ひどく鈍い弟子がおった......
『醒睡笑』は安楽庵策伝(1554~1642)が著した咄本である。序によると、元和九癸亥(1623)の年から、子供の頃より耳にした面白くおかしい話を古紙の端に書き留めていた。70歳で、京都誓願寺の北西のすみに隠居し、安楽庵というボロ屋に住んでいた。夜明け夕暮れの合間合間に、書き留めたものを見ると、自ずから目が醒めて笑う。そういうわけで、醒睡笑と名付け、ただみっともない草紙八巻として残した、という。その内、巻之一鈍副子「11 いはんかたなき鈍なる弟子あり・・・」を訳した。
ひどく鈍い弟子がおった。檀家が集まって茶請けなどがある座敷で、歳をほめることはいつものならわしである。それなのに、とかくあの弟子、未だ30の者を40と見誤り、50ほどの者を60余りと見誤って笑われるのを、坊主が聞くに堪えず、
「はてさて、たわけにつける薬が無いとはまことのことじゃな。わしも人も歳を取りとうない。誰にでも若いと言うのが良いじゃろう。ゆめゆめ、軽率に人を年寄りと言うな」
とお教えになり、明くる日、この弟子、遣いに出て、女房が子を抱いているのを見つけ、
「この息子さんはおいくつですか」
「この子は今年生まれ、赤子ですわ」
弟子、「まあ赤子とは。それは若うございますな」
この話は古典落語「子ほめ」の原話と思われる。そう思うと感慨深い。
こちらのサイトで落語のテキストを読むことができる。
http://www.asahi-net.or.jp/~ee4y-nsn/rakugo/00menu.htm#ryusi(八代目春風亭柳枝)
落語をテキストで読むと面白さが割り引かれるかと思うので、音声と動画も挙げておく。
音声
https://open.spotify.com/track/11U3eJeCtQdzy7nHP5GziU?si=a5d68095829d47b3(六代目三遊亭圓窓)
https://open.spotify.com/track/0lquOA5h5W3yZ9aDiadw7i?si=14696bd1c61a4d5c(立川志らら)
動画
https://youtu.be/r_4aF8W3EBk(六代目柳家小団治)
https://youtu.be/R2qLlWJ6P84(桂優々)