第四十八話
鬼気迫る、とはこのことだろうか。
バララエフは魔剣を手に、決勝の舞台へ上がった。
割れんばかりの歓声に迎えられて、僕も決勝の舞台に上がる。
ビリビリとした殺意を受けるが、〈獅子心〉が仕事をしているのか気分は落ち着いたものだ。
「ロイク。本気でいかせてもらうぞ」
「バララエフ。言うまでもないけれど、こちらも本気を出す」
ニヤリ、とバララエフが嗤った。
拡声の魔術具をつかった解説が、会場全体に響く声で叫ぶ。
「十年以上前に失踪した剣聖バララエフが闘技大会に帰ってきた! 連戦連勝! 剣聖の腕前、未だに衰えを知らず!」
歓声が上がる。
バララエフのことを知っている古参のファンでもいるのだろうか。
「対するは十二歳の若さで魔族を倒し、叙爵されたルーセルガルト公爵だ! ここまで他の選手を寄せ付けない圧倒的な剣技の腕前を披露、その実力を誇示して見せてきた! 果たして若き獅子は剣聖とどちらが強いのか!? さあ、もうすぐ試合の開始です!!」
こちらも歓声が上がった。
どうやら僕にもファンがついたらしい。
距離を取って、バララエフと対峙する。
しばしの間があってから、試合開始を告げるドラの音が響き渡る。
僕とバララエフは同時に距離を詰めて、互いの持てる技巧のすべて出し切った。
ヴン、という魔剣の音が聞こえる。
バララエフの時間加速の魔剣が発動した音だ。
――〈限界突破〉〈剣技〉〈動体視力〉〈膂力〉〈瞬発力〉〈痛覚遮断〉〈集中力〉〈心眼〉〈生存本能〉〈直感〉〈多重思考〉〈戦術思考〉〈魔力操作〉〈闘気法〉ッ!!
ミスリルの聖剣がバララエフの魔剣の連撃を受け流す。
時折、〈回避〉も挟みながらバララエフの攻撃をやり過ごす。
バララエフの表情が苦々しいものになる。
魔剣の効果時間が終わりつつあるのだ。
僕は〈停滞の魔眼〉を発動して、バララエフの動きを一瞬だけ止めた。
一瞬の隙があれば十分だ。
僕の剣の切っ先が、バララエフの首筋に添えられていた。
「――――」
シンと静まり返る会場。
遅れて、わっと歓声が上がる。
「勝者。ロイク・ルーセルガルト!!」
バララエフはなぜ身体が止まったのか分からないらしい。
目を大きく見開き、僕のことを見下ろしていた。
「最後の一瞬、身体が動かなかった。見えていたのに、ロイクの剣を避けることも受けることもできなかった。あれは――あれが――ロイクの本気か」
いや、魔眼なんだけどね。
なんか「見えているのに回避できない」みたいな捉え方をされているようだけど……まあ勘違いさせておけばいいか。
たとえ魔眼を使わずとも、魔剣の時間切れの後に普通に打ち合ったら、僕が勝ってしまうのは変わらない。
どうあれ、僕はバララエフに完勝した。
ロイク・ルーセルガルト(男/12歳)
【魂】
└【前世の記憶】
【肉体】
├【器用】
│ ├〈剣技〉Lv10
│ └〈槍技〉Lv8
├【敏捷】
│ ├〈回避〉Lv10
│ ├〈俊足〉Lv8
│ ├〈軽業〉Lv9
│ ├〈水泳〉Lv2
│ ├〈跳躍〉Lv6
│ └〈騎乗〉Lv6
├【感知】
│ ├〈発見〉Lv6
│ ├〈索敵〉Lv8
│ ├〈常在戦場〉Lv8
│ └〈視力〉Lv10
│ ├〈動体視力〉Lv5
│ ├〈停滞の魔眼〉Lv5
│ └〈魔力視〉Lv5
│ └〈精霊視〉Lv3
├【筋力】
│ ├〈格闘技〉Lv7
│ ├〈盾技〉Lv8
│ ├〈膂力〉Lv8 update!
│ ├〈瞬発力〉Lv9 update!
│ └〈鍛冶〉Lv9
└【体力】
├〈持久力〉Lv8
├〈持久走〉Lv7
└〈頑強〉Lv9
├〈毒耐性〉Lv1
├〈痛覚遮断〉Lv2
└〈獅子心〉Lv1
【精神】
├【知力】
│ ├〈集中力〉Lv10
│ │ ├〈限界突破〉Lv5
│ │ ├〈心眼〉Lv5
│ │ └〈生存本能〉Lv5
│ │ ├〈直感〉Lv3
│ │ └〈多重思考〉Lv3
│ ├〈記憶力〉Lv10
│ │ ├〈模倣〉Lv5
│ │ ├〈写真記憶〉Lv5
│ │ └〈記憶の図書館〉Lv5
│ │ └〈検索〉Lv3
│ ├〈錬金術〉Lv9
│ ├〈指揮〉Lv7
│ │ ├〈鼓舞〉Lv2
│ │ ├〈以心伝心〉Lv2
│ │ └〈演説〉Lv1
│ ├〈戦術思考〉Lv7 update!
│ └〈教導〉Lv8
└【魔力】
├〈魔力操作〉Lv10 update!
├〈魔術制御〉Lv7
├〈魔力圧縮〉Lv7
├〈闘気法〉Lv10 update!
├〈魔力庫〉Lv7
├【精霊語】
│ ├〈水の精霊術〉Lv3
│ └〈光の精霊術〉Lv2
├【幻獣語】
│ └【使い魔:ハヤテ】
│ └〈小型化〉Lv5
├【水属性】
│ └〈水魔術〉Lv7
├【光属性】
│ └〈光魔術〉Lv7
│ └〈付与魔術〉Lv5
└【情報属性】
└〈情報魔術〉Lv5




