表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

魔女ドローネは、ゾンビーが好き

 魔法の国、アサルセニア。住所はカボチャ畑(パンプキン・パッチ)の向こう側。

 フジッリのようにねじれ曲がった樹々に囲まれた、ワードローブの中ほどに暗い、暗い森の奥。

 ここに住む住人は皆魔法使いだ。漆黒のローブに身を包み、イチイの杖を持っている。


 もちろん、魔女ドローネも。


 彼女が得意なのは、恐ろしい死者(ゾンビー!)たちを呼び出す魔法。ひとたび彼女が杖を振るえば、恐ろしい死者(ゾンビ)たちがどこからともなくあらわれ、イタズラの限りをつくすのだ!


 だが、ゾンビが恐ろしいのは姿だけ。彼らの頭の中には、脳ミソがちょっぴりしか入っちゃいない。

 暗闇に隠れると足元の段差でずっこけるし、つぎはぎだらけの足じゃ逃げる人間どもを追いかけることもできやしない。

 そんなドローネのことを、他の魔女たちは落ちこぼれと笑うのだった。


 ある日、魔法学校の先生であるマルガリータは、ドローネに言った。

「ドローネさん。少しはゾンビ以外の魔法も覚えたらどうですか」

「でも先生、ゾンビにも色々種類があるんだよ。今は馬のゾンビを呼び出す呪文を練習してるんだ」

「結局はゾンビでしょう? 同じ魔法ばかりで、人間が驚くもんですか!」


 魔女の価値観(ウィッチ・バリュース)は、人間たちのそれとはかけ離れていた。


 冷酷な魔女たちは、イタズラの結果がどうなるかなんて考えない。とにかく驚かせれば満足で、自身の満足が一番なのだ。


 とある魔女は自動車のうるさい音に腹を立て、高速道路(モーターウェイ)に苺のジャムを巻き散らしてやった。

 甘ったるい匂いともに、アスファルトはすぐさま最低なレッドカーペットと化した。

 一昼夜続いた渋滞(ジャム)の中でクラクションと共に響いていたのは、魔女のケタケタという甲高い笑い声。


 また別の魔女は、キツネ狩りを楽しむ紳士たちの前で、キツネを大きな雄牛に変えてやった。

 暴れまわる雄牛は逆に紳士たちを追いかけ回し、狩場は大混乱だ。

 素早い(クイック・)茶色の(ブラウン・)雄牛(オックス)はさんざんに暴れまわったあげく、澱んだ霧(レイジー・フォグ)の谷を飛び越えて、どこかへ行ってしまった。

 行き掛けの駄賃で農場の柵をぶち壊し、多くの羊たちが自由の荒野へ旅立った。



 ただ、ドローネは他の魔女とは違う。心優しい魔女(ウィッチ)だ。ドローネ自身もそう思っている。

 イタズラは好きだけど、人間をケガさせたり困らせたりは、あまり好きではなかった。

 黙り込むドローネに、マルガリータはため息ひとつ。

 そして、言いつけた。


「いいですか、ドローネさん。あなたは今から、人間界で修業をしてきなさい」

「はあ、人間界、ですか?」

「そうです。人間たちを存分に驚かせるまで、帰ってこなくてよろしい!」


 教師マルガリータは厳しい。問答無用で魔法を唱えると、そのままドローネを人間界へと弾き飛ばした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
そうか、馬ゾンビは走れぬか、そうか。 しかし、ならば、だ、出現と同時に自らを支え切れず自壊する馬。 コレは恐い、恐いぞ! ……いや、ほっこりする童話だったな、すまん。 しかしどうせなら自壊する象と…
例えば競馬場に馬のゾンビが出現したら、皆相当混乱すると思うが。 レースに乱入させたりすれば……迷惑をかけるのは本意じゃないのか。 そもそも走れるのか馬ゾンビ? 狐狩りの狩場に狐ゾンビを大発生させるとか…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ