消滅させる気はなかったのに
「ロジー、勇者パーティーの様子は見れないのかしら」
ロジーは声をかけられて水晶を取り出す。
「こちらを使えば見れますぞ」
「ありがとう。それよりブロスの葬儀の準備は出来たの?」
「はぁ、我々も葬儀というものをしたことがありませんので準備に時間がかかっております」
「資料は渡したでしょ。その通りにやりなさい」
私は手でロジーを追い払う。
「さてと、勇者はどうしているかしら」
あれ?魔法使いがいる。誰よあの女は。
それと武闘家もいるじゃない。いつの間に仲間が増えているのよ。
やっぱり勇者の方は順調にゲームに乗っ取って進んでいるわね。
そうなるとこれから危険な戦いが待っているはず。どうしよう、止めに入ろうか…
「ラフィール様、このスピーチとやらはどうされるのですか?」
ロジーが扉を開ける。
「ら、ラフィール様がいない!!」
「はぁ、また勝手に出てきちゃった。とりあえず魔術師ケーロンに会いに行って勇者と戦わないように言わないと」
「ケーロン様、ラフィール様がお越しです」
ケーロンと呼ばれた男はあくびをする。
「何を冗談を言っているんだ」
「じょうだんではないわ、ケーロン」
私は翼を使って頂上の部屋にたどり着く。
「な、な、ラフィール様」
ケーロンは姿勢を正す。
「楽にしていいわよ。それよりこれから勇者パーティーがこの城に攻めてくるわ」
「ほう、ラフィール様は予言も出来るのですか」
「ま、まぁね」
私は目が泳いでしまう。
「それでラフィール様は手伝いに来たと言うことですか?」
「違うわ、勇者が来たら戦うのを止めなさい。友好関係を結ぶのよ」
「はぁ?何をおっしゃってるのですか。ラフィール様」
ケーロンは疑いの目を私に向ける。
「とにかく、戦いはダメ。目指すは世界平和よ」
「……お前、偽物だな」
ケーロンは杖を構える。
「ち、違うわ。私はラフィールだけどラフィールじゃなくて、ええと」
ああ、めんどくさい。
「ケーロンスパーク」
「止めなさい」
私は手をかざして攻撃を防ぐ。
そしてその勢いでケーロンの首を吹き飛ばす。
「あっ!!」
「ひぃ。ケーロン様!!」
「あ、これは。えっと」
「よくもケーロン様をこの偽物め」
ケーロンの部下達は一斉に私に攻め込む。
「ええい、めんどくさい」
私は力を放出する。
すると城は跡形もなく消滅していく。
「うわ、なんだ。城が…」
「どういうことよ、クラウン」
「あの力は危険です」
武闘家のランブが冷や汗をかく。
「この力はあの魔女だ」
「なんですって」
「あなた達この城はもう滅んだわ。さっさと行きなさい」
私は勇者パーティーを空中から見下ろす。
「あ、あれが魔女」
「すごい力ですね」
「どうした、早くここから消えろ」
「あの城はお前が破壊したのか」
「そうだ、私が危険な魔術師を倒した。安心しろ」
「安心って、裏切る危険があったから仲間であろうと殺したんでしょ!!」
「えっ、なんでそうなるの!?」
「クラウン殿、今は引くしかないです。我々では敵いません」
「くそ、覚えていろよ。魔女!!」
「…私の話しを聞いてーー」
しかし勇者パーティーは急いで後退して行く。
「はぁ、なんでこうなるのよ」
私は城にテレポートする。
「ラフィール様、大変です」
「あら、どうしたの? ロジー」
「ケーロンが城ごと勇者パーティーに滅ぼされました」
「えっ、ええええ」
ちょっとなんでそうなるのよ。
「ラフィール様も驚きでしょう。気持ちはわかります」
「いや、だからあれは私が」
「そうですよね。ラフィール様が仇を討ちたいのはわかりますが、我々がおりますので」
「いや、だから私の話を」
「葬儀を終え次第ロマネの部隊が向かいますのでこのスピーチとやらで士気を高めてくだされ」
「わかったわ。任せなさい」
よし、ここで世界平和を唱えればこの戦争は終われるわ。
見てなさいよ。魔族共。