな?彼女も食事はまだだったんだぁ。待たせちゃったかな?それなら悪いことをしたなぁ)
と考えながら、黒い茶碗の置かれた席に胡座をかき座って待つことに決めた。
待っていること数分、少女はご飯の入ったお櫃や残りの料理をもって部屋にやってくると、誠也の斜め前のピンクの茶碗が置かれていた席に座ると、一旦持ってきたものを脇に置き、
「お待たせして申し訳ございません。すぐに用意いたしますので。」
そう言ってから頭を下げると、誠也の席の前に残りの料理を並べ始める。そのあとに自分の分を用意する。
少女が用意してる間も誠也と少女の目が合うことはなく、どこかよそよそしい。
誠也の前に並べられた料理は、山の幸をふんだんに使った料理であった。
「わぁおいしそう!これってキミが作ってくれたの?」
誠也が少女に問いかける。
「左様でございます。どうぞお召し上がりくださいませ。」
そう少女が答えると、次の句が継げず二人の間に
「・・・」
「・・・」
沈黙が流れる。
「・・・」
「・・・」
「い、いただきます。」
その雰囲気に耐えられなくなり、誠也は料理に箸を伸ばす。
「いただきます。」
誠也の言葉後に少女も続く。
その少女の頬が未だにほんのりと赤くその態度も照れ隠し為よそよそしく、そして必要以上に無表情になってしまっていることも、普段の彼女の態度ならば主と呼ぶものと一般的には、一緒に食を囲ったりしないはずであることに誠也は気づきはしなかった。
ご覧いただきましてありがとうございます。
まえがきには書いてしまいましたが、もう話しが進んだ進まないは気にしないようにしようかと思います。
毎回同じあとがきになってしまいそうですし、気にしても治らなそうですので…
こんな作者ですが、どうぞこれからもよろしくお願いいたします。
※誤字と改行がおかしいところがありましたので、修正いたしました。
※1/18 最後の一文を若干修正いたしました。