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そのプロローグ、本編につき。

はぁ、もう疲れた。人生なにがあるか本当に分からないものだ。

 

 中学のころは頭は良かった方だったし、いい高校にも行った。それにいい職場にも入った....はずだった。


 どうやら、人は頭が良いだけじゃ生きていけないらしい。生きづらい世の中だ。


 10年前の自分になにか言えるのなら、言ってやりたい。


 「あまり、調子に乗るなよ」と。

 

 まあ、今更後悔しても遅い。時間は戻らない。そんな、当たり前のことが昔はなんとも思わなかったのに、今ではとても悔しく感じる。

 

 自分のことを悲劇のヒーローだとは思わないが、来世ではきっと報われてほしい。

 

 自己紹介がまだだって?今更死んでいく者の名前を聞いても意味がないだろう。

 それくらい、なにもこの世に残せなかったってことさ。

 

 長くなってしまったが、これでさよならだ。未練なんて...未練なんて...


「くっ、うぐっ、ひぐっ...」


 未練なんてないはずだったのに、涙がでるほどに君のことだけは忘れられないらしい。なんて『強欲』で情けないなんだ。

 

 これ以上自分のことが嫌いになる前に楽になってしまおう。


 きっと、いつかまた君と巡り合えるように。


 


 意識がだんだん遠のいていく・・・・








※※※


 遠い夢の中のような感覚、いや恐らくここは夢の中だ。そうはっきりと分かるのはこの夢を見たのが初めてではないからだ。


 俺意外の誰かからの残酷な宣告の夢。いつもと変わらない冷たく、突き放すような口調で


 ————キミの加護は『強欲』だ―————


 と言われるだけの残酷な夢。





 

 新しい朝がきた。そんな言葉はこの世界では聞いたことが無いのに、どこか懐かしく感じてしまうのはなぜだろうか。不思議に思ったことは大体なんでも自分が知っている俺の数少ない分からないことの一つだ。


「ふぁ~~~ぁ」


 大きい欠伸をし、ベッドから起き上がる。今日も「アヴァロア」の一日が始まる。


 世界唯一の国家機関を持ち、世界を牛耳る王国「アヴァロア」。この国が生まれた年の819年前の初代国王が神話の理想郷であるアヴァロンになぞらえて名付けたらしい。

 

 この国は理想郷を謳っているが、そんなに甘いものじゃない。

 この世界には「加護」と呼ばれるすべての人が生まれつき持っていて、鍛えることで強化することもできる特殊能力がある。

 アヴァロアでは、その加護で人としての、優劣が決まり、劣っている者は苗字すら与えられずに追い出されてしまう残酷な国だ。


 俺もその加護に恵まれず、国を追い出されてしまった者の一人。

 俺の加護は『強欲』と言うらしい。強欲の加護はこの世界のおよそ5割のことをすべて知り尽くしているというものだ。

 七つの大罪という特別な加護の内の一つで、二百年に一度、七つの大罪の力を持つ子供が七人同時に生まれるらしい。これは俺の加護で知ったことだ。

 

 一見凄そうに見えるこの強欲の加護だが、知識の対価として、どれだけ、加護の力を戦闘方面に鍛えても、剣や斧などの武器を持つことができない。一応、魔法も存在するのだが、通常魔法は非戦闘の加護に負けるほど弱い。

 

 そして、知識というのは、共有できる者がいなければ、ただのゴミと一緒だ。

 

 国からしたら、ただホラを吹くだけの剣も持てない木偶の坊に見えただろう。


 そういうわけで、俺と同じくあぶれてきた者が暮らす辺境である「フロンティア」

に来たわけだ。


 ここはとてもいい場所だ。100年前は荒れ果てて、木が一本も生えていなかったらしいが、今では、そこそこ進化してきている。作物も安定して作れるようになったし

あぶれてきた者同士、仲間意識があるのだろう俺の加護が強欲であることを知りながら普通に接してくれる。みんな良い人たちばかりだ。


「おーーい!ディア―の野郎起きたか?」


「なんだ、朝っぱらから....人ん家に勝手に入ってくんなよ...」


「なに言ってんだ?もう太陽時計では11時を過ぎてんだぞ。しっかりしてくれ」


「はいはい。で?なんの用だ?」


「あのな、お前さんの《《知識》》をちょいっと貸してほしいんだ。いいか?」


「俺に用はないってことか。なら、お引き取り願う」


「おいおい、そこまで言ってないだろう。そう気を悪くするなよ」


 この調子がいい強面の男、ラーグは俺をなにかと気にかけてくれる。

『下町大工』の加護を持っており良い奴ではあるのだが、やたらと俺の知識に頼ってくるのが面倒ではある。



「で、要件はなんだ?」


「おう、最近そこの山でキングマッシュが取れるって噂が流れてるんだが、お前の加

 護で調べてくんねえか?」


「見つけたらどうするつもりだ?」


「そりゃ、おめえ店に売りに行って金儲けすんだろ」


「そうか...ならごめんだ。まあ、売らずに俺たち二人で食うなら考えてやらんでもな

 い」


「まじでか!それで良いぜ!それくらいならお安いもんさ!」


「わかった。交渉成立だな。今から調べるからちょっと待ってろ」


 そう言い、瞳を閉じる。目の前を覆った暗闇に情報の波が押し寄せる。

 その中から、キングマッシュの生息地を検索する。

 どうやら、俺の加護は睡眠をとることで、情報が更新されるらしい。

 生息マップのような物が浮かんでくる。


「ふぅ、終わったぞ」


「で、どうだった!」


「聞いて驚け。生息しているぞ!」


「まじか!よし、早く準備して行くぞ!」


「おう、任せろ!」


 そう言い、調子よく家を飛び出そうとラーグがドアを開けようとした瞬間、ドアが外側から蹴破られ、何者かが立っていた。

 俺は咄嗟に一歩下がり、ポケットから小型のナイフを構える。どうやら、ナイフ

 くらいの大きさなら、加護に武器と認識されないらしい。


「おい、ディア―という男がいると聞いて来たんだが...」


「俺がディア―だ。要件はなんだ」


「おお!お前がディア―というのか!お前を探していたんだ」


「名前は?」


「私?私は《《アヴァロア》》・ベルティアよ。気軽にベルと呼んでちょうだい」


 

・・・・・は?








 






 




 

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