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鉄仮面姫③

次の日、7月14日の放課後。

廊下を如月と二人で歩きながら最終確認中。

目標は小野美月。

昨日二つ名を決めて、あとはいざ伝えるだけなのだが……。


「それが一番きついんだよな……」


失敗すれば、明日から僕の呼び名が”厨二病”になってしまうだろう。

同級生からの冷たい目もセットで。


「いつものことじゃないんですか?」


「いつも冷たい目では見られてないよ!?……ないよね?」


僕は友達が少ないので、正直どうかはわからないのが悲しいところである。


「もしかして、緊張しているんですか?」


「まあ、うん、少しはね?緊張するよ」


「下着姿の女子に迫った変態のくせに?」


「言葉のキャッチボールかと思ったらナイフが飛んできたぞ、おい」


元はといえばこいつのせい……と思ったが頼んだのは自分なので僕のせいか?

まあ、どちらにせよ聞かなきゃ順風満帆な生活だったのにな……。


「嘘である。なぜなら世界は俺中心に回っているため、厄介事の方から俺に飛んできてしまうからだ!」


「嘘じゃねーよ!そして人の気持ちを勝手に捏造して言うな!」


「そんな、声真似もしたのに……」


実は声真似が結構似ている。

まあ、だからといってどうということでもないが。

……実はこいつなりの励ましだったりして、いやないか。


「ん!小野さん、前から来ましたよ」


……どうやら標的のお出ましのようだ。

標的は一人。めちゃくちゃ都合がいい。

如月に離れてもらい、小野さんに話しかける。


「こんにちは、小野さん」


覚悟、不安、緊張、その他諸々。

そんな闇鍋みたいな気持ちを持ちながら、彼女の前に立つ。


「あ、太刀凪くん……!」


それは、鬼ごっこで捕まえたときのような。

あるいは、かくれんぼで見つけたときのような、声色。

あんなことがあったのに、なんでそんな声色で僕に返事できる?

最悪の可能性が頭によぎるが、よく見ると彼女の頬は赤く染まっていた。

……昨日のことは恥ずかしいけれど、ここで変に恥ずかしがるとおかしい、ってことか。


「なにか、用かな?」


「あ、ここじゃちょっとなんだから……屋上で話さない?」


「ひゃ!う、うん……。もしかして……」


なんか小野さんがソワソワしだした。

もしかして、昨日のことがあったからまた触られると思われてる……!?


「い、いやさ、昨日のこと謝りたくて」


屋上につき、弁解の言葉を述べる。

セットで、最敬礼の45度お辞儀をつけて。

しかし、返ってきたのは……。


「ご、ごめんなさい!」


「え!何が!?」


「え……告白じゃないんですか?なので先読みして拒否させてもらったんですけど」


「なんの話!?」


「いや、私の麗しき肢体を見て、昨日悶々としたまま帰って、それで私に会いに来て告白しにきたのかな、って……」


告白?

生まれてこの方、告白なんかしたことないのに!?

しかも、勝手に勘違いして勝手に振られた。

目の前の小野さんは、「どうして……昨日記憶に残るようにさっと帰ったのに……」と言っている。

……わからないことだらけだが、隙ができたのは確かだろう。二つ名チャンスだ!


「小野美月は!」


「は、はい!?」


一呼吸置き、次の言葉を絞り出す。


「『超越の麗美人』である!」



瞬間、空間が歪む。これは……成功だ。

空が暗く、まるで夜のようになる。

目の前では小野さんから黒い液状のようなものが溢れ出で来る。

ソレは、人の形を取った。

その姿は……絵本で見た”かぐや姫”まんまである。

しかし、唯一違うのは左手に竹槍を持っているところだろうか。


「あwせdrdftgvyふj」


何かを話している。しかし、聞き取れない。

耳を傾けようと思って……しかし、それが失敗だったことに2秒後に気づくことになる。

瞬間、僕の体は宙に放り投げられていたからだ。


「うっわああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


落下、加速、落下。

急いで如月を呼ぼうとする、が。

上から除く『超越麗美人』が、美しいと思ってしまった。

美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい……

うつく……っつ!


気づけば、地面とご対面まであと少し。

でも、あいつは来る。


「そのとーり。私、参上です」


まるで、布団にダイブしたときのような感触。

怖くて閉じていた目を開けると、如月に抱えられていた。


「どうですか、私の体の感触は?」


「今聞かなきゃいけないこと!?」


じゃあ後でいいです、と言って僕を地面に下ろす。

あたりには人一人っ子おらず、その代わりに竹が生えている。まるで竹藪である。

周りを見渡していると、ズドンと大きな音、舞う砂埃とともに『超越』……言いづらいな、超姫も降りて来た。


「あら……少し重たい方なのかしら?愛も体重も」


「とってもタブーなこと言ってる!?」


如月の何気ない?一言に起こったのか、そこらに生えている竹を槍のようにこちらに投げてくる。


「如月!なんかあいつを倒せるものは!?」


「あ!ちょっと待ってくださいね……あ、竹は私達さわれないですよ!この空間の主の超姫しか触れられないですからね!」


如月は何も無いところをテープのようにベリベリと剥がし、その中に入って捜し物をしている。

……元々整理しておいてくれよ!?


「ありました。どうぞ」


もらったのは、掃除機。


「お前……妖怪退治の映画見たな?それか弟のマンションやったな?」


鋭い視線を向けると、無駄にうまい口笛を吹いて誤魔化そうとしている。

無理だと思うけどやるしかない。

気持ちを切り替え、超姫の方を向く。


「来いよ……戦闘力5が相手してやるよ!」


ここに、戦闘力5(+魔法使い)とやばい姫の対戦がスタートした。


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