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別れる理由

 ゲーム仲間のアッコの旦那さんから電話があった。アッコが離婚を切り出したというのだ。考えさせてくれと言ったが、どれだけ考えても別れる理由が分からない。何か知っていることがあったら教えて欲しい……という要件だ。

 あたしは返事に困った。アッコから口止めされているわけじゃないけれど、その件は話しにくい。二人の間に感情の行き違いがあったのは事実だ。一番の問題はアッコのゲーム依存だったと思うし、それはゲーマーの友人である私にも責任の一端があるという感じはするし、アッコが旦那から一日のゲーム時間を決められていると不満を言ったときには「そんなモラハラ亭主とは別れたら」と唆したりもした。だけど、本当に別れて欲しかったわけじゃない。だけど、こうなった。そして、あたしはアッコが別れを選んだ理由を知っている。言うに言えない理由だ。

 事の起こりは、あたしとアッコでファンタジーのバトルRPGをプレイしたってことだ。魔術師ゲヘケモニアヌというチュートリアル担当のキャラクターに導かれ、ゲームスタート。キャラメイクで、あたしは女盗賊、アッコは女戦士になった。AIが動かすノンプレイヤーキャラクターと一緒にダンジョンへ潜る。そのゲームには冒険以外に恋愛の様子もある。パーティーの仲間と恋仲になることがあるのだ。アッコの女戦士に対しノンプレイヤーキャラクターの野武士が好意を持った。アッコの女戦士も悪く思わなかったようで、二人はいい仲になった。それだけならゲーム世界の話で、問題にはならない。困ったことに、その野武士ダーダハラがアッコの旦那がいない平日の昼間に彼女の自宅を訪問するようになった。ゲームの画面から全身を出してくるのだ。信じられないけど、あたしも目撃したから、信じないわけにはいかない。信じられない話は、まだ続く。なんとアッコは現実世界のサラリーマンの夫とゲーム世界の野武士の間男を天秤にかけ、後者との人生を歩むことに決めたのだ。ゲーオタ、恐るべし。あたしも廃人ゲーマーだけど、そこまではやらない。現実世界の夫と別れるなんて……あ、あたしは独身だった。

「もしも何かご存じでしたら、教えて下さい」

 アッコの旦那さんは、そう言った。

 あたしは、どう答えたらいいのだろう?

 あなたが好きです、とでも言ってみるか。

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