光の輪郭
【黄昏、夜】
秋の気配がありました
イタヤカエデが高く伸びた宙二階
夕刻の蝉時雨が光が溶け込むように降ってくる
ヒラヒラとイタヤカエデの葉は
指揮者の手のように光を掬い柔らかく振りまく
木漏れ陽はまるで風車の輪郭を通して
しあわせを歌うあのひとの音符が
わたしの心を撫でてくれるようで
わたしは眠りに落ちる
【朝焼け 真昼】
カーテン越しに微かな光
山の麓の湖面を撫でた風に
山の峰と青空に東から差す太陽
まだ蝉鳴かぬひとときに
キラキラとイタヤカエデの葉は
風と戯れ、柔らかな笑い声を響かせる
あなたと手を繋いで歩いて
足を滑らせないように
ヨタヨタと歩いた川縁
川遊びの親子連れの笑い声と
ふたりの笑顔がかさなり
もみじ、楓、銀杏、の青葉から
太陽の光が螺線を描いてわたしに
降り注ぐ
山肌からの藻が蝉時雨と共に香り
その流れがわたしの心を潤して
癒してゆく
山々の緑が深く
湧き出る湯の舟の中で光が交差し揺れていた
青空と山並み、湖面からの風、イタヤカエデ、
全てに包まれたひとときに
見上げた木漏れ日その輪郭にも
少しずつ 少しずつ 微笑のように
秋の気配がありました