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鉄仮面姫①

高ニの6月15日、転校生がきた。

この言葉だけ聞けば普通に聞こえるだろう。

まあ、『変な時期に来たなー』くらいで。


実際は“鉄仮面を被った女子が転校してきた”という、ラノベでもあまり聞かないようなことが起こったのだが。

なんだその仮面。どっかのエリート超人かよ。

そんな鉄仮面の少女は自己紹介で、

「どうも、超人高校から来ました。アリサマスクです」と言った。

クラスの大半は“ポカーン”という擬音がつくほどのハテナを頭に浮かべている。

かろうじて分かる者は、「アリサは嫁だろ」「ロビンだろ」とかツッコミ中。笑ったげろよ。


「嘘です。私は小野美月と言います。よろしくお願いします」


そう言って、彼女は最敬礼の45度お辞儀を披露した。

すると、さっきまでの気まずい雰囲気が消えて、教室は拍手で埋め尽くされた。

しばらくして拍手がやみ、先生が口を開いた。


「はい。ってなわけで、小野美月さんです。みんなよろしくね。席は……あそこで!仲良くね!」


そうして、朝のホームルームが終わった。

……先生は鉄仮面について話さなかった。何かあるのだろうか?

そんな思いを持ちながら、1時間目の準備をしに廊下へ出で行った……。


〜飛んで昼休み〜〜〜


現在、4時間目が終了して昼休み。

教室は、謎の熱気に包まれていた。

何があったのかと聞くと、どうやらさっきの休み時間。


モブ子ちゃん「小野ちゃんさ〜その鉄仮面どこで買ったの?」


名切「コンビニで……」


モブ華ちゃん「へぇ〜そうなんだ!で、仮面の中見せてもらってもいい?」


名切「……いずれわかります。それが待ちきれないなら、私に仮面を剥がさせてみてください」


モブ子・モブ華ちゃん「…………」


と言う会話があり、モブ子・モブ華がそれをクラス全体に広めたため“小野美月の鉄仮面を剥がさせる”で一致団結しているとのこと。

コンビニで鉄仮面が買えるってどういうことだろうと思ったが、みんなの反応を見るにあんまり重要そうではないので、何もいえなかった。

……体育祭はもう終わったのに団結するとはこれ如何に。


その後の彼らはすごかった。

まさしく“身を粉にしていた”といえば伝わるだろうか。

例えば、まだ暑いのにエアコンを暖房にしたり。

プール授業の時に小野さんが着替え終わるまで女子全員が待っていたり。

昼食時、いなくなる小野さんを探す探検隊ができたりした。

が、彼女は素顔を見せることはなかった。

……よくよく考えたら無駄なことしかしてねえなコイツら。


「って、ことがあったんだけどどう思う?」


「……あ、私に聞いてたんですね。てっきり独り言だと。」


7月12日、部活。

僕は文芸部に所属している。ちなみに部員数は僕含め2名だ。

今話している(と思っていた)奴は『如月栞』。

白銀のボブカットに、黄色い目。黒縁の眼鏡をかけている。

手には明らか難しそうな本。まあ、どのみち僕には読めないのだが。


「おいおい。独り言っていうのは、複数人がいるところでするもんじゃないだろ?ましてやこの図書室に今いるのは2人だけだぜ?誰に話してるかくらい明確でしょうが!」


「これは独り言ですが……図書室ではお静かに」


「あ、ごめん……って『これは独り言』なんていう人間は怒っている人間か誰かにヒントを与える人間しかいないだろ!?」


「まあ、その点では私はあなたにヒントを与える係としては正しいとも思いますが?」


「ぐっ……」


「またまた独り言ですが……ぐうの音は出るみたいですね」


そう、呆れたように言われる。

程度の低いレスバトルであることは確かなのだが、いかんせん彼女はその“程度の低いもの“を極限まで“高貴なもの”だと思わせることに長けているため、負けた時に嫌な気分になる。

しかしながら、彼女もまた本を閉じ、こちらを向いたのである意味“話を聞いてもらう”という当初の目的を達成したので実質勝利だろう。(負け惜しみ)


「それで……何が知りたいんですか?」


「……“なぜ小野美月は鉄仮面で顔を隠しているか”が知りたい」


「おや、太刀凪くんにも春が来ましたか」


「なーに勘違いしてるんだ。クラスで話題になっていたから気になって聞きに来たんだ」


「……そうですか」


そう言ってカウンターからこちらの本棚が多くあるスペースに出てきた。

そしてそのままぐるぐると何かの本を探して……見つかったようだ。


「ありました。と言ってもあなたには読めませんが」


「知ってるわ!早く、内容!プリーズ!」


「急かすな」


ペラペラとページが捲られる。

彼女が目的のとこを探している間に、彼女の正体について説明しよう。

如月栞は、異世界から来た魔法使いである。

異世界のやつだから、ここにある本の約半数が僕には読めないのだ。


「……明日、4:30にご自分の教室に行けばわかるそうです」


「まじで!?明日は何も予定はないし……大丈夫だ。ありがとな」


「報酬は?」


「え!?うーん……“ポケット黄色いネズミ”とかどう?」


「あれ結局手で振るから入りません」


「競歩計でしょ!?」


「というか27年前のものをさぞ現代の物のように……」


「え、あれそんな前なの!?」


現在2025年、やはり時の流れは早いとしみじみ感じる1日であった……。


「そういえば文芸部的なこと一切やってませんね」


〜次の日〜〜


7月13日、放課後。現在4:25分。

5分前に着いてしまった。

正直に言おう、僕も仮面の下に興味があるのだ!

いや、言い訳させてくれ。

ラブコメを読みすぎて“ラブコメマイスター”と呼ばれた僕は、状況的に絶対に小野さんが美少女だったとかいうオチだろうと踏んでいるのだ。

しかしその旨を如月に伝えると。


『はぁ……まあ当たって砕けてきてください。NEW太刀凪くんの誕生を楽しみにソーメンのつゆ作っておくので』


『どういうこと!?NEW太刀凪って誰だよ?しかも新しい俺を食う気満々じゃん!しかもめんつゆで!悪いとは言わないけど!』


なんかよくわからないことを言われたが……ツッコんだせいで疲れたのは確かである。

こんなところでじーっとしていてもどーにもならないので、そろそろ行くか。

いざ……!!

僕は教室のドアを開けた。


「ふぇ……」


「あ……」


驚いた表情でこちらを見る“下着姿”の小野さん。

……美しい。

美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい

美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい

美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい

うつく、しい

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