クリスマスの夜に
キラキラ光る街灯を忌々しげに眺めながら、ドローネは夜の町をひとっとび。
ビルの3階にあるオフィスも、ホウキに乗った魔女にはなんの障害にもなりゃしない。
”ピジョン・ブックス”とでかでか書かれた看板に隠れて、窓から中を覗き込む。
ステファンのお父さんはすぐにわかった。
ステファンと同じくしゃくしゃのブラウンの髪の毛に、ぐるぐる眼鏡をかけている。
「あのぐるぐる眼鏡がステフのお父さんか。しっかしみんな、仕事が好きだなあ」
イチイの杖を取り出すと、いつものように呪文を唱える。
『バブル・バブル・コルドロン・バブル』
「うーおー」「あおーん」
突然現れたゾンビたちに、オフィスは大混乱に包まれた。
今夜はクリスマス、聖なる夜だ。闇の住人なんてお呼びじゃない。
「なんだなんだ、助けてくれー」
「ひええ、食べないでくれー」
「おい、みんな逃げろー」
恐ろしいゾンビの群れに襲われた労働者たちは、一斉に逃げ出した。当然ボトル・ボトムも。
「やれやれ、何だったんだ今のゾンビたちは」
「どうしましょうか、部長。オフィスにいたみんなは、避難できたようですけど」
「どうもこうもあるか、今日の仕事がめちゃくちゃだ! しょうがない、続きは明日にして、今日は帰ろう」
「はい、仕方ないですね」
ドローネは、ホウキの上で彼らの話を聞いていた。
部長はカンカンに怒っていたが、どうしようもない。なにせオフィスにはまだゾンビがいるのだから。
「よしよし、うまくいったな」
ドローネは満足だった。
ステファンのお父さんが家の方向に歩き始めたのを見て、思わずケタケタと魔女らしい笑い声が漏れた。
その夜、ドローネはステファンの家に行くと、窓から中を覗き込んだ。
そこには楽しそうに二人でクリスマスを祝う、ステフとボトル・ボトムがいた。
「ふふふ、よかったな、ステフ」
ドローネはいつの間にか、ステフの笑顔が好きになっていたのだ。
とその時、ステファンが窓の外のドローネに気付いた。
「あ、お父さん、ちょっと待って」
「ん、どうしたステフ」
「お友達が来たんだ。一緒にクリスマスを祝ってもいい?」
「ああ、もちろんだよ。呼んでおいで」
ステファンはドアを開けて、ドローネを中に招いた。
「いやいいよ。私は魔女だぜ、クリスマスなんて祝ったことないよ」
「いいじゃない、ご飯だけでも一緒に食べようよ」
ドローネは少し悩んだけれど、ステファンにどうしてもと言われ、ごちそうになることにした。
ステファン親子にとっては、久しぶりに三人で過ごすクリスマスだった。
スタッフィングにチキン、プディング。そして小さなケーキ。
豪華ではないけれど、それでもしっかりとクリスマスだ。
ドローネは、こんな温かな食事は見たことがなかった。
舞い上がったドローネは、真っ先にプディングからかぶりつく。お父さんは笑顔でそれを眺めていた。
ドローネは、こんなクリスマスなら悪くないな、と思った。
窓の外では、キラキラと雪が舞い始めていた。




