誘拐する気はなかったのに
「ちょっと魔法使い。止めなさい」
「ラフィール様、私の名前はメリーです」
「め、メリー。じゃあこの男を倒すのは止めましょう」
「なぜですか、この男は危険な力を持っています」
メリーはトドメを刺そうとする。
「私の言うことが聞けないのか」
私はメリーをギロリと睨み付ける。
「ひっ!?」
「帰るぞ、メリー」
「ま、待ってくれ。メリー」
クラウンはボロボロになりながら手を差しのべる。
ああ、かわいい。やっぱりあなたはタケル。そうよ私と同じでこの世界に来ちゃったのよ。でもそうだとしたらなんで私に気づかないの…
「ラフィール様」
「あ、ああ。小僧、命拾いしたな」
いやいや、何でこんなセリフを
私はメリーと共に姿を消す。
「ラフィール様!!」
「た、ただいま」
「ちょっとそいつは誰?それにブロスは」
「あ、ああ。こいつはメリー、人間だよ」
「何で人間をこの城に」
「こいつは私が操っている。まぁ人質みたいなものだ」
何で?私が望んでいない言葉が出るのよ。
「それでブロスは?」
「ああ、残念だけどこいつの仲間に殺されたわ」
「な、なんですってあのブロスが!!」
「ではこの娘を殺しましょう」
「待て、ロマネ。こいつは人質だ。ブロスを殺した男を誘い出すためのな」
「成る程、さすがはラフィール様。ただでは終わらせないと言うことですな」
「そ、そうだ。賢いだろう」
どうしよう。こんな予定じゃないのに。
「メリー私の部屋に来い」
「かしこまりました。ラフィール様」
私はメリーを連れて自分の部屋に入る。
「はぁぁ、どうしよう。この子まで誘拐しちゃってさらにクラウンに恨まれてしまった…」
「ラフィール様」
メリーは私を悲しそうな目で見つめる。
「ああ、そうだ。あのクラウンって子はどんな子なんだい?」
「はい、クラウンはなんの変哲もない町出身の少年です。しかし彼は生まれつき勇者の力を持っていました」
「それで?」
「はい、彼は勇者になるべく修行を重ねていましたがある日、魔女によって町を破壊されて復讐することを決めて旅に出ています。その旅の途中の村で私と出会いました。勇者の力を持っているだけあって彼はとても強い力の持ち主です」
「ふーん、やっぱり設定は同じね。町が滅ぼされた理由が変わっちゃったけど」
「設定?」
「こっちの話。それよりクラウンは性格が変わったりとかしてない?」
「そういえば、私が聞いてたクラウンはもっと、そうですね。乱暴者と聞いてましたが実際に会ってみると優しい少年でした」
「へぇー」
おかしい、勇者クラウンは乱暴者だけど仲間思いの少年だったはず。優しい少年という設定はなかった…
やはりタケルなのかしら
「どうかしましたか」
「ううん、何でもないわ。あなたには部屋を与えるからそこで休みなさい」
「かしこまりました」
メリーは部屋を出ていく。
「はぁ、どうやら私がこのゲームの設定を壊しているみたいね。でも結末は変わっていない。いや、変えられないのかな」
この後の展開は…
勇者クラウンは魔法使いと武闘家を仲間にして魔術師ケーロンの城に攻め込む。
あれ、でも魔術師は私が捕まえちゃったから…
「くそ、僕はどうすればいいんだ。メリー」
「あら、あなたこんなところで何をしているの?」
「君は誰?」
「私は魔法使いのラミエよ」
「魔法使い…」
「どうかしたの?」
僕は今までの経緯を話した。
「そうなんだ、仲間を魔女に誘拐されてしまったのね」
「ああ、でも初めは殺されたんだよ。でもわざわざ生き返して連れていったんだ」
「ひどい魔女ね。私も協力するわ。ええと」
「僕はクラウンだ」
「よろしく、クラウン」
僕はラミエと握手をする。
「そうそう、この先の村に強い武闘家がいるみたいよ」
「武闘家?」
「うん、そんじょそこらの魔人なんて簡単に蹴散らせるみたい」
「そうなんだ、じゃあその人に会いに行こう。案内してくれないか?ラミエ」
「オッケー、じゃあ行きましょう」
僕とラミエは武闘家のいる村に向かって歩き始める。