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第八話

 〈記憶力〉をレベル10にしたことで、驚くべきことに属性が増えた。

 これは前世の記憶、『ソード&ソード』ではなかった現象だ。

 

 そもそも【情報属性】というのがまず分からない。

 ゲームにはなかった属性だからだ。

 

 書庫でも属性の一覧にないものだ。

 多分、イチェリーナ先生に聞いても無駄だろう。

 

 ここは思い切って、熟練度を使って〈情報魔術〉を習得すべきだ。

 

 

 

 〈記憶力〉に使って熟練度はほぼからっけつだったため、〈情報魔術〉の習得には季節ひとつ分を費やした。

 その甲斐あってか、おぼろげに情報魔術の正体が掴めてきた。

 

 レベル1で使える魔術は〈アナライズ〉〈ディテクト・ステータス〉〈ハイディング・ステータス〉。

 効果はそれぞれ、物品鑑定、ステータス看破、ステータス隠蔽、といったところだ。

 

 ステータスを隠蔽する〈ハイディング・ステータス〉以外は、『ソード&ソード』でプレイヤーが普通に行うことのできるメニュー画面に相当するだろう。

 多分、レベルを上げていけばプレイヤーのメニューで使えた機能が解禁されていくと思われる。

 

 さすがにこの世界からログアウトできるとは思えないが、便利機能の開放は魅力的だ。

 鍛え方が分からないので熟練度を消費して上げるしかないのが難点だが、それだけの価値はありそうだ。

 

 

 

 晩秋の時期にファーランド卿とフェリシアが遊びに来た。

 フェリシアは白い虎の幻獣ブランコを連れてきていた。

 しばらく見ない間に、結構大きくなっている。

 これは将来、かなり大きくなるだろう。

 

「ブランコ、随分と大きくなったね」

 

「そうなの。お肉を一杯食べるから食費がかかるし、これ以上大きくなると家に置いてあげられなくなるかもしれなくて……」

 

「え? 使い魔にすればいいんじゃないの? そうしたら普段は幻獣界にいてもらって、必要なときに召喚すればいいし、魔力を餌にできるから食費も浮くと思うけど」

 

「え? そんなことできるの?」

 

 どうやらブランコとの間にまだパスは繋いでいないらしい。

 そういえば使い魔は泥から作成するのが一般的な手法で、もしかしたらファーランド領の家庭教師は幻獣を使い魔にできることを知らないのかもしれない。

 

「イチェリーナ先生なら知っているかな……確認してみよう」

 

「うん!」

 

 早速、イチェリーナ先生に聞いてみると、あっさりと「できるわよ」との回答が返ってきた。

 

「白の虎か……かなり強力な幻獣だと思うから、育ち切る前に契約しておかないと、後からだと苦労すると思うわ」

 

「じゃあもう契約したらいいよ」

 

「はい。どうすればいいんですか?」

 

 イチェリーナ先生は頭を掻きながら、唸る。

 

「さすがに手順まで暗記してないわ」

 

「僕が以前、読んだ書物に書いてあったから、それで行けると思う」

 

 こういうときは〈記憶力〉特化キャラの面目躍如だ。

 〈記憶の図書館〉から即座に幻獣との使い魔契約について〈検索〉する。

 〈記憶の図書館〉は記憶した物事を書物形式で整理するスキルで、書物ならばそのまま丸ごとコピーして格納できる優れたスキルだ。

 思い出すまでに時間がかかるのが難点だったのだが、〈記憶力〉をレベル10にして出現した〈検索〉スキルで弱点が解消された。

 

 使い魔契約の手順は儀式魔術だ。

 使い魔の作成と同様の魔法陣を描き、その中に幻獣を置く。

 契約者は命名の理を使い、契約で幻獣を縛る。

 

 幻獣の側には魔力パスが通り、そこからは普通の幻獣と同じように扱えるようになる。

 追加で幻獣界への送還と召喚が行えるようにもなるのだが、こちらは別途、術式を学ばなければならない。

 

「さっそく今夜、術を準備しよう」

 

「ありがとうロイク!」

 

「……手伝うわ」

 

 イチェリーナ先生の教師としての面目を潰した形となったが、ともかく善は急げだ。

 

 

 

 イチェリーナ先生の協力もあって魔法陣の準備は滞りなく済んだ。

 後はフェリシアが呪文を覚えるだけだ。

 

「フェリシア、呪文の暗唱は大丈夫そう?」

 

「う、うん。覚えたと思う」

 

「失敗しても明日、また再挑戦すれば大丈夫だから」

 

「大丈夫! 今日、契約するよ!」

 

 よほどブランコが可愛いのだろう、フェリシアのやる気は十分だった。

 

 

 

 その夜、フェリシアは使い魔の契約をやり遂げた。

 ブランコは正式にフェリシアの使い魔となり、フェリシアを守護することになるだろう。


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