第四十七話
闘技大会のある夏がやってきた。
僕たちは王都へ前乗りして向かい、王城に滞在することになった。
シャルロッテの里帰りに僕たちがついてきた、という形らしい。
王城で寝泊まりすることになろうとは夢にも思わなかった。
得難い経験だ。
バララエフはどうしているだろう。
迷宮都市で怪我なく修練を積んできているのだろうか。
闘技大会の予選は各地からやって来た戦士たちを幾つかのグループに分けてのバトルロイヤルで、ひとつの組から三人勝ち残れるシステムだ。
僕とバララエフは王様の指示でシード枠となっており、本戦からの出場となっている。
本戦は普通のトーナメント形式だ。
予選を勝ち残った戦士たちがどの程度か、今から少し楽しみだ。
「ロイク様と良い勝負ができそうな剣士はほとんど見受けられませんね」
「そうかい? あの戦士なんて凄い筋肉だけど」
「体格だけです。ロイク様の剣技には遠く及ばないでしょう」
うん、〈ディテクト・ステータス〉を使うまでもない。
多分、力任せに戦う戦士だろうから、僕の敵じゃないね。
リーリエは見ただけである程度、相手の強さを推し量れるらしい。
スキルなのかと思ったがそうではなく、体重移動や歩き方などで判別しているとか。
凄いな、さすが剣聖の孫娘。
「……となると、やっぱりバララエフくらいかな、いい勝負になるのは」
「お祖父様は確かにお強いですが……今ではロイク様の方が強いのではないでしょうか」
「リーリエ……」
「本気を出されるのですよね? 楽しみです」
ニコニコと満面の笑みを浮かべる彼女の眼差しが眩しい。
リーリエの期待に応えなければならないだろう。
本気か……。
出さざるを得ないんだろうなあ。
予選が終わり、トーナメント表が発表される。
シード枠の僕とバララエフはトーナメントの両端に位置していた。
つまり順当に行って、決勝戦で戦うことになる。
ざっと本選出場者の名前を確認したが、知った名前はなかった。
〈記憶の図書館〉で〈検索〉してみても引っかかる名前がない。
……これは本当に決勝戦だけだな。
途中の試合は楽勝だろう。
実際、準決勝まで圧勝で通した。
実剣を使っての模擬戦だ、時に死傷者が出ることもある。
しかし僕やバララエフがそんなヘマをすることはあり得ない。
開始の合図と同時に距離を詰めて剣を相手選手の首に添えるだけ。
誰も僕たちの技量についてくることはできなかった。
さあ、決勝戦はバララエフとの戦いだ。




